厳しい世界3
尋ねたところは小さい事務所で、働いている人が2人だけだった。電話と小さなデスクが置いてあるだけ。後は古い書類ケースが並んでいるだけだった。
「君、誰?」と事務所に人に言われて、「大部屋俳優さんに社会見学でお話を聞きたい」とお願いした。
「ふーん、そう言えば、そういうの、頼まれていた気もするな」と言っていた。そのうち、人が来て、事務所の人に仕事の話をして、その人に頼んでくれるようにお願いした。
「俺、有名俳優とか知らないよ」と言われて、体よく逃げられてしまった。何人か頼んで、そのうち、派手な化粧の女性が来た。女性は初めてだったけれど、何とか頼もうと思ったら、すぐにOKが出た。
近くの喫茶店で話を聞いた。ケーキも頼んでいいか聞かれて、仕方なくうなずいた。その人の話は長かった。名前は聞いたことのある俳優さんとの共演の自慢話から始まり、映画監督にほめられた話などをしていたけれど、何とか誘導して、テレビ業界の話を聞いてみた。
「時代劇も現代劇もそれなりに出るけどさあ、でも、実態なんて、色々あるわよ。ここでは言えないようなことも多いしね」
「いえ、言える範囲でお願いします」
「そうねえ」と色々と教えてくれた。役柄がどうやって決まっていくのか。プロダクションの大きさも関係があるとか、有名俳優の子供などのコネもあるとか、番組の責任者に気に入られるといいとか、スポンサーも大事とか、主役級の役者の引き立られて出られることもある。けれど、その反対に主演クラスの人に嫌われると色々と困るとか、犬猿の仲も当然あって、女優同士が目も合わさないとか、通りすがりに嫌味を言い合っていたと言う話になって、さすがに、
「怖いですね」と言ってしまった。