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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二章 異世界転移
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(1)

僕は、クラスのお荷物だった。

ぼっちで、陰キャで、誰の記憶にも残らない存在。


あからさまにいじめられるわけではない。

けれど教師たちには落第生のレッテルを貼られ、友達ができるどころかクラスメイトからは存在ごと無視される。

そんな暗く惨めな日々を、僕はただ息を潜めて過ごしていた。


理由は単純だ。


高校受験で少し背伸びをして、必死に勉強し、優秀な生徒ばかりが集まる、偏差値の高い高校に入ってしまったのだ。


同年代のトップ層が顔をそろえるこの学校では、誰もが学問、スポーツ、遊び、コミュ力――そのすべてにおいてレベルが高い。


使い古された言葉だけれど、クラス全体が『リア充』で『陽キャ』。

そんな空気に満ちていた。


一方、自分はなんの取り柄もない。

どの科目もビリか後ろから二番目。かといって話術もコミュ力もゼロ。


気分は塞ぎ込み、自分の殻に閉じこもって、ついには学校を休みがちになる。

そうなるまで、たいして時間はかからなかった。


そんな惨めな毎日の中で、唯一の希望があった。

幼なじみの七瀬ななせ理奈りなだ。


理奈は育ちも性格も良くて、おまけに顔も飛び切りかわいい。成績はいつも上位、スポーツも得意で、それを鼻にかけることもない。

誰からも好かれる、非の打ちどころのない女の子だった。


理奈とは幼稚園、小、中学校、ずっと一緒。

成長するにつれ距離は少しずつ離れていったけれど、それでも僕は、お互いが一番親しい異性だと信じて疑わなかった。


そんな彼女の背を追って、努力して同じ高校に進学したが――

すべて裏目に出てしまったというわけだ。


そしてある日、決定的な出来事が起きてしまう。


下校途中――


「あれ……」


僕は一瞬、自分の目を疑った。

前を並んで歩く高校生カップル。

その後ろ姿の片方が、どう見ても理奈だったのだ。


「うそ……だろ」


理奈は男子生徒と楽しげに言葉を交わしながら、夕日に染まる帰り道を、堂々と手を繋いで歩いていた。

どこからどう見ても、青春(あおはる)なカップルだ。


けれど僕にとっては、衝撃以外のなにものでもなかった。


「おい! 理奈から離れろ!」


そう叫びそうになる。だが――相手が誰なのかに気づいて、僕はその言葉をぐっと飲み込んだ。


佐々ささき龍吾りゅうご


容姿も成績もトップクラス。二年生にしてサッカー部の副主将を務める、スクールカーストの頂点に立つ男だ。


理奈のような完璧な女子に、もっともふさわしい相手。きっと学校の誰もが、お似合いの二人だと言うだろう。


それに比べて、僕はどうだ。

なんの取り柄もない、不登校気味のダメ高校生。

惨めだ。惨めすぎる。


全身が震え、視界がにじむ。

まりのことに、吐き気すらこみ上げてきた。


やがて二人の背中はどんどん小さくなり、いつしかどこかへ消えていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



あれから、何時間さまよっただろう。

気づけば陽は落ち、空のあちこちで星が瞬き始めていた。


僕は、人気のない踏切の前に立っていた。

目の前を、急行電車が猛スピードで何度も通り過ぎていく。


もう、生きていく気力もない。生きている価値もない――


何かに取り憑かれたように、一歩、また一歩と足を進めた。

警報が鳴り、下りた遮断機。

その棒に手をかける。


くぐり抜けて、線路へ踏み込もうとした、その時――


「あなた、死ぬつもり?」


後ろから、誰かにぐいっと肩をつかまれた。

振り向くと、そこには見覚えのある女の子が立っていた。


それは、高校の同級生、清家せいけセリカだった。


「やっぱり有川君だ。ねえ、こんなところで何してるの?」

清家せいけさん……」


セリカは、日本人と白人とのハーフだという。

入学初日の自己紹介で、本人がそう言っていた。


確かに、美しい銀色の長い髪と、ダークグリーンの不思議な瞳を見れば、彼女に外国の血が流れていることは一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。


しかも噂では、父親はどこかの大企業の重役で、家はとんでもない金持ち。

超が付くお嬢様らしい。


何もかも持っているように見えるセリカ。けれど、たった一つだけ欠けているものがあった。


感情だ。

同じクラスで過ごしたこの二か月間、僕は彼女の笑った顔を一度も見たことがない。


いつも無表情で、ひどく冷たい印象。周囲にバリアを張り、誰も寄せ付けない空気をまとっている。


だからきっと、彼女には友達が一人もいないのだろう。


――僕と、同じように。


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