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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二章 異世界転移
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(4)

 おいおい……。


 セリカに突き放されてしまった僕は、仕方なく周囲をもう一度見回してみた。

 相変わらず大勢の兵士たちが列を組んで、道をぞろぞろ歩いている。


 そこで、ざっと人数を計算してみた。

 うーん……縦に20列、横には――多すぎてちょっと数えきれないが、ずらりと100列ぐらいは続いているようだ。

 ということは、歩兵だけで二千人。

 かなりの規模だ。


 だが、兵士たちは全体的に緊張感に欠けていた。

 どうもだらけた感じがして、ところどころ列が乱れてしまっているのだ。

 士気はかなり低いっぽい。


 一方、それとは対照的なのが軍の中心にいる馬に乗った騎士たちだ。

 彼らは全員、竜をかたどった兜と鎧を身に付け、手には長槍(ロングスピア)を持っている。

 いかにも精鋭ぞろいといった感じで、威風堂々(いふうどうどう)と馬を進めていた。


 そして、その中でひときわ目立っているのが、騎士の一人が掲げる巨大な戦旗だ。


 旗は濃紺に染められ、金の(わし)刺繍(ししゅう)が縫い付けられており、その下には見知らぬ異国の文字が――

 

 いや、読める。


 僕はなぜか、そこに書かれている『ロードラント=キングダム』という文字列が読めた。

 そういえばさっき兵士に怒られた時、その言葉も自然に理解できたっけ。

 日本語ではないのに、考えてみれば不思議だ。

 

 ああ、そうか。

 セリカが言った“この世界で生き延びるだけの力”とは、言語や読み書きの能力も含まれているのだ。


 これならいけるかもしれない。

 と、僕は決心した。

 一度は死のうとしたんだから、自分にもう怖いものなんてないはず。


 だから、とにかく前へ進もう。

 この異世界で人生を根本からやり直すのだ。

 覚悟を決めた僕は、そのまま行軍を続けることにした。

 だが、目線はどうしても白馬の少女を追ってしまう。


 なにしろ少女はまばゆい輝きに満ちている。

 強烈なオーラ――今まで感じたことない高貴な光を全身から発していて、どうしても目がそっちに吸い寄せられてしまうのだ。 


 そして僕は確信した。

 きっと彼女はロードラント王国の王女に違いない、と。


 その時だった。

「アリス様!!」と、呼びかけながら、一人の騎士が白馬の少女に近づいた。

 立派な白いひげを生やした、かなり年配の騎士だ。


 へえー、

 あの女の子、アリスと言うのか。

 もし本当に彼女が王女様だとしたら……。


 “王女アリス”


 うん。

 まさにぴったりの名前だ。


 などと考えていると――


「なんだレーモン」

 アリス、と呼ばれたその少女は、老騎士に対して不機嫌そうに答えた。 


「今、我々はすでに敵地に入っております。どうかかぶとをお被りください」

 そう言って、老騎士レーモンは美しい銀の兜を差し出した。


「必要ない」

 が、アリスは兜を一瞥(いちべつ)して首を振った。


「そんな大そうなモノ被ったら暑くてかなわん。そのうえ視界が遮られて軍全体を見渡せぬ。指揮を執るのに差し障るではないか」


「――しかし」


「くどい! 窮屈(きゅうくつ)な宮廷からようやく出られたと思ったらこれだ。まったく父王も余計な者をつけたものだ」


 アリスはぷいと横を向いてしまった。

 かなりご機嫌斜めのようだ。


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