番外編77 サラ冒険隊 その7
前回のあらすじ
森の中でゾンビの群れに遭遇したオリーヴ・サラ・クロン・ユナ・ミリー。
5人は必死に逃げるが、崖から転落してしまう。
ドッボーーーーーーーンッ!!
崖の下は泉でした。
私オリーヴは水の中に沈みます。
手足は………動きます!
水が落下の衝撃を吸収してくれたみたいです。
足を伸ばすと幸運な事に泉の底に着きます。
足に力を込め立ち上がると胸から上が水から出ます。
浅くもないけど深くもないと言う感じでしょうか。
泉は流れも無く穏やかです。
皆は大丈夫?
見渡すと目の前のサラちゃんが沈んでいます。
「ぷはぁっです」
私はサラちゃんを抱き上げます。
「わぁぷぅぷぅぷぅ…………」
「暴れないで」
「しっかりしなさいよ」
ユナさんとミリーさんがクロンさんを抱き抱えながら水面に顔を出しました。
二人は溺れているクロンさんを助けたようです。
小柄なサラちゃんとクロンさんは足が着かないみたいです。
「全員、無事のようね」
皆が頷きます。
取り敢えず一安心です。
「こんな所に泉があるとは知らなかったぞ」
ミリーさんの肩にしがみ付いたクロンさんが言います。
「これ只の水ではない………温かい」
水を手で掬い、ユナさんが言います。
「温泉ね」
自然の力で沸き上がる天然のお風呂。
ロイレア王国では山の奥深くにあるので入れる機会は少ないですが存在します。
子供の頃、お母様と一緒に雪山で訓練していた時によく入りました。
体が凍えている中で入る温泉は最高で、訓練中の楽しみの一つでした。
「気持ちいい」
「癒されるぅ~」
温泉に入ったのは初めてらしく、ユナさんとミリーさんの表情が柔らかくなります。
二人は温泉の魅力にハマったようです。
「今はそんな場合ではないです」
「ゾンビの群れが来る前に逃げるのだ」
サラちゃんとクロンさんに言われて私達はハッとします。
慌てて岸へ向かいます。
その最中でした。
ドッボーーーーーーーンッ!!!
背後から盛大な水飛沫があがります。
「ゾンビが落ちたのであるか?」
「きっとそうね」
誰も見ていませんでしたが、状況的にクロンさんの言葉の通りと判断しても良いでしょう。
「急ぎましょう」
温泉の中で足でも掴まれて引きずり込まれたら一溜りもありません。
私達は岸に上がります。
水飛沫があがった辺り一帯は未だにブクブクと空気の泡が出ています。
溺れたのかしら?
ゾンビは温泉に沈んだままあがってきません。
「ねえ。今、気が付いたけど」
「ミリーさん、どうしたです?」
「肌が綺麗なのよ。傷一つない」
「!?」
そう言われて私達は自分の手や足を見ます。
ゾンビの群れから逃げる時、私達は木の枝や鋭い葉でたくさんの傷を負った筈です。
しかし、そんな傷は跡一つ見当たりません。
「ミリー、背中を見て」
ユナさんに言われてミリーさんは彼女の背中を見ます。
そして、驚きます。
「変態伯爵の野郎にやられた鞭の跡が無い!」
ユナさんが奴隷の頃、主人だったギルバード伯爵から受けた虐待の傷跡が癒えて綺麗な肌になっているそうです。
「このお湯には魔力があるな」
温泉の湯を手で掬い、クロンさんは言います。
「魔力って、魔法の力が込められているという意味かしら?」
私の質問にクロンさんは「概ね当たりである」と言い頷きます。
「おそらく、治癒の魔力を持っているのだろう」
だから傷が癒えたみたいです。
この温泉の力を使えばシェリーさんの火傷の跡も治せるかもしれません。
「あのぉ……」
「サラちゃん、どうしたの?」
「ゾンビが治癒の力を持つ温泉に入ったらどうなるのですか?」
生ける屍との相性は悪そうです。
詳しそうなクロンさんを見ますが「分からぬ」と言って口をへの字に曲げます。
今の内に逃げる。
きっとそれが正解でしょう。
しかし、結末が気になります。
温泉の中では負の力と治癒の力が激しく鬩ぎ合っているのかもしれません。
私達は温泉を眺め続けます。
「えっ!?」
誰かが驚きの声をあげます。
声とほぼ同時と言って良いでしょう。
温泉から光が放たれます。
それはサラちゃんが放つ『生き物を黄金の像にする力』の光よりも遥かに明るく眩しい光でした。
読んで頂いてありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




