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彩眼の次男は巻き込まれる~感情が色で視える参謀騎士、今日も修羅場です~  作者: まるちーるだ
二章 冬の宮廷、家出の姫君 ~兄上、これって宮廷loveでしょうか?~ 

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十一節 青の信頼


思いもよらない助っ人……と言っていいんですよね、昆明!?


なんて、内心では冷や汗をかきながらも、心強い助っ人を付けたくれたな、なんて思いました。

ふと視線の合ったリリーさん……いいえ、百合子さんはニコリと笑います。


「……あら、屋根裏にいらっしゃったので、てっきりお客様を狙っているのかと思いましたら、逆でしたか。失礼いたしました。」


スッと頭を下げた美海さんに、百合子さんは華麗なる淑女の礼で挨拶を返しました。

髪が短くなれど、白の軍服ではなく、灰褐色の衣装を纏い、影に生きる者となっても、百合子さんは優雅なままでした。


「同業者とは言え、手荒な真似をいたしました。……ですが、もう少し気配はお消しになった方がよろしいと思いますよ」


ニコリと笑う美海さんに、明らかに百合子さんの笑みが深くなりました。


俗いう……女の冷戦というのは、こう言うことなのでしょうね。


「美海、そこまで。『リリー』さんも我が家の客だよ」


光さんの言葉に、美海さんは何も言わずに頭を下げられました。


「そしてようこそ、『リリー』さん。我が一条は君も歓迎するし、なんなら妹を守ってもらいたいからね」


ふふっと笑う光さんに、何故か陸さんと慶人さんは呆れたように笑います。


「美海には家をまもってもらわないとだから表に出したくないし、澪はこの通りガサツ」


「ガサツってなによ!?」


「澪様、少し黙りましょう」


ぷんぷんと怒る澪さんの口を、そっと塞ぐ美海さん。

なんだか、両極端な二人だな、なんて思いつつ、視線を光さんに戻します。


「それでもって私は『一条家の当主代理』」


光さんはスッと袖を口元に上げて、綺麗に歪んだ口元を隠します。


「私には陸と慶人という護衛を付けられるけれども、妹につけられるのは侍女が限界」


光さんの言葉に、「ああ、そういうことですわね」と納得したような百合子さんが、呆れたようなため息を吐きました。


ただ、百合子さんは私に視線を向けてきました。

『ご自由に』と、その口が動きます。

彼女の上司である昆明からの指示は『昌澄()に従え』ということなのでしょう。


鮮やかな青色が私に向き、決定権が私にあるというのを伝えてきます。


さて、どうするか。

と、悩みます。


本来ならば、香さんを連れ帰ればよいだけの任務です。


しかし、かなり裏がありそうです。


一番気になるのは、光さんが先ほど口にした『魔獣の狂暴化』。

『呪術』の件と言い、引っ掛かるポイントが多すぎます。


チラリと百合子さんに視線を向け口だけ動かします。


『従います』


私の口の動きを読んだ百合子さんは赤い紅を刺した口を綺麗に歪ませました。


「つまりは『香』様の侍女として、私が護衛をすればよろしいのですわね?」


そう言いながら百合子さんが浮かべた色は黄――ではなく金。

その鮮やかな色で、彼女は絶対的な自信を見せつけた。


でもその金色の所為で、家系図の銀色の文字が頭をよぎるのです。


そして光さんも百合子さんへ秋空のような澄んだ青を向ける。

いや、その青は私にも向けられた。

若干の差異がある青が、それぞれに混ざり、真実を表すような鮮やかな青が浮かびがった。


「そういうこと。」


ニヤッと笑う光さんはそのまま百合子さんの目の前まで歩いてきます。

そして光さんが百合子さんの髪に手を触れると、シュルシュルっと、銀髪が、光さんや、他の一条家の方々に似た黒髪へと染まっていきます。


「あら、染色魔法ですか?」


「ええ、その通り。我が国で銀髪なのは五家の人間しかいないので目立つのですよ」


そい言った光さんが今度は私の髪に触れてきました。


「……清澄さんの髪より柔らかいのですね」


ぽつり、と言った光さんの言葉に、思わず叫びそうになってしまいました。

いえ、多分私だけでなく、他の人間たちも息を呑んでおりました。


『兄上の髪触ったのですか!?』と言わなかった私偉いです!

皆さんも、思った言葉を飲みこんで偉いです!


ただ、何故ですかね?


まるで犬を撫でるかのように私の髪をモフモフするのは辞めて頂きたいのですが?


「あの、光さん?」


「うーん……ウチの人間の髪質には遠いな」


光さんが悩むように髪をモフモフ撫で続けます。

あの、私、犬ではないのですが!?


「光。昌澄なら、ウチの方が近いと思うよ?」


澪さんがそう言いながら、ひらひらと狐色の袖をはためかせます。

ウチ?と内心で疑問を浮かべたところで、光さんが「ああ」と呟きました。


「確かに、鷹司なら近いか」


そう言うな否や、光さんは私の髪の色を変えたようです。


……美海さん、ご準備がよろしいですね?

サッと、鏡を持ってきてくださいました。

鏡に、映った姿に、自分でゲンナリしてしまいました。


ええ、母そっくりな私が鏡に映っておりました。


「金髪、ですか?」


私の言葉に光さんが笑いました。


「金髪で、少しくせ毛になるのが鷹司の色だからね。澪も少し癖毛でしょう?」


そう言われて、光さんと澪さんを見比べてみれば、思わず「なるほど、」と呟いておりました。

二人とも長く艶のある黒髪ではありますが、光さんはサラサラのストレート。澪さんは僅かにくせ毛がある黒髪。

よく見ると確かに違います。


「ふふっ、という訳で、信頼していますよ、昌澄さん、『リリー』さん」


そう言いながらニヤッと笑った光さん。

それは、それは、楽しそうで、少しだけ小悪魔のような表情を浮かべます。


「まあ、せっかくだし、昌澄さんも『リリー』さんもウチの黒い軍服着ましょうか?」


ええ、なんでしょうね、我々が光さんに春の国の(白い)軍服を着せたこと、根に持っていますかね?

正直に言いますと、ちょっと……いえ、かなり嫌です。


「じゃあ、昌澄には僕の軍服持ってきますね?」


「『リリー』様には澪様の軍服をお持ちします」


そういいながら去っていた陸さんと美海さん。

ニコリと笑う光さんが、とても楽しそうでした。


どうやら、拒否権はなさそうです。


「長いものには巻かれるべき、ですかね」


「あら、『昌澄様』はその長いものの方では?」


ニコリと笑う百合子さんは、真っ黒い髪に真っ赤な髪の毛。

確かに、一条家の人間と言われても、違和感が無さそうでした。



だた、私はこの後、金髪にさせられたことを心の底から後悔しました……。

私のこの姿に、百合子さんが向ける澄んだ青の意味を知らずに、呑気に笑っていたのですから。






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