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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
四章 それぞれのケジメ
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ラファたん強襲

 エルフの里で婚約パーティーが行われた次の日──

 ヨシュアはメーサ宅で神妙な表情をしてゴルゴンと顔を突き合わせていた。


「ヨシュア……その話は本当なのか?」

「……間違い有りません」


 後悔の塊の様な表情で問うゴルゴンに、ヨシュアは堂々と嘘偽り無い真実を告げる。


「そんな……ならばヨシュア君にその気は無いのか?」

「すいません……」

「そんなの酷いわ! お父さん! 私……ヨシュアに裸を……」


「なんだと!! ヨシュア! それなら話は別だ!! いたいけな娘をもて弄んだ責任をとれ!!」

「いやいや! それは違います! それには深い訳が……ララちゃん! 説明してくれよあの夜の事を!」

「ヨシュア様……お見苦しいですわよ? あの晩、メーサは凄い声で唸っておりました……それはもう獣の様に」


「なんだと!! ヨシュア! もう言い訳は聞かんぞ!!」

「ちょちょちょ! ララちゃんなんて事! それはララちゃんが──」

「よっちゃん! お前も男なら覚悟を決めろ!! 俺は情けねえぜ……お前はそんな男じゃ無かっただろ。もう、腰を据えても良いんじゃねえか?」

「レー君……って!! レメク! 誰の差し金だ! 何を取引した!!」


「取引なんてしてねえよ……」

「じゃあ何故目を合わせない!! クソッ! なんでこんな事に……」

 

まるで昼ドラの様なドロドロした展開。これはヨシュアが結婚するというのはメーサによる虚偽だと真実を告げた事が原因となっている。


 だが、既に周りを固めて用意万端のメーサにとってヨシュアが真実を告げる事など想定内。ヨシュアを丸め込む為の茶番劇など既に準備済みだったのだ。


 嵌められた悪魔に逃げ場は無い。大人しくメーサの伴侶となる事しか選択肢は無いのかもしれない。


 そんなヨシュアの元に──救世主? いや、さらなる地獄への使いが訪れる──


「ヨ~シュアたん! 遊びましょ!」


 玄関の外から幼い少女の声がヨシュアを遊びに誘っている。エルフの子供だろうか? そんな単純な思考で、ヨシュアは修羅場から逃げる様に玄関の扉を開けてしまった。


「君……誰かな? エルフの子じゃないみたいだけど」


 ヨシュアの前に現れたのは青い髪が目立つ幼い少女だった。その少女はヨシュアの顔を見て嬉しそうに微笑む。


「やーっと会えたねヨシュアたん! ラファたん嬉しい! あっ! ララ様も居るんだね! お久しぶり~」

「貴女はラファエル!! なぜ貴女が此処に!?」

「レメク! メーサ! ララちゃんを守ってくれ!!」


 ララの一言で全てを察したヨシュア。レメクとメーサにララを守る様に指示を出すと、扉を荒く締め、ラファエルと二人見つめ合った。


「ラファたん怖ーい。そんなに邪険にしなくても良いのに!」

「君の目的は分かってる。ララちゃんを連れ戻しに来たんだろ?」


「えー、違うよ? ラファたんはヨシュアたんと遊びに来ただけだもん! だから~、遊んだら帰るもん!」


(なんだこの子……遊ぶって何をしようとしてるんだ? まさかただ遊ぶだけじゃないよな……)


 頬を膨らませ怒るラファエルに、言い知れぬ不安を覚えるヨシュア。いくら子供とはいえ天使──何を企んでるいるか分からない。ヨシュアはそう考えずにはいられなかった。


「分かった。遊んだら帰ってくれるんだよね?」

「うん! やった! じゃあ、水遊びしようね?」


 無邪気に喜ぶラファエル。だがその無邪気さの中にヨシュアは狂気を見抜き、咄嗟に距離を取る。


(やっぱり、ただ遊ぶだけじゃないみたいだ……それより──この殺気はなんなんだ!! 今まで感じた事が無い位強烈な殺気だ!)


