第214話 衣・食・住
前回のあらすじ
記憶が無い20人の神人。
リックは神人達を引き取る事を決めた。
「………………という訳で、貴方方には俺達と一緒に行動して貰いたいのだが、どうだろうか?」
俺は神人達に打診する。
20人の神人達はざわめく。
皆、不安な目をしている。
そんなに俺の悪人顔が怖いのか……という冗談はさておき、記憶喪失状態だから不安なんだろう。
「リック君は良い人だから信用して大丈夫よ」
オリーヴ義姉さんが神人達に優しく言う。
これまで行動を共にしてきた彼女への信頼は高いようだ。
動揺は収まり神人達の中から1人の美女が俺の前に進み出る。
「えーと……フランシーヌさん……だったよな?」
恐る恐る名前を言う俺。
先程紹介して貰ったが、20人分の名前を一気に覚えるのは難しい。
元々俺は人の名前と顔を覚えるのが苦手だし。
「名を覚えて頂いて光栄だ」
ニカッと笑うフランシーヌさん。
良かった。間違っていなかった。
それにしても美形の笑顔は眩い。
「しかしながら某如きの名に敬称は不要。呼び捨てで構わぬ」
「なら、そうさせて貰おう。ところで、フランシーヌの意見があれば聞かせて欲しい」
「某達は昔の記憶が失われて右も左も分からない。リック殿達の仲間として迎えて頂けるなら心強い事この上ない。皆の者も異論は無いか?」
フランシーヌの呼び掛けに、神人達は皆首を縦に振る。
オリーヴ義姉さんが言っていた通り、フランシーヌが神人達のリーダー格のようだ。
ゾンビになる前は仲間を統べる立場にいたのかもしれない。
「そう言って貰えると有り難い。よろしく頼む。これから一緒に頑張ろう」
「こちらこそ。一同、最大限の協力を誓う」
俺とフランシーヌは握手を交わす。
これでリック・ベアバレー騎士爵一行は総勢35人の所帯となる。
増えたな。ホギー島へ着いた時は10人に満たなかったのに。
開拓は人手が必要になるから助かる。
だが、良い事ばかりではない。問題もある。
衣食住だ。
生活の基本だから早急な対応が必要に………あれ?
今さらながら、俺はある事実に気が付く。
「服はどうしたんだ?」
神人達は全員服を着ている。オリーヴ義姉さんの話では、神人達と最初に会話を交わした時は、全員が全裸だった筈だ。
また、神人達の衣類も見覚えがない。
俺達がロイレア王国から持ってきた物でもキャットラン村の物でもないという事だ。
まあ、猫人達の衣服は神人にはサイズが小さ過ぎて入らないとは思うが。
「木の皮で作っていたわよ」
ノーマが教えてくれる。
「木の皮ですか!?」
驚くエセル。
「それはもう見事な手際だったよ。陽が沈む前に木の皮を剥ぎ、陽が沈んだ頃から大鍋で皮を煮て石で叩き、月が空高く昇る頃には服が出来ていたんだよ。ボクも教えて貰おうかな」
興奮気味に話すディアナ。彼女はモノ作りであれば何でも興味あるようだ。
「よく作れたな」
俺は神人達に感心する。
木の皮を加工して作る衣類、樹皮布はそのものは珍しい技術ではない。
地球でも紀元前からアフリカや東南アジア等で存在していた。
アイヌでは木の内皮から糸を作り、それで織られたアットゥㇱという服もある。
ただ、1枚の樹皮布を作るのに手間と時間は掛かる。夕暮れから月が高く昇るまでの数時間で手軽に作れるような代物ではない。
神人達には短い時間で加工できる製法があるのだろう。
「体が勝手に動いた」
神人の女性の一人が言う。
記憶は失っても体は覚えていたのだろうか。
「フランシーヌ、新たに服を作る事は出来るか?」
「勿論だ。この服の製法は思い出せた。次はもっと良い仕上がりになるであろう」
俺の質問に答えるフランシーヌは自信たっぷりだ。
「頼もしいかな」
シェリーが感心した様子で呟く。
俺も同感だ。
どうやら神人達は優秀な人材の集まりらしい。
衣・食・住の問題の内、衣は解決したのであった。
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