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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
四章 それぞれのケジメ
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海岸戦

「──我等魔王軍!! 不可侵略の命を解かれ、今こそ人の地を手中に治める!!」

「「うおー!!」」


 魔界の海岸を覆い尽くすほどの魔王の軍勢。


 指揮官として軍勢を鼓舞するのは、現魔王イフリートの部下──ミノタウロス族のブルズ。ブルズは魔王の軍勢を率い、鋼の大船に乗り込もうとしていた。 

 

 この鋼の船は、人間界へ行くために通らなければならない魔の海域『絶海』を、無事に通過する為に開発された船だ。


 絶海では荒ぶる波は兎も角、一番危険なのが海の大型魔物『海魔』と呼ばれるもの。タコ型、イカ型、サメ型など、海魔のフォルムは様々だが、奴らに見つかれば最後──船を粉々に砕かれ、丸飲みにされる事間違いなし。


 古き時代の人間界への遠征も、海魔に襲われ軍勢の大半を失ってしまった事が多々だ。そんな絶海を越えるため、魔界の技術の限りを尽くして鋼の船は作られた。


 さあ、錨を上げ出発しよう。そんな時に現れたのが──


「良いタイミングで戻って来れたみたいだね」


 天空馬車を引いた悪魔が舞い降り──そう呟く。


「全くだ。何をしてんのかと思ったら、魔王の座を乗っ取るだけでは飽きたらず、人の地まで襲いに行こうとするとは……実の父ながら呆れるぜ」

「まあまあ、後でゆっくり話しなさいよ。今はコイツらを何とかしなきゃね。ヨシュアいける?」

「此処がヨシュア様の故郷ですのね! ヨシュア様の幼き頃のお話が聞きたいですわ!」


 悪魔の呟く声に一人の男と二人の女が天空馬車から降りてくる。まあ、お察しの通り──ヨシュア、レメク、メーサ、そしておちゃ女神様のララだ。


「この軍勢か……まあ骨は折れるけど何とかするよ。それより、あの船が問題かな。ざっとみて五千隻は有るみたいだし、あれを壊すのは大変だ……そうだ! ララちゃん、あの船一気に壊せないかな?」

「船ですか……見た所外装は固い金属ですが、中の骨組みは木ですわね。うん! やってみますわ!」


 ヨシュアの問いに胸を張り答えたララは、何かの呪文を唱え出す。すると──


「うわっー! 船からデッカいキノコが!!」

「キノコがどんどん大きくなってぞ!」

「キノコの重みで船が沈むぞー!!」


 船から次々と上がる絶叫。謎の巨大キノコが船から生えた事で沈んでいく鋼の船。いくら外装が固く丈夫だとしても、一度海に沈んでしまえば二度と浮き上がってくる事はない。


(ララちゃんの力は誰かを助けるというより、何かを殲滅させる方が向いてるんじゃ……)


 沈みゆく船を見てはしゃぎ喜ぶララ。そんなララを見て、ヨシュアはそんな事を思う。


「凄いねララちゃん……助かったよ。とりあえず船は何とかなったから、後は任せて」

「本当に大丈夫か? 俺も手伝うぜ」

「ヨシュアなら大丈夫よ。アンタはヨシュアが暴れてた時居なかったから知らないかもしれないけど、この位の軍勢ちょちょいよ」


(大丈夫なのは分かってんだが。ただな……)

 

 レメクは決してヨシュアが負けるという心配をしていた訳ではない。長い事会っていなかった父イフリートとの面会。


 しかもただの面会ではない。暴走するイフリートを説得し、ケジメをつけるという名分で魔界へ来たのだ。緊張する心を治めるため、少し暴れたいと思っていた。


「じゃあ、メーサ。代わりに天空馬車を引いてエルフの森へ行っててくれないか?」

「分かったわ。でも良いの?」


「うん……そろそろ俺もケジメつけないとね。ご両親にも挨拶しておきたいし」

「そう……なら先に行ってる。ほらっ、ララ、レメク行くわよ!」

「分かりましたわ。それにしても、エルフの森を間近で見れるのですね! 楽しみですわ!」


「レメク何してるの! あんたまさか緊張してんの? こんな所で暴れたって意味ないわよ。ほらっ、さっさと乗る!」

「ぎくっ! お、押すなよメーサ! 分かった、分かったから!」


 緊張を見破られ、オドオドしながら天空馬車へ押し込まれるレメク。そして、騒がしい三人はエルフの森へと向かう為、上空へと舞い上がった。


「待ってるからねー! 早く来てねヨシュアー!!」

「あー! 分かったよ!!」


 飛び立つメーサに手を振り見送ると、ヨシュアは海岸に泳いで戻ってきた軍勢を見据える。


 戻ってきた軍勢は海岸にポツンと佇むヨシュアに気付き、ざわざわと話し合っている。その中の一人であるブルズは、此方に向かって駆け寄って来ていた。


「──お前かー!! 船を沈めたのは!」

「俺じゃないですよ。しかし、沢山の軍勢ですね」


「そうだ。イフリート様に忠誠を捧げる者達がこんなにもいるという事だ。フッ、前の小娘ではこんなに兵は着いてこまい。それよりお前は……まさか!! ヨシュア・デモン!?」

