ストーリー 1,3
「止めてください!」
兵士の囲いを割って、軍服を纏った少女が現れた。
「どうなっているのですか? ゲートが発生したのでは?」
「ミリア団長。それが……」
兵士がその少女に説明をしている間、俺はその光景に、奇妙な感覚を覚えていた。どういうことかというと、俺はここを知っている。ていうか、夢に出て来た場所その物だ。
(異世界転移なんて、現実にあるもんなんだな……)
することもないので、そんなことを考えてしまった。異世界と確定した訳ではないが、良く言ってレトロな、悪く言って原始的な兵士達の装備や、時々聞こえてくる『魔法』という単語。まず間違いなく異世界だろう。有明の戦場の可能性もあるけど、気温的に夏でも冬でもなさそうだし。
「私達の言葉が分かりますか?」
さっきの少女が話しかけてきた。言葉……そういえば、兵士達もそうだけど、この場の全員が日本語を話してる。どういうことなんだろう。もしかしてあれか? 言語理解のチート能力って奴か?
「あ、大丈夫です。ちゃんと分かります」
「そうですか。では、幾つか質問させてください。あっ、申し遅れました。私はこの砦の守備兵団長、ミリアという者です」
「あ、ご丁寧にどうも。暁勤です。暁が名字で勤が名前。好きに呼んでください」
名乗った瞬間、空気が変わった。具体的には、それまでと違う感じの敵意を感じる。
「名字……家名のことですよね。もしかして貴族階級の方、でしたか?」
「え……いや、違いますよ。普通の庶民です」
また空気が変わった。さっきよりもだいぶ弛緩したように感じる。
「そうですか。いえ、すみません。質問を続けさせても?」
「はい、大丈夫です」
それから色々な質問をされた。主にどこから来たのかとか、身分はどうだとか。とはいえ、そもそも世界が違うのだからお互いによく分からない。今分かったことは、俺が『ゲート』という現象に巻き込まれたということと、そのお陰でこの世界の言葉が分かるようになっているらしいということだ。
「普通なら、変性した生物は理性を失ってしまう筈なのですが」
「変性しなかったってことはないですかね?」
まあ、文法も文字も初めて見た言語を流暢に使っている時点で、なにかしら影響されてるんだろうけど。
「可能性がないとは言えませんが……そうですね、魔力の測定をしてみましょうか」
にわかに周囲が騒がしくなった。某賭博漫画なら背景に『ザワ…ザワ…』とでも書かれそうだ。
「砦内に入れるつもりですか!? 帝国の密偵かもしれないんですよ!?」
「それはないと思います。もしそうなら、この状況はあまりに不自然ですよ」
確かにそれは言えてる。異世界から来た人間とか、怪し過ぎてスパイにならない。
「ではこちらに。付いて来てください」
ミリアと名乗った少女に案内され、砦の中に入る。壁の大半が崩れていたが、思いの他しっかりとした造りをしていた。
「何て言うか……穴だらけですね」
「戦場になったばかりなので。全壊しないだけ、まだ良かったと思います」
その後は特に会話もなく、とある部屋に案内されるまで、俺達はただ歩き続けた。
「ここです。どうぞ入ってください」
そこは、小さな机とその上に置かれている水晶のような何かだけがある、不思議な感じのする場所だった。




