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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶と石榴石
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神殿でお茶会!

昨日、キスの日だったんですね。

知らなかった&ネタに走ってたせいで全くもって盲点でした(*-∀-)ゞ

ので、ちょっと甘めに。

1日遅れでキスの日しました←

「…もう。あのお店の硝子ケース、ヴィルさんが避けて割れちゃったんだから、ちゃんと直してね?あれじゃ営業できないし!それに、僕早くあそこのケーキ食べたい!」


伊織がぷりぷりと怒った勢いのまま、ヴィルフリートの肩をぽかぽかと叩く。ヴィルフリートには全く効いていない様だが、伊織の手は痛くなって来た。


「…解った。ついでに皇族御用達の銘柄(ブランド)でもやろう。…だが、その代わりイオリから褒美を貰わねばな?」


「ふぇ!?何のご褒美!?」


ヴィルフリートが伊織の手を取り、顔を覗き込んでくる。伊織は身体を少し後ろに引いて、近くなる顔に赤面する。ヴィルフリートは伊織の顎掴んで、至近距離でフッと笑った。


「イオリの言う通り、騒ぎを如何にかしたではないか。それに、店の保証も。」


「…騒ぎは大きくなったし、硝子ケースは、ヴィルさんが受け止めるのがめんどくさいって感じで避けたんじゃん…」


顎を掴まれて顔が動かせず、直視できずに視線が泳ぐ。

転移したのはこの間歩いた神殿の内庭の様で、前回と同じように色んな草花が綺麗に整えられている。

軽く現実逃避していた伊織は、ヴィルフリートに親指で唇をなぞられて、ピクリと肩が跳ねた。


「イオリが余に少しの褒美を与えるだけで、丸く収まるのだがな。」


「…うぅ…。ご褒美って、何がいいの…」


至近距離にある顔とじっと見つめる視線に耐えられなくなり、伊織が音を上げる。ヴィルフリートの手が顎から外され、その手がそのまま頬を滑り、側頭部を包むように添えられた。


「イオリからの、接吻(せっぷん)を貰おう。」


「ぼ、僕から!?…いつもみたいにヴィルさんがするのじゃ、ダメなの…?」


依然近くにあるヴィルフリートの顔にドキドキしながら、側頭部に添えられた手に自分の手を重ねて尋ねる。


「それでは褒美にならないだろう。…イオリからの接吻を貰えぬなら、後程イオリ自身を頂こう。」


「いっ…いただ………わかった!わかったから!」


伊織の顔が耳まで真っ赤になって、口がぱくぱくと動く。ヴィルフリートが喉で笑って、添えられた手を離した。


「…目、閉じて?」


ヴィルフリートが目を閉じるのを見て、伊織の鼓動が一層早くなる。

そっと肩に手を置いて体重を掛け、目を閉じて顔を寄せた。唇に柔らかい感触を感じ、顔を離そうとしたところで後頭部を押さえられる。驚いて目を開くと、面白そうに細められた綺麗な紫の瞳と目が合った。

ヴィルフリートは伊織を好きなように翻弄してから解放する。


「…ゔぃるさんの、ばかぁ…」


舌がもつれて回らず、舌足らずな口調で伊織がヴィルフリートを責める。

ヴィルフリートはくたりと力の抜けた伊織を抱え直して、前に行ったアニエッタとリタがいる離れに向かって歩き出す。

離れに着くと、アニーとリタは起き上がってシャルロッテとお茶を飲んでいた。シャルロッテがヴィルフリートと伊織に気付き、シャルロッテの合図で3人とも立ち上がって頭を下げる。ヴィルフリートが伊織を降ろした。


「ようこそいらっしゃいました。お茶は如何ですか?」


「貰おう。…具合はいい様だな。」


「はい。あれからまったく痛みもなく、動きも支障はないです。」


「私の目も完全に治っているようでございます。支障もございません。」


シャルロッテが伊織とヴィルフリートのお茶のセットを用意し、アニエッタとリタも自分たちが飲んでいたお茶を片付ける。伊織がそれを止めて、座る様に促す。


「片付けなくていいよ!一緒にお茶しよう?僕ね、まだ今日はお茶してないんだよね」


「あら?フランがイオリ様は陛下とお茶をしてから戻ってくると言っておりましたけど…そういえば、お茶をして来たにしては、少しお時間が早いですわね。」


アニエッタが不思議そうに首を傾げ、伊織とヴィルフリートに視線を向ける。伊織は先程の事を思い出しながら、口を尖らせた。

話し始める前にシャルロッテに促されて、伊織は椅子に座る。ヴィルフリートはすでにソファの方に腰を掛けており、伊織達の話に介入する気がないのか肘掛けに凭れかかっている。