「どうしたのヨシュアたん? ただの水遊びだよ~。怖く、ないよ?」


 ヨシュアが距離をとった事に不思議そうな表情のラファエル。自身の周りにビー玉ほどの水の玉を作り出し──ヨシュアへと容赦なく発射する。


「なんだよこれ!? うわっ!」

「あれ~? 避けられちゃった! あっ、でも少しかすったからラファたんの勝ち~!」


 喜びを表しピョンピョンと跳ねるラファエル。その喜びとは裏腹にヨシュアの表情は冴えない。頬にかすった水の玉。濡れる頬からは、かすった際に切れた傷口から血が滲んでいた。


「次はシャボン玉だよ~! これに当たると──爆発しちゃうよ?」


 ラファエルはその言葉通り、シャボン玉を何十個と作り出すとフワフワと漂わせる。


「全部捕まえられるかな? 頑張って捕まえないと大変だよ~」


 ラファエルの言っている意味が分からないヨシュアは呆然とシャボン玉の行方を眺めていた。そして、その内の一つがエルフの家の窓に触れた時──


『バコーンッッ!!』


 凄まじい破壊音が静かなエルフの里に鳴り響く。その破壊音はエルフの家の窓を吹き飛ばし、窓枠も酷く破壊されている。


「なんだ!? 何が起きた!?」

「あー!! 俺の家が!!」


 爆音と衝撃に驚いたエルフ達が続々と家から出てくる中、ヨシュアの視線はユラユラと漂うシャボン玉に向かわされていた。


「なんなんだよこれ!!」


 訳が分からない事態に苛立ちを隠せないヨシュア。しかし、ほっておく事も出来ず漂うシャボン玉達を追いかける。


 また一つエルフの家を襲おうとしていたシャボン玉を見つけたヨシュアは壁に触れる前にシャボン玉を手で割ってみた。


『バコーンッッ!!』


「うあっ!! くっっ……」


 予想通り爆音と共に衝撃が起こり、ヨシュアを直撃する。ただのシャボン玉とは思えない衝撃。


 一体何が起こっているのか? 飛び出して来たエルフ達も状況が掴めず、困惑を極めていた。


「大丈夫かヨシュア!?」

「ヨシュア! 一体何が起こってるの!?」


 レメクとメーサが慌てて衝撃に立ち眩むヨシュアへ駆け寄ってくる。だがヨシュアも何が起こっているのか、説明出来るほど状況を理解している訳ではない。


「分からない……一体あの子何者なんだ」


 ラファエルを見据え呟くヨシュア。その呟きに答えたのは唯一ラファエルを知る人物──ララだ。


「あの者は大天使ラファエル。主神に使える最強の天使の一人。リリンさんとのお話に出てきた者です。覚えていますか?

