ストーリー 1,4
「ここは?」
「魔力測定のための部屋です」
さっきの話からするとそうなんだろうけど。
「こういう所でするんですか。てっきり、もっと適当な感じなのかと」
「高位の魔術師ならそれでもいいんですけど。私達は、場所も道具もちゃんとしたものを使わないと」
団長さんは苦笑しながら準備を進める。何をしているのかは分からないけど、水晶の位置を変えたり部屋の角を確かめたりしているようだ。
「こっちに魔力を流して……次は陣を起動、あっ!間違った……」
大丈夫かなぁ……
「すみません、お待たせしました」
ただ殺風景なだけだった部屋が、どこか神聖な感じのする場所に変わっていた。
「へぇ」
「長くは持たないので、手早く済ませてしまいましょう」
団長さんの指示に従って水晶に手を置く。……何も起きない?
「いきますよ」
彼女が触れたとたん、水晶が光を放ち始めた。その光は徐々に大きくなり――――
「何、この反応!?」
「えっ? って、うわぁぁ!?」
――――轟音と極光が部屋を埋め尽くした。
「ゲホゲホッ。団長さん、大丈夫ですか?」
「魔力量、測定不可? そんなことって……」
彼女は信じられないものを見たような顔をしている。
「あの、ホントに大丈夫ですか?」
「……あっ、すみません!」
「今のって、何が起こったんですか」
「それは……」
飛び散った水晶の破片の内、手近なものを拾い上げてから彼女は口を開いた。
「この水晶は軍の正規品で、並大抵のことで壊れるようなものではありません」
「……つまり?」
「あなたの魔力が、桁外れだった……ということになります」
そういうパターンのチート能力か。王道というか有りがちというか……どっちにしても、全然実感が湧かないな。手を開け閉めしたり首を振ったりしていると、団長さんが躊躇いがちに声を掛けてきた。
「ゲートの向こうへ帰る手段はないのですよね」
「え? まあ、今は思い付かないですね」
「それなら、その……私達に力を貸してもらえませんか?」
なかなか意外なことを提案されたと思う。ついさっきまでスパイ容疑をかけられてた人間のスカウトなんか普通はしないって。
「すいません。急にこんなことを言って」
「いや、えっと。なにもやることがないので、断る理由はないですが」
俺、魔力はあっても魔法なんて使えないんだけど。
「少しでも多くの戦力が必要なんです。今の私達には、何もかも足りない」
「よく分からないんですけど、そういう補給? とかはされないんですか?」
そう質問した途端、部屋の扉が激しくノックされた。
「団長、緊急事態です! って、何があったんですか!?」
ああ、さっきの爆発のせいで水晶の破片が散らばってるから……
「なんでもありません。それより、報告の内容は?」
「あっ、そうでした、ゲートです! さっきのよりは小規模ですが、すでに魔物が出現していて!」
ゲートって、俺が通って来たやつか。魔物が出て来るって……
「一日に二回も発生するなんて……この間の戦闘が?」
「今はローさんの指示で動いてます。団長も早く!」
「分かりました。アカツキさん、この戦闘を見ていてください。さっきの意味が分かると思います」
彼女は部屋を出て行った。去り際に、手早く部下へ指示する姿は、見事という他なかった。