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フェイカー  作者: 那上畑 潤
Because, you don’t understand yourself
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ACT使用不能2

 どうして、こうなった?


 今日は8月27日。つまり、登校してまだ初日だ。


 にもかかわらず、病院へ検査しに行くことになるとは思わなかった。理由は、もちろん俺が生体コードの接続を出来ない原因の究明、である。


 東京の情報には疎いし、何より『正化』の世の病院の情報なんて知る訳がない。かと言って、つい先日まで入院していたあの病院は真っ平ごめん。


 だから、酒井さんに紹介された病院に行ったのだが―問題になったのが、今現在の俺が15歳の高校生であること。


 ACTが後遺症により使えないとなると中々に大事になるらしく、医者は、未成年一人に診断を聞かせる訳にはいかない、つまり『親はどうした?』と問うてきたのだ。


 現在の俺には、非常な難問。


 俺はつい先日まで精神病院に行くか行かないかの立場に立たされていた。


 ここで両親を騙る、あの偽の親と再会すれば、あの時の繰り返しになる可能性が高い。


 そうなると、精神病院云々、という話が蒸し返されるかもしれないので、それは何としても避けたい。


 だから、親は遠隔地にいることを話せばどうにかなると思ったのだが、今度は代わりの保護者を呼べ、ときた。


 どうしたものかと悩んでいると―何故か白鷺さんが、俺の目の前にいる、というのが現状だ。


 黒のレザーで出来た、背もたれのない椅子に腰掛けたまま、俺は深く息をついた。


「……どうして俺がここにいるって、わかったんだい?」


「連絡がありました。秦啓一と言う、精神を病んでいる可能性があるかもしれない方が来院されており、保護者がこちらへ来られない状況であるため、代役として私に来ていただきたい、と」


 盗聴とかしているのでは? とは聞けないからこそ遠回しに探ってみたのだが……本当に盗聴していたのなら、これほど淡々と淀みなく回答出来るだろうか?


「でも、どうして君に連絡がいくんだ? 君だって未成年だろう。そもそも、俺が……とある事情で入院していたことを、この病院がどうして知っている?」

 


 錯乱、とは認めたくない。


 実際に、記憶が書き換えられている疑惑があるからこそ、なおのこと認めたくない。



「秦さんは知らないかもしれませんが、10年ほど前に、区内、市内、村内といった同一地域内に限り、患者の病気、通院歴などがデータベース化された情報を、各病院間で共有する法が可決されています。そして、私が呼ばれた理由ですが、秦さんのご両親は貴方がご承知の通り、秦さんとしばらく面会出来ません。しかし、両親以外の血縁者が近隣にはいないこと、書類上ではありますが、私が秦さんの『彼女』であること、私であれば、秦さんはごく普通に会話をするという実績から、未成年ではありますが、私が呼ばれたようです」


 ……そうか、そうだったな。

 ここは『平成』ではなく、『正化』だった。


「ACT関連の話、とお医者さんからは聞いております」


 誤魔化すことは、出来そうにもない。


「ACTが使えない可能性がある」

「正確には、大部分が、だそうです」

「? なんで白鷺さんが知っている?」

「秦さんが興奮される可能性を考慮した結果、見知らぬ人間から報告されるより、私の口から伝えた方が良い、というお医者さんの判断です」

「……白鷺さん、彼女と言うより、保護者の方がしっくりくるな」


 冗談を口にしたはずなのに、冗談になっていない気がする。


 あの偽の両親と白鷺さん、どちらの方が落ち着きがある、と問われたら、100人いたら100人が白鷺さんの方が落ち着きがある、と答えるだろう。


「私はまだ16歳ですが?」


 君が16歳だと言っても誰も信じないと思うよ、とは言わない。


「それで俺、ACTの大部分が使えないと言うことだけれども、正確には、今の俺の状態はどんな感じなの?」


 俺の問いに、白鷺さんは親指を折り、四本の指を立てた。


「ACTを扱う上で重要な要素は、自身と対象の『位置特定』、ACTの情報の『処理速度』に『改変強度』、そして『持続性』の四つになります」


「? ええと、俺と対象の位置を、まず特定するのか?」


「はい。ACTの実行者が、ここにいる、という情報を特定しないと、そもそもACTが発動出来ません。最近のOBであれば、実行者の移動に伴って、自動で実行者の位置情報は特定されますが、対象については自ら入力する必要があります」


「? ? つまり、なんだ? ACTを実行するには、俺がどこにいるのかを打ち込んだ上で、炎を作るとしたら、その炎をどこに作るのかを特定してやる、って感じか?」


「位置特定についてはOBが補助してくれる事を除けば、大雑把に言うとそうです」


「で、処理速度は、パソコンと同じか。処理速度が早ければ大容量のデータを速くダウンロードできるのと同じで、ACTの発動が早くなる、と」


「改変強度は、文字通り、アカシックレコードの情報を変える強度になります。強ければ強いほど、人の寿命や一部の物理法則といった、変えにくい事柄も改変できるようになります。持続性は、スタミナ、と言い換えた方がわかりやすいかもしれません。どれくらい連続してACTを実行出来るか、もしくは長時間ACTを使用できるかを表す数値です」


「で、その4つの中で問題になっているのはどれなんだ? もしかして、全部か?」


「改変に、問題があります。改変の強度はかなり強く、スタミナがほぼ無いと言っても良いほど持久力に問題がありますが、正常の範囲内です。ですがACTを実行して、改変した事象を世界に放出するスイッチ、と言うのが適当かどうかはわかりませんが―それが、一部、破損しています。ACTを実行して、世界に放出するスイッチそのものが破損しているため、生体コードも反応しません」


「つまり、なんだ? 車のエンジンは無事で、アクセルもブレーキもハンドルも健在なのに、車のカギが無いから運転出来ない、と?」


「その解釈で概ね正しいと思います」


 どうしようもないだろ、カギが無けりゃ、そもそも車を運転なんて―いや、待て。


 昔の映画なんかでは、中の配線を、直結なりどうにかすれば、車は鍵無しでも動いたな。


「じゃあ、生体コードを脳と直接繋げれば」


「ACTを用いないで生体コードを脳と直接接続する、となると死亡する可能性が非常に高い外科手術が必要になります……それこそ、過去の人体実験のような、生死を問わない内容の手術になるかと」


 あんなコードを外科手術で脳と繋げるなんて、SFの世界だもんな。

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