ヨシュア様」


 ララの言葉に、リリンがエデンを訪れた時を思い出すヨシュア。確かに、『翼の生えた少女に助けて貰った』そんな話をリリンがしていたと記憶に残っていた。


「あの子が大天使……でも、ララちゃんを連れ戻しに来た訳じゃないなら一体何が目的なんだ!!」

「分かりません……ただ、あの者は天界で一二を争う強者。気を付けて下さいヨシュア様」


 気を付けて下さいと言われても何を気を付ければ良いのか? 子供相手に出来る事と言えば拳骨位なものだろうと、ヨシュアは苦々しい表情でラファエルを見ていた。


「メーサ! 急いで物理障壁を住居に張って! レメクはエルフ達を一時避難させてくれ! 理由は後だ!!」

「「分かった!」」


 ヨシュアの指示によって動き出すメーサとレメク。二人が的確に動き出したのを確認したヨシュアは、相変わらず無邪気な笑顔のラファエルの元へ警戒しつつ近付いて行く。


 ラファエルへ近付いていく最中も、物理障壁にぶつかったシャボン玉が爆音を響かせ破裂している。


 メーサは勿論、ゴルゴンや魔法を使えるエルフ達が協力して物理障壁を張り巡らしたお陰で、被害は最初にシャボン玉が爆発した一軒で済みそうだ。


「君は一体何の為にこんな事を?」


 ラファエルの元へ近付いたヨシュアは子供相手だという事も有り、なるべく優しく問い掛けた。


「遊ぶためだよ? 次はヒーローごっこしよ! ヨシュアたんは悪役ね! ラファたんは正義のヒーロー! それっ!」

「うぉっ! それは……」


 ヨシュアの問い掛けに変わらない笑顔で答え、次の遊びはヒーローごっこだと宣告するラファエル。ヨシュアの答えも聞かず、間髪入れずに水を具現化した片手剣で斬りかかってきた。


 透き通った水の剣。玩具の様な見た目だが、その見た目からは想像出来ないほど切れ味は抜群のようだ。現にヨシュアが避けきれずかすった腕には、しっかり切り傷が刻まれていた。


(この子本当に子供か? 警戒してたのに避けきれなかった……)


 ヨシュアが思う通り、ラファエルの振るった剣筋は子供のものとは思えないほど速い剣速だった。


 やはり天界で一二を争う強者というのは本当のようだ。しかし、ヨシュアも子供相手に負けていられない。それが天使なら余計だ。油断した隙にララを連れ去られる事も有り得るかもしれないのだから。 


「本気で相手をしないとダメそうだね。ここまでイタズラされたからには──拳骨させてもらうから」

「ラファたん怖~い。でも──今のヨシュアたんじゃラファたんには勝てないよ?」


 拳骨を作り凄むヨシュア。だが、ラファエルは無邪気な笑顔から小生意気な笑みに変わり、ヨシュアを小馬鹿にしていた。


「だったら──拳骨喰らっても泣くなよ!」


 赤い瞳が更に深い赤みを帯びる。

 ヨシュアは自身最大の速度でラファエルへ飛び込む。


 この速さなら誰にも追い付けない。今まで戦ってきた相手はこの速さに追い付いて来た事が無かったヨシュアにとって、そう思うのは当たり前だった。


 今日までは──


「残~念。ラファたんはこっちだよ~」

「えっ? なんで……」


 最大速度でラファエルへと近付いたヨシュア。しかし、拳骨を振り下ろす筈の相手であるラファエルは目の前には居ない。

 

 小馬鹿にした様なラファエルの声は、背後からしていた。


 有り得ない現象に呆然とするヨシュア。そんなヨシュアに、ラファエルは容赦などしてくれないようだ。


「じゃあ次はラファたんの番ね! それっ!」

「くっっ!! なんなんだ君は!」


 背後から振り下ろされる殺気。必死に上空へと飛翔し避けたヨシュアだったが、背中は切り傷でピリピリと痛んでいた。


「頑張るね~ヨシュアたん。次はヨシュアたんの番だよ?」


 ラファエルは相変わらず生意気な態度でまだかな~? と、ヨシュアを見上げている。


 小生意気な子供に拳骨をお見舞いしたいが、どうすればいいかヨシュアは考えあぐねていた。そんなヨシュアに、女神様からアドバイスがなされる。


「ヨシュア様!! その者、姿は子供なれど何千年も生きている大天使です! 智光も優れ、強さも並大抵では有りません。ここは、お逃げになった方が宜しいかと……」

「あー! ララ様余計な事言っちゃダメだよ! 主神様のお気に入りだからってラファたん怒るよ?」


 ララの言葉に頬を含ませ抗議するラファエル。見てくれは可愛いが、その殺気は尋常ではなかった。


 このままでは不味い。そう感じたヨシュアはラファエルの意識を向ける為、禁句の言葉を叫んだ。


「貴女の相手は俺だ! この、ロリババア!!」


 言ってはいけない禁句。

 その責任は死より重たい。


 ヨシュアの喉元に突きつけられた水の刃が、それを物語っていた──


「調子乗んなよ? クソガキ」

亀更新で申し訳ありませんm(_ _)m


新作「特殊性SSランクのランダムスキラー」も宜しくお願いします!

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