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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
69/96

1.8.9 追い払って、走って

「……あの狼たち、まだついてくるようじゃな?」


「なんか、すっごく悲しそう……」


「「「くぅん……」」」トボトボ


「やっぱり……わっちのせいでしゅかね?」


「いえ、シロさんのせいではないと思いますよ?最初に襲ってきたのは、彼らの方なのですから」


 狼のリーダーを放り投げた場所から、ずいぶんとやって来たというのに、今だ後ろから付いてくる3匹の狼たち。そんな彼らがしょげたようにトボトボと歩いていた様子を見て、皆、いたたまれない気持ちになっていたようだ。

 特にシロは、狼のリーダーを虐げた当人だったので、責任(?)のようなものを感じていたらしい。そのせいか彼女は、狼たちに向かって、まるでかわいそうなものを見るかのような視線を向けていた。


「でしゅけど……本当に狼たちのこと、どうにかした方が良いかもしれないでしゅね。このまま一緒に旅をするわけにもいきましぇんし……。やっぱり、犬料理に……って、作ったことないでしゅし、そもそも彼らが食べられるかどうかも分からないでしゅし……」


「いい加減、食う食わぬの話から離れよ?シロ」


「なら、アメしゃんは何か良い案はありましゅか?痛め付けて引き離すというのは、よくないと思いましゅし、かといって食べるというのも難しそうでしゅし……」


「言うておることがほとんど変わらん気がするが……そうじゃのう……。やはり、放置を突き通すしか無いのではないか?そのうち諦めるじゃろ」


「でしゅかねぇ……」

 

 と、アメたちがそんなやり取りを交わしていると、山道が急に開けてきた。そして丁字路に突き当たり……。一行はようやく街道へとたどり着く。

 

 すると、放置を突き通すと言っていたはずのアメ本人が、後ろからついてきていた狼たちに向かってこんな言葉を投げ掛けた。


「さて……ここまで来れば、さすがに戻るじゃろ?ほれ、そなたらの仲間は、あっちじゃ。行くが良い。ワシらに付いてくるでないぞ?」


 そう言って、シッシと手を振るアメ。

 しかし、狐の彼女と狼たちの間では、コミュニケーションがうまく取れていなかったらしく――


「「「ハッハッハッ……」」」ぱたぱた


――狼たちは、なぜか尻尾を振って喜んでいたようだ。


「なぜ行かん……」じとぉ


「多分、アメしゃんが話しかけたのを喜んでいるんだと思いましゅ。ここまでまったく構わずに放置していたでしゅし……あ、そうでしゅ。試しに玩具でも投げてみたらどうでしゅか?」


「「「おもちゃ?」」」

 

「はいでしゅ。例えば、こんな感じの手頃な枝のようなものを用意して……」


 シロはそう言って、その場の地面に落ちていた木の枝を拾い上げると、狼たちの前でそれをちらつかせ、彼らの興味が移ったのを確認してから――


「ほいっ」


――と、軽い様子でそれを放り投げた。その投げ方は、いわゆるオーバースロー。道の先にかろうじて見えていた村の入り口の方に向かって枝を投げたのは、あわよくば村にいるだろう狼の群れに合流させることを狙ったためか。

 

 それ自体は、普通の行動だった。拾った枝を投げる少女の姿そのものである。ただ、彼女と本物の人間とで大きく異なっていた点があるとすれば――


パァンッ!!


――元が鳥類である鶴ゆえに、腕周辺の筋力が異様に発達していたことか。なお、彼女の見た目は、か弱そうな村娘で、筋肉だるまというわけではない。


「「「?!」」」

「「「?!」」」

「zzz……んま?」


 破裂音をあげて粉々になり、吹き飛んでいった木の枝だったもの。それを見ていた3匹と3人、それに1人の赤子は、驚いて目を見開く。

 一方、シロは、吹き飛んだ木の枝に納得できなかったらしく、表情を浮かべながら、釈明の言葉を口にした。


「んー、あの木の枝は、腐って脆くなっていたようでしゅねー。ごめんなしゃい?狼しゃんたち。もう一本投げましゅね?」


 そう言ってシロが木の枝を拾うと――


「「「キャンキャンッ!!」」」


――と鳴き声を上げながら、狼たちはその場を離れて、森の中へと立ち去っていった。次にその枝がぶつけられるのは自分たちかもしれない……。そんな予感があったのだろう。


「…………?急にどうしたんでしゅかねぇ?」


「……さぁの」

「……ま、まぁ、良かったのではないですか?」

「シロお姉ちゃん、やっぱりすごい!」

「んま」


 と、シロの狼払い術(?)を見て、一行が十人十色な表情を浮かべていると――


ドドドドド……!


――どこからともなく、地響きのような低い音が響いてくる。それも、狼たちがたむろしているはずの村の方角から……。


「……何の音でしゅかね?」


 と、振り返らずに、アメたちへと問いかけるシロ。

 するとアメも、その音には心当たりがあったらしく、彼女も()()()後ろを振り返らずに、こう口にした。


「……それ、分かっておって聞いておるじゃろ?」


 そしてアメとシロは、申し合わせたように、同時に声をあげた。


「……逃げるぞ!」

「……逃げましゅよ!」


 そして全力疾走を始める2人。

 その後ろを怪訝な顔のアオと、真っ青な表情のアカネも追いかけて……。一行は村から遠ざかる形で、街道を駆けていったのである。


ドドドドド……!ワンッ!ワンワンッ!

今日は短め……というか、今日"から"短めにしようかと思います。

これで更新頻度……上がらないかなぁ……。

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