見習い初日4
「秋さん、占い師を多く抱えている団体に所属している場合は、移り変わりが激しいのかな?」
「そうねえ、知り合いの話を聞くとすぐに辞めてしまうところもあるらしいわよ。働く条件が厳しいところだとそうなるみたいね。働いた時間の割にはお給料が少ないとか、何か売らせるとか」
「なにを?」
「開運グッズよ」
「それならここにも置いてあるじゃない」
「ああ、ああいうかわいい値段のものじゃないわよ。もっと高額なものよ。原価に見合わない金額で売るらしいからね」
「へえ、そうなんだ」
「苦情が多いところはそうみたいね。プロキオンはどうなの?」
「さあ、あそこはグッズは売ってたけど」
「あそこはお薦めグッズを占い結果の用紙に書いておくシステムだとは聞いているけど」
「え、そうなんだ」
「それでも、そういうので買っていく人は多いでしょうね。ここと違っておしゃれなビルだから維持費が掛かるから。そういう部分での儲けも馬鹿にならないだろうし」
「そうだろうね。部屋の中も豪華だったし、あいつの車も高そうだったし」
「真珠ちゃんは、プロキオンで働きたいの?」
「無理。あいつがいるところでは無理だと思う」と母がいるほうを見た。
「そうねえ、怒ってたからね。ちょっと長引いてるものね。怒りが」母は怒りっぽいところもあるけれど、すぐに忘れる体質だ。私もそういうのは諦めと言うか流すほうだけど、母はもっと早い。ただ、立ち直りが早すぎるお姉ちゃんには負けるけど。
「宝陽の学園祭に出る前に、鍛えておかないとね」と言われてうなずいてから、
「見た目って大事かな?」と聞いた。
「あら、どうして?」
「東条さんが、見た目を考えろって。メイクまでしろとうるさくて」
「高校生だものね。制服で出ても面白いと思うけど」
「やだ。制服だと変な目で見てくる人がいたから」
「そう? かわいいと思うけど。でも、東条さんが言うならそのほうがいいのかもしれないわね。相手に合わせたらいいじゃない。いつもの真珠ちゃんならそう言うでしょ」
「あいつに合わせると言うのが癪に障るの」と言ったら笑われてしまった。