魔力補給ってどうなってるんだろ。
話が進まない件←
でも日常的なの好きなので良し。
ヴィルフリートが深い吐息を吐いて、伊織を抱いたまますぐにソファに座る。珍しく背凭れに完全に凭れ掛かり、首を預けて目元を覆った。
「ヴィルさん…?大丈夫?」
伊織が不安そうにヴィルフリートの服を握って、ヴィルフリートの様子を窺う。
「問題ない。魔力を多く使ったのでな、疲れただけだ。…ギルベルト。食べれる物なら何でもいい、食事を。」
「畏まりました。」
ギルベルトが心なしか急いで部屋を出て行く。
伊織がそっとヴィルフリートの頬に触れると、ヴィルフリートは目元を覆った手を離して、伊織の指に自分の指を絡ませた。
「…ここまで魔力を使ったのは、いつ以来だったか…心配せずとも、食して寝れば魔力は戻る。」
ヴィルフリートが心配そうに顔を覗き込む伊織の頭を撫でる。
疲れてはいる様だが、特に顔色が悪いという訳でもなく、平然としている。伊織はほっと胸を撫で下ろして、絡められた指を握り返した。
「…びっくりした。ヴィルさん、皇帝なんだから少しは気をつけなくちゃ。僕に転移の仕方教えてくれればいいのに。前に僕にも転移使えるって言ってたよね?」
「イオリは覚えなくても良い。…いや、覚えて欲しくはない、と言った方が正しいか。」
絡められた手が解かれて、ヴィルフリートが伊織の頬を両手で包む。伊織が不思議そうに見つめ返すと、ヴィルフリートが微苦笑する。
「余は、イオリに移動する術を与えたくない。転移を覚えれば、余の元からいつでも消える事が出来る様になるだろう。」
「…でも、逆に考えない?いつでも戻って来れるようになるって事でもあるでしょ?僕、ヴィルさんと離れたら生きていけないってこの間解ったもん。」
伊織は身を乗り出して同じ様にヴィルフリートの頬を両手で包み、ヴィルフリートの額に自分の額を合わせて微笑んだ。
ヴィルフリートが頬の手で、そのまま伊織の頬を軽く摘まんで引っ張る。
「…だが、それとこれとでは話が別だ。転移は危険を伴う。きちんと法則を学ばねば、教える事は出来ん。」
「…ヴィルさんのケチ。」
伊織がフイッと顔を背けて頬を包む手を除け、腕を組んで横目でヴィルフリートを見る。ヴィルフリートが伊織に手を伸ばすが、それも避けてベッ、と舌を出した。
「…イオリ、大人げないぞ。」
ヴィルフリートに肩を抱き寄せられ、胸元に倒れ込む。伊織が唇を尖らせて拗ねていると、ノックの音がしてヴィルフリートが返答する。ギルベルトがワゴンに大量の料理を載せて戻って来て、早速テーブルに並べ始める。料理には統一性がなく、慌てて持ってきた事が窺えた。
「うわぁ…いつもの5倍?6倍?くらいあるけど、ヴィルさん一人で食べるんだよね?」
「ああ。いつも使う量なら自然治癒で何とかなるが、今日はいつもより多く使ったのでな。」
伊織はヴィルフリートの膝から降りて隣に座り、余りの料理の多さに驚く。ヴィルフリートがテーブルいっぱいの料理に手を伸ばし、伊織の言葉に頷きながらカトラリーを手に取った。
ギルベルトが伊織にはお茶を入れてくれ、それを飲みながら横目でヴィルフリートが食事する姿を眺める。当然の事ながら所作は綺麗で、育ちの良さが嫌でも解る。
(…かっこいいのに育ちも良さそうとか、目立つに決まってるよね~。)
しみじみとそんな事を考えながら、料理長が作ってくれたプリンアラモードに似たおやつを頬張る。何故かこれだけ、伊織にとギルベルトが持ってきていて、料理より明らかに手が込んでいる様に見受けられた。
所作は綺麗なのに、あっという間に料理は半分程になっている。
(どこに入ってるんだろ…僕も人の事言えないかもしれないけど、こっちの世界の身体の構造って…)
「…どうかしたか?」
伊織の視線に気付き、ヴィルフリートが食べる手を止めて問い掛けてくる。
「ううん。どこに入るのかなぁって考えてただけだよ?」
「…魔力補充の為に取られた食物は、体内の魔力核によって瞬時に吸収される。栄養補給の為に取られた食物は胃を通り、栄養だけが吸収されている。よって、魔力補給の為に取られた食事で太る事はない。脂肪が付かないという事は筋肉も付かぬと言う事だ。その為、騎士や冒険者の食事量は多い。」
