元の職業4
「真珠?」母が気づいてお店から出てきて、
「この人?」母が怪訝な顔をして、ブルーオアシスさんを見ていた。
「ブルーオアシスさん。効き目があるとだましてお守りを売りつけている人」と母に教えたら、
「人聞きが悪いなあ。だましてないと説明しているのに」とブルーオアシスさんがごまかすように笑っていて、その雰囲気は一見優しげだったけれど母は分かっているらしく、
「悪いけれど、お帰りください。真珠はこれからすることがありますし」母がブルーオアシスさんに丁寧にだけれど、きっぱりと言ったら、
「親子ともども似ているんだな。うらやましいよ。僕の知り合いとは違うね。君たちは」
「知り合い?」
「そう、催眠術師。もっとも、イカサマといわれても仕方の無いレベル。その人の真似をしてみたけれど、駄目だったみたいだな」と言って、手を上げて、行ってしまった。
「入りましょう」と母に言われて、うなずいた。
「あの人」と母が困った顔をしていたので、今日あったことを教えて、
「そう、近づいては駄目。あの男は刹那的というか、破滅的というか、何だか波長が悪いものがある」
「それはいくらなんでも分かるよ。風邪引きそうなぐらい、あの人のそばは寒いし」
「そう、そういう部分は私と同じね」
「売れないミュージシャンが占い師になれるものなの?」
「ああ、それね。前の職業が役者とか、大道芸人だったと言う人も中にはいたわよ。すぐにいなくなったけど」
「え、そうなの?」
「中々、顧客がつかないからね。一時期もてはやされるだけでは難しいでしょうね。あの人もいなくなるでしょうね、すぐに」
「そうかもしれないね。お店も長くやるようなところに見えなかったし」
「占い師と名乗ることはできても、顧客がつくかどうかは別だからね。どんな職業でも、それにどう取り組んでいるかで違ってくるからね」
「そう?」
「学校の先生でも違いがあるでしょ」と言われて、知っている先生の顔ぶれを思い出していた。
「色々いるかも」と答えたら、
「ああいう人には近づかないほうがいいわ。真珠に付きまとうようなら、そのときに対策を取りましょう」
「来ない気がする」
「あら、どうして?」
「なんとなく、そう思った」
「そう、なら来ないかもしれないわね」ブルーオアシスさんはあの店からいなくなる気がした。




