バイトの理由2
怜奈ちゃんに相談して、その後、占いを頼まれた子に事情を話した。
「うーん、しょうがないなあ。学園祭って、どういうことするの?」と聞かれて、
「さあねえ」としか言えなかった。クラスの子には父を探すとは言えず、学園祭に参加するために練習する必要があるし、お金も必要だからと教えておいた。
「頼りないなあ。面白そうだったら行くから、チケットお願いね」と言われてしまった。
「そう言われても、そこまで仲良くないし」仲良くしたいと思えない人が一部混じっている。東条さんのお友達と言う人も好きになれない。遊び人っぽい人はどうも苦手だった。
「じゃあ、お店に行くね」と何人かが言ってくれて、
「ご協力お願いします」と頭を下げた。
「大丈夫か?」神宮寺がクラスに来て聞いてきて、移動した。事情を話したら、
「あの男だけは関わらないほうがいいと思うけど」
「最近、お店にお客が減ってきて、やむを得ずだから」
「でも、あいつ、手が早そうだし強引だし」
「そこは気をつけるつもり」
「お前、考えてくれたか?」と聞かれて、どうしても考えられなかったとは言いづらかった。
「そういう顔をするなよ。俺としてはお前とちゃんと付き合いたいって思ってるし」
「勉強があるでしょ」神宮寺は大学進学を目指して勉強している。お兄さんも有名大学に通っているため、負けたくないらしい。
「分かってるよ。息抜きにお前とデートしたいだけ」
「そう言われても、私は」
「映画ぐらい付き合えよ」
「忙しくなるから、無理だよ」
「あいつとは行くなよ」
「分かってるよ。さすがにね。父に怒られそうだから」と言ったら神宮寺が黙った。
「でも、ちょっと許せないよな」神宮寺が話題を変えるように言い出して、
「なにが?」と聞いた。
「あいつ、何かやってるのか? 護身術か何か」
「さあ、どうして?」
「だって、俺、力では負けないと思うし、運動神経はいいからな。それなのに軽くやられて悔しいから、聞いておけよ」
「なんで?」
「負けたままじゃ面白くない」
「それは分かるけど、聞く必要があるの?」
「敵の力量を測る必要があるから」完全に敵になってるよ。
「ほっとけばいいよ。神宮寺と身長が違うだけだし」
「俺より高いのが気に入らない」神宮寺は割りと背は高いほうだけど、東条さんはそれより更に高かった。
「そう言えば、父親に似てるから、それでかもね」東条の父親は武道をやっているかもしれなくて、そう言った。
「俺は良く知らない。そういう方面は詳しくないし」
「男子って占いに興味示さない人がいるからね。神宮寺も同じだものね」
「俺が興味があるのは占いじゃなくてお前だけ」と言われてむせた。
「占いができようとできまいと俺はお前自身に興味があるからな。だから、あいつに近づくなよ。あいつはお前が占いができるから近づいてくるだけだから」
「やっぱりそう思う? 言葉の端々にそういうのは感じるんだよね。占いしてなかったら見向きもしないだろうね。あの人、乗ってる車はいいし、持ち物も高級そうだった。それに比べてうちはちょっとなあ。住む世界が違いすぎるし」
「バイトがんばれよ。真珠はそのままでかわいいと思うから」と言われて、思わず赤くなった気がした。友達だと思っていた男にいきなり言われて、ちょっと恥ずかしくなった。
「うぶだ」神宮寺が笑っていて、
「うるさいの」とにらんだけど、ずっと笑ったままだった。