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001. 醒めない夢の続き(1)

 瞳を開けると見慣れたテレビ局の楽屋の中に立っていた。


 なぜ、僕はこんなところにいるのかなんて野暮なことは考えなかった。なぜなら、この光景は初めてみたものではなく何度も何度も自分の目に焼き付けるまでずっと見続けたものだったからだ。


 僕は無意識に左手を口頭に当てて髪の毛をクシャと鷲掴みにしながらすぐに溜息を吐いた。


「まだ僕は諦められてないのか……」


 怒りよりも先に呆れたという感情が先に出てくる。


 だけど、そう簡単に割り切れることでもないというのも自分自身で理解している。


 これから先に起こる光景を僕は知っている。しかし、知っていたとしてもそれを変えることはできない。

 次に起こってしまうことを変えるような力は僕にはなかった。


「やっぱり来てくれたんだ!!」


 鏡に映る自分の暗い顔とは対照的に眩しい笑顔を浮かべた彼女が楽屋に帰ってきた。


 そんな眩しい笑顔を浮かべる彼女の名前は西宮優里。これからオーディションを経て華々しく全国的にデビューするであろうアイドル歌手。


 今は歌だけだがこれから演技の才能も認められ、社会現象にもなった有名な映画作品の主役を務めて一躍有名になる僕のたった一人の幼馴染である。


「オーディション本番なのに来てくれないのかと思ってたんだからね」

「僕が居なくたって優里は受かるだろ」


 その言葉を聞いた優里は不機嫌そうな表情を浮かべながら羽織っていたテレビ局のジャケットを脱ぎ、オーディションで披露する本番用の衣装を見せつけた。

 そして、僕と視線を合わせながら無言で距離を詰めてくる。


「分かったよ」

「何が分かったの?」

「本番頑張れよ」

「それを先に言いなさいよ、龍之介のバカ!!!」


 楽屋にある時計の針を刻む音が今もなお変わらずに時間が経過していっていることを教えてくれている。僕はちっとも嬉しくなかった。


「そろそろじゃないのか?」


 本番のステージに向かう優里と一緒に楽屋を後にする。これから何が起こるのか僕は知っているがあらがう術もないのでいつも通りの言葉を優里にかける。


「精一杯頑張ってこい!」

「次は龍之介の番なんだからね?」


 苦笑いを浮かべながら僕は彼女に手を振りかえす。一歩を踏み出すように力強く踏み込んだ優里に僕はもう一言違う声を掛けようとするが声が出せなかった。


「危ないッッ――――!!」


 警備のスタッフがガタッという音をに気づき叫び声をあげていた。


 前を見るとステージ袖に立てかけてあった看板が優里に向かって倒れかかってきていた。それを目の当たりにした瞬間、僕の体は無意識に動いていた。


 彼女を庇うように突き飛ばして看板の下敷きになる。

 痛みも感じぬまま、意識も視界も全てが奪われ視界は完全に暗転した。


「ねぇ、龍之介――、ねぇ、返事してよ!!」

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