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フェイカー  作者: 那上畑 潤
If you can not stand, I……
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交錯する疑念4

「殺すのがベストだとかって平然と言う人間に、加藤さんを危険に晒しているなんて言われたくないな」


 しかし、オレ自身は津田香の意見に心中では同意しているため、どうにか苦い面持ちを作って返す。


 津田香は、例の作り物めいた無邪気そうな笑みを顔に象り、相反する口調で続けた。


「言葉ってのは不思議で、同じことを言っても、受け取り方で全く違ってくる。

 そして、言葉の受け取り方ってのは、聞き手がどう思うのかが大事であるのと同時に、普段どんな行動をしている人が、その言葉をどういう状況で発したのかが重要になってくる―だったかしら、中々の名言だと思うわ。

 特に後半の部分がね」


「そりゃ奇遇だな。俺も後半の部分の比重が大きいかなと思っているんだ」


 その生き方と、死に様に至った動機を探るために『秦啓一』を演じるオレ。


 片や、喪われた『白鷺凜』の在り方を模倣することで、槇原康太と白鷺凜との関係性を繋ぎとめようとした津田香。


 ……オレも津田香も、似た者同士だから近親憎悪を抱いてしまうのかもな。


「ただ、こちらからアクションを取らずとも、松平や白鷺さんを襲っていた奴だけではなく、羽柴や織田の上層部もそろそろ動き出すんじゃないか」


「だから、その対策のためにも情報化交換をしているんでしょう……もう来週よ、学校祭は」


 外部の人間が校内に立ち入っても、何ら不自然ではないイベント。


 そもそも、白鷺凜を攫おうと襲撃した『人形』の集団の件と、彼女と秦啓一を収容した病院内で発生した『仮想生物』の件がある。


 どちらも、酒井玲於奈とは無関係に発生したもので、津田香は白鷺凜の能力についての情報が漏洩したからではないかと考えていたが……仕掛けてくるとしたら、これ以上の好機は無いだろう。


 だからこそ、オレも動きやすいのだがな。


 さて、どうするかと考えつつ腕を組むと、津田香はテーブルの上に置いていたマイクを取り、先ほどの超音波攻撃を突然再開。


 名状し難い音に大気が震え、完全防音と聞いているはずの室内が揺れ動いているかのような錯覚を覚えてしまう現実にバカバカしいと思いつつも、オレは眩暈まで自覚してしまった。


 不意を打たれたものの、咄嗟に両手で耳を塞ぐことに成功したが、尋常ではないその声量と外れた音程、反リズミカル的なリズムがもたらす不快感に耳だけではなく、心理的な圧迫を、


「げっ。まだ続いていたのかい、津田さんの歌」


 ガラス製の扉には黒のフィルムが張られていることに加え、防音もしっかりしているため、マスケラには入室するまで、津田香が超音波攻撃を再開したことに気づけなかったのだろう……彼女は、反射的に一歩、後退していた。


「あい~してぇ~るぅ~♪ みんなお帰りっ、丁度みんな帰ってきたことだし、学校祭での行動について話し合おうかなと思うんだけど、みんなどう?」


 が、先程までのオレとのやり取りを、うすら寒さを覚えるほどのフェイクで塗りつぶした津田香に対し、マスケラは歌が終わった安堵によって、先程まで生じていた、この室内の緊迫した空気には気付けなかったようだ。


 続いて入室してきた槇原康太に至っては顔色がやや青く、俯きがちで、とてもではないが周囲を観察する余力など見受けられない。


 唯一、槇原康太の背を擦りながら入室した加藤由利のみが、オレと津田香の表情を一度見てから、右目を閉じて左目だけでオレ達を見比べ、微かに苦い顔付きになっていた。


 ……やはりコイツに隠し事は向かないのだろうが、現状、加藤由利を利用せずに状況を打破できるとはとても思えない以上、ある程度の情報共有は必須なのが頭の痛い所だ。


 オレは自身の頭を手で適当に掻きつつ、ゆっくりと息をついてから切り出した。


「とりあえずは現状の情報をシェアした上で、今後の対策、直近では文化祭での各派閥の対応を話し合いたいんだけど、どうかな」

今回の更新はここで終わりです。


また書き溜め期間に入りますが、今後ともフェイカーをよろしくお願い致します。

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