ヴィルフリートの説明に、伊織は目から鱗と言った様に目を輝かせる。毎日魔力を少しずつ使っていれば太る事はないらしい。こちらの世界でスタイルがいい人が多いのはそういう理由だったのか、と納得した。
「魔力が少ない者は栄養補給する為の食物だけでいい。…やはり、イオリはもう少し食べた方が良いな。」
ヴィルフリートが伊織を見てから目を細めて言い、再び食事を再開した。
「そんな事言っても食べたら食べた分だけ入って行っちゃうから、どこかで抑制しなきゃ。ヴィルさんもまだ食べれるって時に途中で止めるでしょ?」
「イオリと違って、自分で量は調節しているが、な。朝と夜に食す分は一定だが、昼は日によって違う。伊織は出されたら出された分のみしか食べぬだろう。」
「え、いつも食べる量違うの!?」
伊織が驚いてヴィルフリートの方に勢いよく振り向く。ヴィルフリートは頷いてから、止めていた手を動かして残った料理も食べる。もうテーブルの料理は殆ど食べ終えていて、残りももう少ない。
伊織も慌てて料理長特製おやつを食べあげる。
食べ終わったヴィルフリートにギルベルトがお茶を入れて渡す。ヴィルフリートは布巾で口元を拭い、吐息を吐いた。
「…まだ足りぬが…夕食で補えば良いな。」
「まだ足りないの!?」
伊織は今日一日で、随分驚いているかもしれない。何だか色々な事があって気疲れを感じる。伊織はソファの背凭れに体重を預けた。
ヴィルフリートはお茶も飲み干して、ソファに凭れた伊織を引き寄せる。
「疲れたか。」
「うーん。今日一日随分色々あったし…ヴィルさんは魔力もいっぱい使ったし、疲れてない?」
伊織がヴィルフリートを見上げると、ヴィルフリートは伊織の頭を撫でた。ヴィルフリートの顔には微笑が浮かんでいて、伊織がぱちぱちと目を瞬かせる。
「ああ、疲れた。余は少し休む。イオリの膝を貸してくれ。」
「膝…枕?…いいけど、その前に着替えたいな~。フランもう戻ってきてる?」
「はい。一度お部屋に戻られますか?」
後半をギルベルトに向けて言うと、ギルベルトが頷いて問い返してきた。伊織は頷いて立ち上がり、ヴィルフリートに振り返る。
「着替えて来るから、ちょっと待っててね。髪も解かなくっちゃ。」
「ああ。余も着替える。ギルベルト、準備を。」
「畏まりました。」
伊織はいったん部屋に戻り、フランツィスカに着替える旨を伝えて準備してもらう。エリーゼがいそいそと伊織の髪を梳かし直してくれ、ハーフアップに結い直された。
鏡に映る伊織はいつもの様にお姫様然としていて、何となくほっとする。
(…この格好に、ホッとするって…うーん、毒されてるなぁ…)
とりあえずヴィルフリートの部屋に戻る事にする。
扉を開けると、ヴィルフリートはソファに横になっている。伊織が音を立てない様にそろっと近付いて、ヴィルフリートの横に立つ。
「寝ちゃった?…うきゃぁ!」
顔を覗き込むように前傾の姿勢になった時に、腕を引かれて引き倒された。ヴィルフリートの上に覆い被さる様に倒れ、伊織が思わず悲鳴を上げる。
ヴィルフリートの口元が吊り上がっていて、微妙に上体を起こした伊織と目が合う。伊織の顔が真っ赤に染まり、降りようと慌てていると、ヴィルフリートにぎゅっと抱きしめられた。
「暴れるでない…、落ちる。…少し、休む。」
そのままヴィルフリートは目を閉じて、伊織は起こす訳にもいかずに大人しく体重を預ける。
(…重く、ないのかなぁ…)
魔力の説明がやっとここで出来た←
今まで書こう書こうと思ってたけど、結局書くタイミングがなかったんですよねー(*゜ー゜)
補足→ヴィルフリートさんの魔力は転移5回くらい使えます。でも3回使う+その他魔法で7割減っているので、結構消費してる感じです。
転移5回使うともうほとんど空っぽになっちゃう感じですね。
ちなみに魔力が枯渇しても死ぬ事はないですが、ある程度魔力が戻るまで死んだ様に眠ります(*'ェ'*)




