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彩眼の次男は兄夫婦の史実を暴露したい!~リア充爆発しろ、婚姻録~  作者: まるちーるだ
一章 雪の戦場、捕らわれの姫君 ~これってラブコメですか兄上!?~

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四節  朝比奈の次期当主と秋里の当主

秋里の当主へと送った伝令魔法は、すぐに返事を持って帰ってきた。


「『今なら時間が取れる』だそうです。」


帰ってきた魔法を読み解けばそう書かれていた。


「うん、なら行こうか」


兄は騎士団長の証でもある白の外套をはためかせながら騎士団本部の廊下を闊歩する。私はその少し後ろに控えながらついて行った先は、第一騎士団の団長室。兄の顔を見た第一騎士団の副騎士団長は兄に頭を下げながら戸を開けた。


「お時間を頂きまして、ありがとうございます。秋里騎士団長?」


兄はニコリと笑いながらその執務室に不機嫌そうな顔で座っていた男に話しかけた。


忌々しそうに自分のクルクル……失礼、パーマかかった茶色の髪。春の国ではこの色を『紅茶色』と称し、尚且つ高貴な色として認識されている。


ん?とそこで違和感を覚えた。ただ、何が違和感か分からなかった。


疲れたような橙色の目がジッと兄を見つめた。ふわりと浮き出た色は赤。ゆらりと揺れる炎のような赤は彼の顔と同じく怒りが浮き出ていた。


「何の用だ、清澄。停戦で手一杯だ。」


唸るような声が響く。


「ええ、分かっていて来ましたよ、綾人」


今度は澄んだ兄の声が響いた。


「分かっているだろう?俺の『妹』が敵国の捕虜になった。冬の国に捕らえられた女がどうなったか、お前だって知っているだろう!」


赤色に稲妻のような亀裂が入る。しかし兄は笑みを崩さない。


「もしかしたら、君の妹がそうなることはなさそうだよ。ある情報を向こうに流せば」


兄の穏やかな声に少しずつその赤が薄らいでいく。赤に青が混ざり薄暗い紫色が背後を占めていた。その様子に扉近くで待っていた副騎士団長の男も安堵の息を吐いた。


「聞く」


落ち着いた様子の第一騎士団の騎士団長、秋里 綾人は静かにそう言った。執務室から立ち上がり、前に置かれた応接用のソファに腰かけ、兄はその反対に座る。私は兄の後に立って様子を見ることにした。


それにしても美丈夫2人が並ぶと眩しいな。


兄は朝比奈の次期当主。朝比奈家は春の国で五本指に入る名家。通称五家の次期当主だ。地位は家柄を加味させているかもしれないが、第二騎士団の騎士団長であり、剣でも常に頂に名が挙がる。


しかも自らの回復魔法で回復しながら戦い続ければもはやゾンビだ。

一度その戦い方を見たが、私にはできない。怖すぎる。


そんな兄は優雅に足を組みながらソファに腰かけていた。


相対して座るのは秋里の若き現当主。秋里は春の国で名家と呼ばれる五家の中でも筆頭家と呼ばれる家。そこの当主であり、第一騎士団の騎士団長。剣の腕前は騎士団でも並ぶものは僅か。


ただ彼の持つ血統魔法の炎はどんなものも焼き尽くす業火の炎。


春の国の騎士団の最強は誰かと聞かれれば、秋里 綾人と誰もが答えるだろう。


そんな彼は不機嫌そうに足を組んだ。


足長いな……さすが騎士団の二大人気を誇る独身2人。


泣かせた女は星の数よりも多い、なんて言われる2人だ。


共に23歳で、士官学校時代は六年間同じ寮の部屋で過ごした親友同士。


今更思うんですけれども、貴方たちステータス盛り過ぎじゃないですか?


