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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
四章 それぞれのケジメ
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世界樹の迷宮『平原』

「──な、なんだここ……」

「ここがダンジョンなの?」

「ダンジョンに、なんで平原が……」


 青く澄んだ空──心地好い風が草花を撫で、ほのかに届く花の香りが心を静める。


 何処までも続く平原──


 ここがダンジョンだとはとても思えない。

 そんな光景が、ヨシュア達の前に広がっていた。


「ねえヨシュア。ダンジョンって何処もこうなの?」

「さあ……少なくとも、俺が入ったダンジョンはこんな光景無かった」

「良く分からねえな……こんな平穏そうな所から帰って来れないとは思えねえ。入り口に戻れば直ぐに出られそう……あ!? よ、ヨシュア! 後ろ見ろ!」


 首を傾げたレメクが後ろを振り返り、驚いた声を上げて後ろを見てくれと、ヨシュアの肩を揺らす。


「え……? 入り口が、無い……」

「な、なんでよ!? 何処行っちゃったの!?」


 ヨシュアが振り返えると、そこには先程まで見ていた何処までも続く平原と同じ景色が広がっていた。


 入ってきた入り口、つまり出口を探しキョロキョロと辺りを伺うメーサ。だが、何処にも出口らしきものは見えなかった。


「よっちゃん。上に飛んで出口を探してくれねえか?」

「分かった」


 レメクのお願いに短い返事を還したヨシュアは、空と言えるか分からない上空から出口を探す為、黒い翼を広げて飛び上がろうとする。


 しかし──いくら翼を羽ばたかせても、地面からヨシュアの足が離れる事は無かった。


「な、なんで翔べないんだ!?」

「マジかよ、よっちゃん……め、メーサ! お前は魔法で翔べるか!?」

「や、やってみる!! ──"エアロフランイグ"!」


 何故か翔べ無いヨシュアの代わりに、エルフの得意な魔法を唱えて翔ぼうとするメーサ。


 だが──ヨシュアと同じ様に、メーサの足も地面を離れる事は無かった。


「なんで発動しないの!? エアロ! エアロ! トルネド! ダメ……魔法が使えない……」

「マジかよ……俺も試してみる! "フレア"!!」


 得意な火魔法を発動させようとするレメク。

 当然ながらうんともすんとも魔法が発動する事はない。


 ヨシュア達三人は顔を見合せ、不穏な状況に表情を曇らせていた。


「と、とりあえず、出口を探して歩こう! 此処に居ても何にもならないしね……」


 ヨシュアの言葉に小さく頷いたレメクとメーサ。

 三人でしばらく歩いていると、レメクが疑問をヨシュアへと投げ掛けた。


「所でよ。あのラファエルって奴の目的は何なんだ? ヨシュアを此処に潜らせて、どうしようってんだ?」

「私も気になる……此処に何か有るのかな?」


 レメクとメーサが疑問の声を上げる中、ヨシュアもそれについては考えていた。


 ラファエルの目的はララを連れて帰る事では無かった。

 ララよりも、貫く様な視線がどうも自分に向けられていた。

 そう考えると、余計にラファエルの目的が分からない。

 

 ヨシュアは、疑問の渦から出られないでいた。


「分からない。ただ一つ分かるとすれば……此処を出る事だね」

「ああ、そうだな」

「うん。こんな所早く出ましょ」


 ヨシュアの答えに、レメクとメーサの答えが重なる。

 色々不思議な事は有る。


 この迷宮ではヨシュアの翼も意味をなさない事。

 魔法が一切使えない事。そして、ラファエルの目的。


 考えれば考えるほど深みに嵌まっていく。

 だが、三人の気持ちは纏まり、一つの目的を見ていた。


 此処から抜け出す。

 

 ただその一点を目指し、三人肩を並べひたすら平原を歩いて行くのだった──

 

──数時間後。


 ただひたすらに景色の変わらない平原を歩いていた三人に、変化が訪れる。

 

