番外編79 サラ冒険隊 完結編
「ここにしましょう」
幸い、温泉の畔には小ぢんまりですが木が生えていない広場があります。
私オリーヴは耳が尖った人達をそこに案内します。
「本当に何もおぼえていないのであるか?」
クロンさんの言葉に、耳が尖った人達のリーダー格の女性は「そうだ」と言います。
「某達は、何処に住んでいたのか?何故ここにいるのか?全く分からぬ」
リーダー格の女性の言葉に他の耳が尖った人達も一様に頷きます。
「堂々と言われても」
少々呆れているミリーさん。
「些細な事でも良いから何か覚えていない?」
ユナさんの質問を聞いて耳が尖った人達は「うーん」と一斉に頭を捻ります。
「名前とか思い出せないですか?」
サラちゃんの質問を聞いて耳が尖った人達は同時に「あっ!」と声をあげます。
息が凄く合っているわね。
「某の名はフランシーヌだ!!」
他の人達も口々に自分の名前を言います。
「思い出せて良かったです」
「感謝申し上げる」
フランシーヌさんら耳が尖った人達はサラちゃんに頭を下げます。
しかし、どんなに思い出そうとしても名前以外は分かりませんでした。
所持品から手掛かりを探そうとしても、フランシーヌさん達は身一つで何も持っていません。
衣服でさえも。
つまり全員裸です。
ゾンビだった頃に失ってしまったのでしょうか。
「キャットラン村へ戻って皆と相談しない?」
私はクロンさんに提案します。
記憶を失っているフランシーヌさん達を放ってはおけません。
「うむ。その方が良いな」
クロンさんも同意してくれます。
「世話になる」
「困った時はお互い様よ」
こうして私達はフランシーヌさん達を連れてキャットラン村へ向かいました。
幸いにもゾンビの群れが通った跡は太い獣道になっていて、そこを辿り村への帰り道を見つける事が出来ました。
そして、日が暮れる前に村に着けました。
「おかえりー」
村に着くとティムが元気よく出迎えてくれました。
看病してくれたノーマさんの話によると昼頃には元気になっていたそうです。
「ただいま!」
私はティムを抱きしめました。
めでたし めでたし
…………………………………ではありませんでした。
「娘がご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」
サラちゃんの両親のガイさんとヘレナさんはペコペコと頭を下げて謝っています。
私達の帰りが遅いので、村では遭難したのではないか心配されていたそうです。
実際に遭難しかけましたが。
「そういえば森の奥にある洞窟にある『癒しの苔』を取りに行くと言い出したのサラちゃんだったわよね」
「すっかり忘れていた」
ミリーさんとユナさんがひそひそと話している声が聞こえます。
「お前達、何を謝っているのだ」
クロンさんは言葉通りの意味で言っています。
今回の件、言い出したのはサラちゃんですが、止めずに一緒に行ったのは私達。
遭難しかけたのもサラちゃんの力や己の槍の腕を過信して準備が不十分だった私達。
つまり村の皆さんに心配を掛けさせてしまったのはサラちゃん一人だけの責任ではありません。
私達全員の責任です。
クロンさんはそれを言いたいのでしょう。
私もそうですし、ユナさんとミリーさんも同じ考えです。罰が下されるなら受ける覚悟もあります。
しかし、クロンさんの口振りはあまりにもぶっきらぼうだったので、ガイさんとヘレナさんはクロンさんが激怒し謝罪拒否をしていると勘違いしてしまったみたいです。
「どうかお許し下さい」
跪き額が地面に着くくらい頭を下げています。
「ガイさん、ヘレナさん、お願いです!どうか頭をあげて下さい」
私達は二人の誤解を解くのに苦労しました。
読んで頂いてありがとうございます。
次回から本編に戻る予定です。
また2025年の更新はこれで最後となります。
今年一年間読んで頂いてありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。