「知ってくれているとは光栄です。て事は、今からどうなるかも知っていますよね?」

 

 ニヤリと、寒気がする笑顔でブルズを見つめるヨシュア。

 そんなヨシュアの姿に、冷や汗が滲み出る感覚に襲われるブルズ。そして、自分が自然と後退している事に気付いた。


「くっ! 今頃なんだ!! 魔界から姿を消したお前がしゃしゃり出る事ではないわ!!」

 

 後退する足を必死に抑え、精一杯の虚勢をはるブルズ。だが、ブルズは知っていた。虚勢が如何に無意味で、これから行われる悪魔による蹂躙ショーが如何に恐怖か。


「まあ、誰が魔王で何をしようが興味無いんですけどね。親友の助け、それにリリンは俺が魔王になる様に言ったも同じですから。それのケジメをつけに来ました」

「何がケジメだ!! 邪魔をしおってからに……シヴァ様!! 見ておられるのでしょう! イフリート様に直ぐに報告を! 人間界への進軍は中止と……」


「随分素直ですね?」

「よく言うわ……だがな。精々足掻かせてもらう! 我等新魔王軍を舐めなよ!! ──魔王軍よ! 掛かれー!!」


 ブルズの号令により、後方に待機していた軍勢が怒涛の進軍でヨシュアへ迫る。


 号令を出したブルズも背中に挿した巨大な斧を抜き、ヨシュアへ大きく振りかぶった──


 ブンッ! と、戦慄の空振り音が流れている通り、ヨシュアはブルズの攻撃を事も無げに避けていた。


「やる気満々ですね。では、此方もいきますよ」


 ヨシュアはそう言うと、黒い翼をはためかせ上空へと舞う。

 その姿を、進軍していた軍勢は足を止め見守る。


 一体何をするのか? そんな疑問でざわつく海岸。

 数秒経った頃──その疑問が恐怖によって解決された。


「なんだ!? 何が起きてるんだ!?」


 水戦を得意とするリザード族の兵士が声を上げるが、その言葉に答える者は居ない。

 何万もの軍勢の中央はドミノ倒しの様に倒れ、まるで滑走路の様な道を作っていた。


 疑問を呈した一人の兵士も分かっていた。その道を作り、滑空しているのは間違いなくヨシュアだと言う事を。


 滑走路作りをただ眺める事しか出来ない軍勢。そんな情勢の中──再び悪魔が上空へ姿を現し、大声を張り上げる。


「今倒れた者達は命を刈り取ってはいない! ただ、次の者達はしっかり刈り取るぞ!! 良いか! 五秒数える。その間に逃げ出した者達は見逃そう!! 五、四、三……」


 突然始まった死の宣告。

 それを聞いた軍勢は『三』の宣告が終わると同時に武器を投げ捨て、逃亡を始めた。


「──逃げるなお前ら!! 敵前逃亡は許さんぞ!!」


 そんなブルズの叫びも虚しく──ヨシュアの零の宣告が終わる前には、倒れている者意外その場に待機する勇者など居なかった。


「──いや~。見事に皆逃げましたね! これが忠誠心ってやつですか?」

 

 万の軍勢が逃げ出し、波の音だけが静かに響く海岸。その海岸には一人佇むブルズを煽るヨシュアの声が響いていた。


「くっ! お前は一体何が目的だ!! 魔王にでもなるつもりか!?」

「だから、そんなものに興味は有りませんよ。別に魔王がイフリートさんでも良いと思いますよ? 無茶をしなければね。目に余る様なら……分かるでしょ?」


「それは……魔界を裏で牛耳るという事か!!」

「いやいや、そんなつもりは……でも、それで魔界が平和になるならいいか? まあそれは置いておくとして──俺もう行きますね! 挨拶して来なきゃいけないんで」


 魔界を裏で牛耳る事を匂わせて消えていくヨシュア。ブルズはその黒い翼の生えた背中を、黙って見送るしか出来なかった。

明日も投稿します!

既に予約投稿しましたのでお楽しみに!


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