魔法が2
「シルクハットとタキシードに決まっていたわよ」
「鳩を出しそう」
「それも提案で出ていたわね」
「派手好きだなあ」
「知り合いのマジシャンに衣装を借りたみたいよ。この辺の衣装もほとんどがその人から借りられたからね。彼を加えるのはそういう理由だし」
「そういう理由?」
「彼はつてをいっぱい持っているからよ。それで頼まれることも多いわ。それだけつながりがいっぱいあるからね」
「そうですか?」
「真珠ちゃんは顔が小さいから、かわいく仕上げないと」
「かわいくは無理です。友達が化粧しなくてもかわいくて、声をかけられてばかりいるけれど、私は声を掛けられた事がない」
「声を掛けやすいかわいさとは違うかもね。真珠ちゃんはもっと神秘的な感じがするわ。目が印象的だから。軽い男性は声はかけないかもね」
「声の掛けやすさって重要ですか?」
「そういう男性が好きならいいでしょうけれど、そうじゃないでしょ」
「浅木さんはいっぱい声を掛けられるでしょう?」と言ったら、近くにいた人が笑った。
「浅木ちゃんは男性が気軽に声なんて掛けられないよ。誰か恋人がいるだろうと思って躊躇するタイプ」と教えてくれて、浅木さんを見た。確かに、軽い男が気軽に声を掛けられるような人じゃないかも。
「真珠ちゃんは、きっと真面目な人が好きでしょう? だったら、軽く声を掛けられなくてもいいと思うわよ」
「そうですね」確かにそれはそうだ。雪人さんが気軽に女性に声をかけてる姿なんて想像もできない。
「へえ、かわいい」そばに女性が来て覗き込んできて、
「化粧栄えするね。顔が小さいし、目が印象的だから、化粧をするとそこが更に際立つ感じだね。大人になったら、化粧したほうがいいよ、かわいいから」そうかなあ? お母さんはそうだけど、私はそうじゃない気がするなあ……と考えていたら、
「おーい、できたか?」と聞かれて、
「OKよ」浅木さんがメイクを終えた。衣装を持ってきてくれて、着替えるために別室に移動して、ふわふわカールの茶髪のかつらもつけていた。鏡がなかったので、様子が分からなくて、途中で鏡のある場所に移動してから、驚いた。
「えー!」自分で思わず声が出た。確かに、別人だ。化粧なんてしたことはないから、かなり驚いた。
「かわいいわね」そばにいた人が何人かに声を掛けられて、素直にうれしくなった。結構、いけるかも。
「どうだ? できたか?」清水さんが見に来て、
「お、すご、さすが、姫」と言っていた。