まあ、2人の欠点と言えば、綾人さんは妹にべらぼうに甘いシスコンで、兄上は女だろうが男だろうが同じ対応をする超絶博愛主義と言ったところか。


「で、何だって?」


不貞腐れたようにそう聞いてきたのは綾人さん。背後に出ている赤が本人の怒りか、それとも漏れ出ている魔力か分からなくなるほど怒りが伝わってくる。


「その前に、少々確認したいです」


「勿体ぶるな」


「でも大切です」


「はあ、分かった。悪い、紅茶持ってきてくれ」


綾人さんは近くにいた執務官に頼めば、執務官はホッとした様子で席を立った。怒りはあれど、冷静に努めようとしているのが伝わってくる。


「で?」


「まず、香さんは『姉』と『弟』を探すために戦場に出た、間違いありませんか?」


「は?」


いきなり話が飛んだことで綾人さんは非常に間抜けな顔をした。なんというか、本当に鳩が豆鉄砲を食ったような表情だ。


「大事な事なので応えてください」


兄の真剣な声に綾人さんは一度息を抜いた。


「ああ、間違いない。俺の叔母、香の実母は三人の子を産んだのは間違いない。香は姉と弟を探すために軍人になった。」


「その姉と弟の名は分かっているのですか?」


「香の記憶は曖昧だそうだが『ヒカル』と『ミツル』と言う名だそうだ」


あ、アウト!?決定打来た!確定!


正直叫び出しそうだが、流石に公式に近いこの場でそんな間抜けなことは出来なかった。


「やはり」


「何がだ、勿体ぶらずに言え」


「では、今回の捕虜の冬の国の姫の名を知っておりますか?」


「あ?『一条 光』だろ?」


「彼女には3歳年下の弟がいるようです。名を『満』」


「……は?」


兄が朝比奈個人の情報収集専門の部隊に調べさせた結果で分かったことだ。ただ、先ほど彼女が語った『娼館生まれ』ということは一切調べられなかった。冬の国でも秘匿されていることなのだろう。


ただ、綾人さんの赤色が、一瞬にして消えて、今度は緑色を浮かべた。黄色に近い緑色、若草のようなその色は期待か、嬉しさか。


「待て、ちょっと待て!?それって、」


「ええ。聞き覚えがある話ですよね?」


ニコッと笑う兄の目は一切笑っていなかった。


「先ほど、彼女が『娼館生まれである』ことを教えてくれました」


「マジ、か?」


「ええ、マジです」


「香さんは姉君と弟君の容姿について何か言ってなかったのですか?」


「いや、黒髪と黄色い目しか……あ」


綾人さんは思考が繋がったのか、固まった。幼い子供があの眼を『金』とは称さない。そう思えば納得した。


それと同時に違和感が明確に見えてしまった。


「あ」


思わず漏れ出た私の声に、兄と綾人さんの視線がこちらに向いてきた。


「どうした、昌澄」


綾人さんが私に声を掛けてきて思わず苦笑いした。


「いえ、違和感の正体が分かって思わず声が出てしまいました」


「違和感ですか。なにかおかしなことでもありましたか?」


兄の柔らかい言葉と、綾人さんの視線に苦笑いしたまま口を開いた。


「先ほどの話ですが、『一条殿』は妹君の容姿について、『オレンジのような橙色の目で、『紅茶色』のくせ毛』『ふわふわの柔らかい髪の女の子』と称していました。」


それが何か?というような兄と綾人さんの視線。


「『紅茶色』というのは春の国の秋里家のみ称される呼称ですよね?なのに『一条殿』は迷わずそう言われていた」


私の言葉に2人は目を丸くした。現実に綾人さんや、その義妹君の香さんの色を称するならば『赤茶色』だろう。でも光さんは間違いなく『紅茶色』と称していた。


「……叔母か」


綾人さんは頭の中で繋がったように呟いた。


「清澄」


静まり返った部屋で、綾人さんは兄の名を呼んだ。

澄んだ紫。困惑、でも期待が混じるように若草の緑が混ざっている。


「『一条 光』に会わせてくれ」


綾人さんがその言葉を発した瞬間、私の口から紅が漏れた。


「かはっ、」


急に体中の魔力が乱れた。驚いた顔の兄が私を見ていた。原因はすぐに分かる。魔力が乱れる原因を辿れば、すぐに答えは見えた。


「兄上、結界がっ、貴族牢の結界が、破壊されましたっ」


私の言葉に兄はすぐに走り出した。膝を付きそうになった瞬間、脇を支えられる。視線を上げれば綾人さんが私の脇に手を滑り込ませていた。


「どういうことだ!?一条 光が脱走したのか!?」


「いえ、中側からではなく、外から、それに、『光さん』には、白石の腕輪を、付けて貰って、います」


「な!?」


「ちっ、行くぞ!」


そう言った綾人さんは私を肩に担いだ。


すみません、でもその前に……お願いなので魔力を整えさせてくださいっ!!




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