第215話 肉食
前回のあらすじ
神人20人を迎えたリック達。
生活基盤を整える為、衣・食・住の問題に取り組む。
衣の次は食だが、これは当てがある。
ビッグラットの肉だ。
通常は臭くて食べられないが、これは内臓が傷つき内容物が体中に広がってしまう為。骨が薄い鼻を刺して息の根を止めると内臓は傷つかず肉も臭みが無く食用に出来る。
最初はオリーヴ義姉さんの槍でしか鼻の部分を刺せなかったが、最近はイースルやリーンも槍を使ってビッグラットの鼻を刺す事が出来るようになった。流石は元傭兵という所か。戦い方に柔軟性が有る。
「こんなに沢山あると腕が鳴ります」
ビッグラットを捌けるのは、サラちゃんのお父さんガイさんしかいないが、奥さんのヘレナさんを助手に、連日頑張って貰っている。
その為、食用に出来る肉の量は増え、キャットラン村との物々交換に使ったり、塩漬け肉や干し肉といった保存食にして蓄えたりしている。
神人20人が食べられるだけの量はあるので、飢えに苦しむ事は無い筈だ。
……待てよ。
目の前にいる神人達は肉を食べられるのだろうか?
俺は前世で読んだライトノベルの知識を思い出す。
ラノベで得た知識は、この世界に転生後とても役に立っている。
魔法とか獣人とか予備知識があったからこそ簡単に理解する事が出来た。
そうでなければ未知の世界に狼狽えていただけだっただろう。
神人はエルフに似ている……というかエルフそのものだ。
俺の知っている特徴とほぼ合致している。
日本でも鮭を『サケ』と『シャケ』と違う呼び方をするのと同様、神人とエルフは呼び方の違い程度でしかない。俺はそのように考察している。
だから、ラノベで得たエルフの知識も活かせられるのだが、大きな問題がある。
情報が多過ぎるのだ。
先が尖った長い耳・神秘的な美しさ・森に住み木々を大切にする・高い知性……この辺りは共通していると思う。
しかし、生活習慣・性欲の強弱・胸の豊貧……等々、ラノベによって解釈が異なっている点も多い。
有名な種族だからこそ、起きる問題であろう。
食文化についても、森の動物達を仲間として意識しているから菜食主義な生活を送るエルフもいれば、街の酒場で酒と肉をこよなく愛するエルフもいる。
もしも、肉食が禁止なら俺の当ては破綻してしまう。
「フランシーヌ、神人達は肉を食べる事は出来るか?」
俺は恐る恐る質問する。
「勿論だ。皆、大好物だ」
一斉に頷く神人達。
良かった!!
これで食料の問題は解決。残るは住居だ。
俺達が王国から持ってきたテント三張りは役目を終え倉庫に片づけてある。
当面はそれで使い風雨を凌いで貰うとしても、然るべき家は必要だ。
俺は建築責任者であるディアナを見る。
「皆の家を建てるのはとても難しいよ」
聡明な彼女は何も言わなくても俺が何を求めているのか分かっている。
厳しい答えだが。
「材料が足りないのかな?」
シェリーの言葉にディアナは「それは何とかなりそうだよ」と答える。
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「場所だよ。建てられる土地が無いよ」
俺達の拠点は最初に上陸した海岸沿いにある小高い場所。
ディアナが言う通り、そこは家や小屋でいっぱいになっている。
小高い場所の周囲を見渡すと目の前には砂浜、残りの三方は森に囲まれている。
「砂浜には建てられないか?」
「やめた方が良いよ。波が来るからすぐに壊れちゃうよ」
「そうなると残された手段は……」
「森を切り拓くしかないよ」
俺達は木々が立ち並ぶ森を見る。
今までは森の開拓は出来なかった。
勝手に開拓すると他の族長達から敵視されるから控えた方が良いとブッチー村長から言われていたからだ。
しかし、族長会議で承認して貰った今、開拓は可能になった。
「森は島の大切な財産なのさ。節度ある開拓を頼むのさ」
ブッチー村長からはそのように言われているので無闇矢鱈に開拓しないように気をつける必要はあるが。
「猟師から樵に転向か。いっちょをやってやるか」
イースルはそう言いながら丸太のように太い腕をグルグル回す。
「……シコースキーみたいだな……」
「しこおすき?」
俺の呟きをエセルは聞き逃さなかった。
「何でもない。気にしないでくれ」
この世界で俺以外に日本のプロ野球選手を知っている者はいないだろう。
いたら会ってみたいな。
「イースル殿の樵は似合いますな。しかし、ビッグラットを駆除する側が手薄になるのは考え物ですな」
マーカスが指摘する。
「そうなんだよな。駆除部隊の戦力は落としたくない」
ビッグラットは攻撃的な性格で畑は荒らすし人にも危害を与える害獣だ。その上、繁殖力が強い。
今は個体数が抑えられているので問題は無いが、駆除の手を緩めると再び数が増えてしまい、被害が拡大する恐れがある。
どのように配置をしたものか……
「リック殿」
「フランシーヌ。どうした?」
「森を切り開く役目、某達に任せてもらえぬか」
「神人達が?大丈夫か?」
「上手くは言えぬが、自信はある」
樹皮布を作った時みたいに、何らかの技術を体が覚えているのかもしれない。
彼女達の実力は未知数だが、不安を言っている場合ではない。
今の俺達には神人達を遊ばせる余裕なんて無い。どんな形でも働いて貰う必要がある。
ここは神人達に任せよう。
「承った!期待に添えるよう尽力を約束しよう」
こうして神人達が森を切り開く役を担ったのであった。
読んで頂いて、ありがとうございます!
4月になりました。学校や職場、新しい生活をされる方も多いかと思いますが、お体に気を付けてお過ごしください。
次回もよろしくお願いします。




