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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
五章 プリズンブレイク
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特別SS「とある農民の日常」

本日は書籍版第一巻の発売日という事で、特別SSを一本。

 オラはしがない農民。

 小さい時から土と共に生きてきた。

 農民の扱いは国によって色々だ。



 貧しく小さな国に住む農民は、良い扱いとは言えねえ。税を払うために畑を耕し、やっと収穫出来たと思ったらお役人がほとんど持っていく。残ったのは自分達が食べるギリギリの分だけだ。


 土の肥が悪かったり、雨が降らなかったりする不作の年はもっと酷い。それこそ、食べるのもままならねえ時がくる。だが、貧しい国だとそのまま見捨てれちまう事もあるんだ……。


 その点、オラが住んでる今の国は農民に優しい。

 道を歩けば『いつもありがとう』と礼を言われ、収穫した作物を売りに出すと『ご苦労様』と労ってくれる。


 オラは貧しい国から流れてきた農民だ。

 だから余計にこの国のありがたみが良く分かる。


 オラが今住んでいる“エデン”という国は、ヨシュア王が興したばかりの新しい国だ。規模としては小さい国かもしんねえが、国の懐はどんな大国より大きいと思う。それは全て、ヨシュア王の優しさから来てるのかもしんねえな。


「さて、今日も頑張るべさ」


 日照りがさんさんと降り注ぐ中、オラは今日も畑仕事に精を出す。しかし暑いな……この国は滅多に雨が降らない。


 なんでも、大昔に突然雨が降らなくなり、人々は『神が見捨てた土地』だと恐れ、この地を去ったそうだ。まあ確かに、この日照りが続くと作物を育てるのは厳しいかもな。


 そんな曰く付きの土地だが、今は違う。なんたって、このエデンには、農民にとって心強い味方である『豊穣の女神様』がいらっしゃるからな。


 豊穣の女神様であるララ様は、この日照りが強い大地に潤いをもたらして下さった。この国の城の周りは、大きな湖があるんだが、その湖を作って下さったのがララ様なのだ。


 ララ様は自分が不在の時も水に困らないようにと、ご自身のお力を使い地下の水脈を堀当てて下さった。そのお陰で、日照りが強いこの地でも、問題なく農業を営む事が出来るのさ。


 そんなララ様だが、農民以外の国民からは、『駄女神さま』なんて呼ばれていたりもする。失礼な奴らだべさっ!


 ララ様は駄女神さまなんかじゃない!

 ちょっとお茶目なだけの、おちゃ女神さまだっぺ!


「今日も精が出ますね。何かお困りではないですか?」


 おっ、噂をすればララ様が訪ねてきて下さったべ。


「こりゃどうもララ様。精が出るのもララ様のお陰だべ」

「いえいえ、私はなにも。何か困った事があったらいつでも言って下さいね」

「分かりました。お気遣い感謝します」


 いや~、本当にララ様は女神様に違いないべ。国の皆は、凄い力を持った魔法使いだと思ってるみたいだが、オラ達農民は本当に豊穣の女神様であらせられると分かってる。


 そうそう、オラ達農民が金を出しあって建てた教会がそろそろ立つみたいだ。何の教会か知りてえか? そりゃ勿論、


『デメテール教会』だべさ!


 ララ様のデメテールという名前を頂戴したエデン国最初の教会だ! ララ様の彫刻も教会の中に奉る予定だべ。完成するのが、楽しみだべさ。


「どれ、そろそろ小麦の収穫の時期だべ。良い具合に育ったか確認しに行くか」


 野菜を育てている畑の手入れが終わった所で、小麦畑を見に行く事にした。収穫のタイミングを見極めて、出来の良い小麦で作ったパンをララ様に食べさせてやりてえのさ……。


 少し離れた小麦畑へ向かうと、他の農民達の人だかりが出来ていた。皆どうしたんだべ? 不思議に思って小走りで近付いて行くととんでもない光景が視界に飛び込んできた。


「な、なんだこりゃ!?」


 と、驚いてみたものの嫌な予感はしていた。

 なんたって、少し遠くから見えてたからな……。


 太く硬い幹。まるで樹齢何百年の樹木並みだ。そして大事な穂先は遥か空で漂っている。それにしても、小麦一つ一つの粒が人ほどの大きさになってやがる。


 この小麦を収穫出来れば当分食うに困んねえだろうな……。


「って、あんな高い所どうやって収穫すんだっ! お前ら、これは誰がやったんだ!?」


 他の農民達にそう聞くと、皆一斉に一人の女性を指差した。

 ああ、やっぱりか……。


「ララ様……なんでこんな事を……」

「てへっ、小麦を大きくしたら一杯取れるかと思ったのですが、ちょっとやり過ぎてしまいましたわ!」


 全く、やり過ぎってもんじゃねえべさ……。


「仕方ねえ、ヨシュア王に来て頂くしかねえべ」

「んだんだヨシュア王ならなんとかしてくださるべ」

「そ、それは止めませんことっ!」


 ヨシュア王を呼ぶと言ったら、ララ様は慌て出した。

 きっと、ヨシュア王に叱られるのが怖いんだべな。


「んだとも、これを何とか出来るのはヨシュア王しかいねえでさ」

「わ、私が何とか致します! 少しお待ちになって!」


 ララ様はそう言って、不思議な呪文を唱え出した。

 なにやら嫌な予感がするべ……。


「うぉっー!? オラの畑の野菜が城みてえにでかくなってやがるっ!! や、止めてくれララ様ー!」


 農民仲間の悲痛な叫びが聞こえて来るが、聞かなかった事にするべ。どれ、オラはヨシュア王を呼びに行くとするか……。しかしまあ、うちの女神様はやっぱり“駄女神さま”かもしんねえな。


「おわぁーっっ!? オラのブドウが化け物みてえになってやがるーっっ!!」


 今日も、この国は平和だ。  

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