分からない男8
「テレビに出るメリットってなにかな?」食事を終えて、ジュースを飲んでいるときに、聞いてみた。
「メリット?」
「だって、華やかに見えて大変そうだって聞いたから」
「ふーん、やっと調べたのか? ああいう世界って、確かに浮き沈みは激しいけれど、ファンに応援してもらったり、声をかけてもらったり、そういうのがうれしい人ならいいんじゃないのか? それに、テレビって言ったって、色々あるだろ」
「女優とかは?」
「賞がもらえる。賞賛される。お金ががっぽり入る」
「がっぽり入るものなの?」
「一部だけね。女優と言っても、映画にテレビ、舞台もあるし。端役すらもらえないような人もいるだろうしね。それだけで食べていける人なんて、ほんの一握りらしいぞ」
「少ないんだ?」
「やりたがる人は多いよ。でも、のし上がるには大変だよ。端役から上にいくのは大変だと思う。女優でも売れる前に面白くない仕事をしていたと言う人は多いだろうな。どれだけ綺麗でも、演技が下手だと飽きられちゃうし」
「そう?」
「それに、画面で見る性格と正反対の人を何人か見たことがあるし」
「え、そうなんだ?」
「親父の付き添いで一緒にテレビ局に行ったことがある。そこで、親父に占ってほしいと頼んできた女優、俳優が何人かいたよ。親父に頼んでいるときは媚びて愛想が良くて、でも、ADには横柄な態度で命令してた。マネージャーにわがまま放題言っているのも目撃して冷めたしね」
「怖い」
「でも、それぐらいきつい性格で、したたかじゃないと残れない世界なんだと思う。だからこそ、占い師に何かと相談しているみたいだからな。親父は何度か頼まれていたし」
「ふーん、そうやって有力者とつながりができるんだ?」
「そういう人たちと付き合っておくと紹介してもらえるんだよ。一流スポーツ選手とか、一流企業の社長や重役とか」
「そう」
「お前の母親はしてないみたいだな」と言われて、にらんだ。
「いいとこ、中小企業の社長だろ」
「知らない。お客さんのことをあまり話さないもの。守秘義務があるでしょ」
「そうだったな。じゃあ、今のも内緒、と言っても固有名詞は出さないのが鉄則だけどな」
「固有名詞?」
「名称だよ」うーん、そういうのも大事なのかと考えていた。




