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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
27/96

1.4.6 類が友を呼んで、見なかったことにできなくて

 白い森の中。

 そこで、3人の人間と思しき者たちに顔を覗き込まれる人物。

 それは、およそシロと同じくらいの背丈の少女だった。


 しかし、彼女は、ただの人間には見えなかった。何しろ、彼女が纏っていたのは、その辺の村や町では見ることができないほど立派な和装で……。しかも、ここはかなりの山奥で、雪が降るほど寒いというのに、上着を着ていなかったのである。

 そして何より異様な点は——


「こやつ……人の匂いがせん……」


——人のような見た目をしていながら、人の気配も匂いもしていなかった事だろう。


「……うん。アメしゃん。これやっぱり、人の形をした肉でしゅ。そうに違いありましぇん。きっと……わっちたちの努力を見守ってくれている鶴しゃんか誰かが、空から落としてくれた新鮮なお肉でしゅ!」


「いや、ないじゃろ……。とにかく、解体するのは待つのじゃぞ?シロよ。何も、ワシらは肉を欲しておるわけではないじゃろ?肉なら、昨日、ワシらが狩った分が余っておるではないか」


「んまんま」


「……それもそうでしゅね。アメしゃんが止めるのなら、仕方ありましぇん。では、このお肉は、とりあえずここに放置しておくことにしましょう」


 アメやナツ(?)に止められた結果、一度は捌こうと思っていた人間(?)を、再び雪の上に戻すシロ。どうやら鶴である彼女には、人をいたわるという心は存在しないようだ。まぁ、未だ寝ぼけていた可能性も否定はできないが。


「さてと……。それじゃぁ、気を取り直して、朝食を作るでしゅ!」


「うむ。期待しておるぞ?」


「んまんま?」


 と、朝食作りに勤しみ始めたシロに向かってエールを送る狐と赤子。



 そして、30分後。


「できたでしゅよ?」


「うむ」だらぁ


「んま」だらぁ


 そこに組み上げられていた即席のコンロの上では、シロの作った鍋料理がグツグツと沸騰して、美味しそうな匂いを漂わせていたようである。その結果、アメもナツも、涎が止まらなくなってしまったようだ。


「では、早速、いただこうかのう?」


 未だ箸を上手く使えなかった人の姿のアメが、箸をまるで串のように使って、鍋の中に浮かぶ具を自身のお椀に取ろうとした——そんなときだった。


「……はっ!私、人間です!」


「「…………は?」」

「んま?」


 雪の上で転がって冷たくなっていた人間(?)が、意識を取り戻した際に口にした第1声。それを聞いて、アメたち3人は、思わず眉を顰めてしまったようだ。


「……のう、シロよ?人というものは、自身のことを人間じゃと申告するものかの?」


「……アメしゃん。アメしゃんは人の世界については、あまり明るくないかもしれないでしゅけど、世の中には、残念な人がいるのでしゅ」


「……うむ。それはお主のおかげでよく分かっておるのじゃ」


「…………?まぁ、いいでしゅ。そんなわけで、わっちは、その残念な人というのが……この人だと思うでしゅ」


 そう言って、後ろを振り返って、そこで上体を起こしていた少女の背中に向かって、残念なものを見るような視線を向ける”残念な鶴”、シロ。

 そんな彼女に追従して、アメもナツも、少女に対して視線を向けた。


 対して、人間宣言をした少女の方も、自身の後ろからおいしそうな匂いが漂ってくることに気づいたらしく、後ろを振り返るのだが——


「…………!」


——そこで彼女は初めて、アメたち3人の存在に気づいたようだ。


 そして、彼女が口にした第2声はこうだった。


「私は人間です!信じてください!」


「……さて、飯でも食うかの?」


「そうでしゅね。冷える前に食べてしまうでしゅ」


「んま!」


 そう言って、再び鍋の方を向くアメたち3人。


 そんな彼女たちは確信していたようである。——自分たちの後ろにいる少女は、いわゆる、構ってはいけない類いの人物だ、と。


 しかし、一旦双方がその存在を認識してしまったが最後……。アメたちは、少女のことを、無視できなくなってしまったようだ。



「これ、すっごくおいしいです!こんなおいしい料理、食べたことないです!」ばくばく


「おいしいでしゅか……そうでしゅか……ふふ……ふふふふふ……」かたかた


「(こやつ……一人でいったい何人分、食うつもりじゃ?)」


「んまんま」もぐもぐ


 朝食を口にするアメたちの姿を、物欲しそうな表情を浮かべながら、その後ろからジーッと眺めていた少女。そんな彼女が発するプレッシャーに負けて、アメたちは少女に対し、朝食を振る舞ったようである。


 そんな少女は、かなりの大飯食らいだったらしく、余っていたウサギの肉の殆どを、ほぼ1人で平らげてしまったようだ。


「……ごちそうさまでした。もうなんというか……感無量です……!」ぶわっ


「そうでしゅか……。喜んでもらえて、わっちは幸せでしゅ……!」ぶわっ


「(なるほど……。これが、類は友を呼ぶ、というやつじゃな?)」


 と、見た目は異なるものの、雰囲気が似ていた2人の様子を見て、一人納得げに頷くアメ。

 

 それから彼女は、少女に対し、質問を始めた。


「して、お主。名をなんと申す?」


「も、もしかして、私のことを、人ではないと疑っておられるのですか?!」


「……一つ言うておくが、人は自分の事を、自ら、人じゃ、とは宣言せぬぞ?」


「んぐっ?!」


「……で、名は?」


「……アオです。母上曰く、空の青い日に生まれたからアオだ、と言ってました」


「ふむ……。で、お主は何者じゃ?」


「……に、人間……」


「いや、そういう冗談はもう良いからの?」


 雪の中で寝ていて平気な人間など居るわけがない、と思いながら、まったく寒そうな素振りを見せていなかったアオに向かって、その正体を問いかけるアメ。


 その結果、アオは、渋々自身の正体を口にするのだが……。それは少々、難のある返答だったようである。



投稿する場所を間違えたのじゃ……。

眠いのじゃ……zzz。

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