必要な場所1
東条さんから電話があって、呼び出された。学校から少し離れたところで待ち合わせをした。噂のネタになりたくなかった。
「どうした?」私の顔を見て聞かれてしまい、
「なにも」と答えた。こいつと会ってるとあれこれ言われそうだなと考えていたのが顔に出ていたらしい。
「占い師になるつもりなら、お客の前だけは平常心を保てよ。まあ、パフォーマンスで売るなら別だけどな」
「パフォーマンスね。母の知り合いにはいるけど、キャラを変えてばかりいるって聞いてる」
「ああ、それはあるのかもな。飽きられると人が来なくなるから、それで変えているんだろうな。うちではそういう人は取らないようにしてるけどな。一時的に人気が出たとしても、ずっと人に来てもらうには難しいからね」
「そうなのかな?」
「リピーターが多い人にはそれなりに理由があるんだよ。固定客が多い人はそうだからね」
「あなたも?」
「俺は見習いだからな。今の一番人気の人は割と長く一位を維持してるし」
「一番人気?」
「ロビーの掲示板にあっただろ」
「そうだっけ?」
「人気順で載せてあるから、絶えず入れ替えしてるし、部屋の広さも料金も違う。お茶のサービスをつけたりしてる人もいるし」
「お茶ですか?」
「ハーブティーを出してるんだよ。気分が落ち着くようにと自分で用意してる。料金が高いのは一番広くて調度品が高級だから。人気が高い人から広い部屋になってる」
「え、そうだったんだ? あなたのところも綺麗で広かったじゃない」
「俺は見習いだから、あれは一番下のランクの部屋。今度、お客がいないときにでも見せてやるよ」
「いいよ、そこまでしてもらわなくても」
「普通の女なら喜んで見ていくぞ」
「私はあなたに借りを作りたくないだけ」
「いいじゃないか。ライバルに育てているだけだし」
「ライバル?」と驚いた。
「何人か候補はいたよ。荒削りだけど勘が良かったり、筋が良かったりした人も多かった。でも、途中で駄目になるケースも多くてね」
「どうして?」
「恋愛に走ると占いの勘が鈍るからな。お前は恋愛してないみたいだから、大丈夫そうだ」
「ふん」と横を向いた。
「恋愛にのめりこむことだけはしそうもないからな。そのほうがいいぞ。適度に抑えろよ」
「あなたの場合は抑えてるんじゃないでしょ。広く浅くのほうが都合がいいだけでしょ」
「そうか?」と笑っていた。
「この間の男とは進展は?」と聞かれて横を向いた。
「その分だとないな」雪人さんにはあの後も会ったけれど、結局言えなかった。帰っちゃうのがかなりショックで、卒業したら会えなくなるのが寂しくて仕方がなかった。
「なんて、顔してるんだ?」東条さんに言われて、
「あなたに関係ない」と言ったら笑い出した。
「お前は母親似だな」
「そう? あまり似てないよ。容姿はおねえちゃんのほうが美人でお母さん似だと言われて大きくなったよ」
「今はお姉さんはそれほど似てないだろうな。お前のほうが似てる。小顔で、目元が似てるし、かわいらしい顔だから。お姉さんは丸顔だけど、ちょっときつい感じだよな。性格も何もかも。後はお金優先」
「そこまで言わないでよ。身内なのに言われるとちょっと困る」
「当たってるからだろ。ああいうタイプだけはどうも苦手だな。自分優先の女は昔から駄目。わがままを聞きたいとも思えないし」
「ふーん、トラウマ?」と聞いたら黙っていた。