「聞いてよ!店に変な人がいてね…それは何とかしたんだけど、ヴィルさんったら後ろにケーキの入った硝子ケースがあるの知ってて、変な人が振り上げたステッキを除けたんだよ!」


「あらあら…。それで、どうなりましたの?」


シャルロッテがいい具合に相槌を打ってくれ、伊織の機嫌が浮上する。シャルロッテが出してくれた焼き菓子も美味しく、話が進むにつれてどんどん上機嫌になっていった。

ヴィルフリートとの外出時にあった事を話し終えた頃には伊織は満足気ににこにことしていて、話し始めた頃の拗ねた様子はない。


「イオリ様って…」


「リタ、それは言ってはいけない事ですわよ。」


「ん?僕が何?」


アニエッタとリタが笑っているのに、伊織が首を傾げる。ヴィルフリートがそんな伊織に溜め息を吐いて、飲み終わったカップをテーブルに置いて立ち上がった。

伊織の傍まで来ると、伊織を抱き上げてソファに戻る。


「…機嫌は直ったか?」


「…8割方ヴィルさんの所為なんだけど…」


伊織はヴィルフリートの膝の上に乗せられて、眉を顰める。アニエッタ達の方に視線を向けると、シャルロッテとアニエッタは微笑んでいて、リタはこちらを見ない様にしながら頬を染めている。

伊織が溜め息を吐いて、ヴィルフリートに視線を戻す。ヴィルフリートは伊織の髪を梳いていて、伊織の言葉は無視された様だ。


(…慣れって、怖い…)


膝の上に乗せられても恥ずかしくなくなっている自分に、乾いた笑みが漏れた。そういえば先程の店でも、騎士達が驚いた後に赤くなっていたような気もする。

伊織が眉を寄せて考えていると、部屋にノックの音が響く。シャルロッテがすぐに反応して返事を返すと、機嫌が良さそうなヴォルフガングと逆にぶすっとしたフランツィスカが入ってくる。

フランツィスカが伊織とヴィルフリートの姿を見て慌てた様子で頭を下げた。


「陛下、イオリ様、もういらっしゃってたのですね。」


「うん。どうしたの?フラン…何だか不思議な組み合わせだけど…」


伊織の鋭い突っ込みにフランツィスカの顔が顰められる。アニエッタとシャルロッテは何か知っているようで、ニヤニヤしている。リタは目を泳がせていて、伊織の目でも何かあっただろう事が分かった。


「な、何もござ「陛下、彼女の家に婚約の申し出をさせて頂きたいのですが。仕事を辞めるのが嫌なようで、婚姻後もイオリ様の侍女をしたいと申しております。」


ヴィルフリートの片眉がピクリと跳ね、ヴォルフガングに視線が向けられる。ヴォルフガングは本気の様で、口元に笑みを浮かべたまま、まっすぐヴィルフリートを見返している。


「…好きにするが良い。」


フランツィスカがヴィルフリートを縋るように見ていたが、ヴィルフリートはそれを無視して返事を返す。フランツィスカの表情が曇り、ヴォルフガングが目を細めて笑った。

フランツィスカの視線が今度は伊織に向いて、必死に何かを訴えてくる。


(…あ、あの人、怒らせちゃダメな人だ……ごめん、フラン…無理…。)


ヴォルフガングの含みのある笑みに、伊織は背筋をふるりと震わせて目を背けた。フランツィスカが肩を落とし、シャルロッテとアニエッタがくすくす笑っている。


「さて、そろそろ城に戻るか。…お前達はいつ復帰したいのだ。」


「私はここの片付けもございますので、明後日には復帰したく思います。」


「わたしも同じく明後日がいいです。」


ヴィルフリートが2人の返事に頷き、伊織を抱き上げたまま立ち上がる。伊織は復帰の早さに驚いて、アニエッタとリタに視線を向けた。


「そんなに早く復帰して大丈夫?アニーの代わりにエリーゼが手伝ってくれてるから、もう少し休んで平気だよ?」


「…いいえ、何としてでも明後日には復帰いたします。イオリ様の侍女の座は誰にも渡しませんわ。」


心配そうな伊織に、アニエッタがグッと拳も握って決意するように強く言う。伊織は勢いに押されてて頷いた。

シャルロッテがころころと笑って、フランツィスカをからかっている。ヴィルフリートに背中を軽く叩かれて、視線をヴィルフリートに戻した。


「転移する。目を閉じていると良い。」


慌てて皆に手を振って、ヴィルフリートにしがみ付く。景色が歪み始め、伊織はギュッと目を瞑る。

目を開けた時にはヴィルフリートの居室で、ギルベルトが頭を下げて立っていた。




小話がここでつながりましたね・.*:+:(*´ェ`*):+:*.・

昨日小話を上げたのは、これに関連させたかったからなんですが!


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