 それは、一面に咲き誇る色とりどりの花畑へ、たどり着いた時だった。


「──あれは……女の子?」


 花畑の真ん中で花冠を作って遊ぶ少女。

 そんな光景が三人の視界へ入り込んできた。


「ん? ……なんか見た事ある女の子だな」

「私も……あっ! あれ、もしかして……お姉ちゃん?」


 メーサの言葉にドキッとするレメク。

 その真偽を確かめる為、目を凝らすと──


 女の子の正体を確かめる視界に、ヨシュアの駆ける姿が通り過ぎていった。


「ちょっと待てよ、よっちゃん!」

「ヨシュア!」


 二人の声に止まる事なく走るヨシュア。

 その心の中は、自分が殺してしまったエリーユに、支配されてしまっていた。


「エリーユ! エリーユ待ってくれ!」


 エリーユと思われる女の子に駆け寄るヨシュアだが、距離が縮まると、女の子は走って逃げてしまう。


 近付いては離れ、近付いては離れる。

 そんな鬼ごっこを、ヨシュアは夢中で続けていた。


「──エリーユ……なんで逃げちゃうんだよ」


 近付いては逃げてしまう女の子を追って、随分遠くまで来てしまったヨシュア。その後ろに、レメクとメーサの姿は無かった。


 ヨシュアが女の子を追いかけ、遠くまで来てしまったその頃──レメクとメーサも、それぞれ別の何かを追いかけて走っていた。


 ヨシュアが女の子を追いかけ走り去ってしまった時、二人もその後を追ったのだが、


「ちくしょう! どこ行ったんだよっちゃん!」

「エリーユお姉ちゃんは死んだ……なのにヨシュアは……」


 ヨシュアの姿が見えなくなり焦る二人。

 その前に、やっとヨシュアの姿が見え始める。


 しかし、レメクとメーサの前に現れたヨシュアの姿は、二人存在していたのだ。


「はぁ!? なんでよっちゃんが二人いんだよ!?」

「私に聞かれても分かんないわよ!! でもどっちかがヨシュアの筈よ!」


 突然現れた二人のヨシュア。

 混乱する二人がヨシュアへ近付いて行くと──


 二人のヨシュアは、別々の方向へ走って行ってしまった。


「マジかよ……どうするメーサ?」

「どうするって……とりあえず追いかけないと! 私は左へ行くから、レメクは右に行ったヨシュアを追って!」


「分かった!」


 別々の方向へ走っていくヨシュアを、二てに別れ追いかけるレメクとメーサ。


 だが、二人は気付いていない。

 二人が追いかけたヨシュアは幻影だということを……。



「待ってよ、エリーユ! ……此処は、洞窟?」


 女の子の姿を追いかけるヨシュアの前に現れた洞窟。

 その入り口は、巨大な岩にぽっかり空いた洞穴だ。


「ヨシュア──こっちだよ──」


 暗い穴から聞こえる女の子の声。

 その声に、ヨシュアの体は自然に暗闇へと向かって行った──



「ヨシュア! 待ってよ!」


 一方、幻影のヨシュアを追ったメーサの前にも、不思議な光景が広がっていた。


 空へ高く伸びる木々。

 それは見慣れたエルフの森と酷似していたのだ。


「え、なんでエルフの森が……」


 ダンジョンに入った筈なのに、エルフの森の景色が現れ困惑するメーサ。そんなメーサに、誘う様な声が聞こえてくる。


「メーサ──こっちだよ──大好きなメーサと、此処でずっと暮らしたい──だからおいで──」


 甘く蕩ける様な声。

 メーサはその声に、フラフラとついていく。


「──待てよ、よっちゃん! 止まれ!」


 そして、幻影であるもう一人のヨシュアを追ったレメクの前にも、懐かしい光景が現れていた。


「あ? 此処は、俺の家じゃねえか! なんでここに……」


 突然現れた懐かしい屋敷。

 屋敷の門を潜ると、不思議と込み上げてくるものがあった。


「レメク──遊ぼうぜ! ──レメク、こっちだ──」


 懐かしい、幼い頃の兄の姿と声。

 幼い頃は、二人仲良く遊んだものだ。

 

 そんな、仲が良かった頃の兄の姿は屋敷の中へと消えていった。レメクはその姿を、たどたどしい足取りで追いかけていく──



 ヨシュアは洞窟。メーサは森。レメクは屋敷と、それぞれバラバラにされてしまった三人。


 三人が追うのは夢幻。

 幻影は三人に何をもたらすのか。


 それぞれの闇へ向かっていく──

お読み頂きありがとうございます!

新作「万年Fランルーキーの最弱冒険者は転生少女と出会い最強へ~特殊性SSランクのランダムスキラー~」も宜しくお願いします!

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