第303話 各国を揺るがす事態に対応するため会議に出よう
ブックマーク追加、★評価、感想、誤字脱字報告等誠にありがとうございます!
大変励みになります。
今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!
-某国 山間部 某村-
「今日もいい天気だねっ!」
「そうだな。畑仕事がはかどるな」
マリナの問いかけに父親は鍬を振り下ろしながらのんびりと答えた。
以前、村を襲った竜から村を守るため、マリナを生贄に差し出すことにしたこの村であったが、謎の光が竜を消滅させ、マリナは辛くも難を逃れることが出来た。
しかも、死んだ竜の首だけが落ちてきたため、村は遠いバルバロイ王国の領地にある冒険者ギルドまで竜の首の買取を打診に行ったところ、喜び勇んで関係者が多くこの村に訪れた。
高地の寒い地方だったせいか、竜の生命力のせいか、長期にわたっても首が腐る事は無く、たとえ首だけであっても多くの貴重な素材が取れると冒険者ギルドの担当者たちは大金をこの村に払っていった。
今は横暴だった村の村長も竜の首が落ちてきたときに驚き、腰を痛めて村長を息子に譲り、おとなしく静養していることもあり、村の発展は若い息子に変わった村長を中心に話し合いで進められていった。
そのおかげもあり、高地の寒村であったこの村は多くの畑を開墾できるようになり、村は緩やかにも発展することが出来たのである。
ゴゴゴゴゴ・・・
なんとなく空気の震えるような感触があり、音が聞こえてきたような気がしたマリナは、ふとまわりを見回す。
「どうした、マリナ」
父親が声を掛けるが、マリナは返事をせずにキョロキョロとあたりを見回し、ふと顔を空へと向けた。
「・・・お、お父さん・・・」
信じられないという表情で震える指を空へ向けるマリナ。
「なんだい、どうしたんだい?」
父親はマリナが向けた指先を目で追った。そして同じように驚愕の表情を浮かべて固まる。
「お・・・お城が空を飛んでる・・・」
マリナが震える声で呟く。
マリナが指さした空には、確かに巨大な城が空を飛んでいたのである。
-バルバロイ王国 王都バーロン王城 会議の間-
「・・・皆に集まってもらったのは他でもない。現在巷で噂になっておる空飛ぶ城についての事じゃ」
宰相のルベルクではなく、直接ワーレンハイド国王が話し始めた。
それだけワーレンハイド国王自身も興奮しているという事か。
現在、俺はワーレンハイド国王の呼び出しに応じて王都バーロンの王城へとやってきている。ただ、いつものお偉いさん会議ではなく、もっと大変な会議であることは事前にワイバーン便を使って各国の代表者を集めて欲しいと依頼があったから知っているけどね。
「天空に浮かぶ城・・・いったいあれは何なのだろうか?」
腕を組み、首を傾げるのはドラゴニア王国国王のバーゼルだ。
俺をアニキアニキと呼んで懐いてくる鬱陶しい・・・いやいや、一国の国王だし、奥さんの一人であるロザリーナのお兄さんだしな。あまり邪険には・・・でも鬱陶しい。
「まさか・・・他国の侵略兵器ではあるまいな?」
そう発言したのはグランスィード帝国の女帝ノーワロディ・スアブ・グランスィードその人だ。会うたびに俺ににらみを利かし、母を不幸にしたら祟ってやる!と豪語する女傑である・・・こちらも鬱陶し・・・げふんげふん。コイツも俺の奥さんの一人であるアナスタシアの娘さんだしな・・・。ある程度愛想よくしておかねば・・・鬱陶し(以下略)。
「オブザーバーのような立場からするとあまり好ましい発言じゃないかもしれないけど・・・天空の城、興味あるね~」
そう発言したのはガーデンバール王国の伯爵位、アビィ・フォン・スゲート伯爵。
・・・尤も、その中身は異世界転生者の加藤公也君なわけだけど。
アビィ君の「天空の城」発言、明らかに地球時代のアニメから影響を受けてるよね。
「天空城」ではなく「天空の城」だもんな。
「うむ、そう言った声が各国より上がるだろうと想定してのこの会議です。何しろその対象は空飛ぶ城、まさにガーデンバール王国スゲート伯爵のおっしゃる通り「天空の城」なのですから」
なるほど。宰相ルベルクの言葉が腑に落ちる。
天空の城がどのような目的で現在空を飛んでいるのかわからんが、アレを手に入れたいという、俗物垂れ流しの悪党とかがわんさか出てきても困るというわけだ。
それが国単位ともなればなおさらだな。
天空の城を手に入れられれば、他国への侵略が圧倒的に優位になりそうだしな。
どれほどの武装能力があるのかわからんが、少なくとも空から国を見下ろせるだけで圧倒的優位に立てそうだ。
「ちなみに、本国から届いた書簡によると、私に全権代理で任せると国王様のサインがあったよ。ヒヨコに届けてもらったけど、スライム伯爵の改ざんはないと断言できるね」
アビィ君が胸元から手紙を出してぴらぴら揺らす。わざわざ俺の潔白を証明してくれるとは、友達がいのあるやつだな、加藤君は。
「もし恐るべき兵器の機能を有しているのであれば、その管理はバルバロイ王国に任せたいところであるな」
腕を組みながらドラゴニア王国国王バーゼルが宣言する。
「ウチの取り分の主張はないので?」
最初国王と並んでの着座などとんでもないと言って後ろに立とうとしていた軍務大臣のガレンシアがバーゼルに問いかける。
「中にある財宝とかであれば、そのおこぼれを頂戴するのにやぶさかではないが、あの城そのものを管理しろと言うのは我が国では手に余る。それに・・・」
「それに?」
「我が国は貧困からの打破という目的はあれど、一度はバルバロイ王国へ宣戦布告した身だ。強力な兵器となりえる空飛ぶ城などわが国で管理すれば、騒動の元にもなる」
「ああ、それは確かに・・・」
「そういう理屈だと、私のところでも同じことが言えるわね」
ふう、と溜息をつきながら女帝ノーワロディは天を仰ぐ。ちょっと欲しいと思っていたのだろうか。
「しかし、富の一端は占拠を主張しませんと・・・」
隣に座る宰相の地位に就くジークの言葉に苦笑を浮かべながらノーワロディが返す。
「かの国は戦争で勝っても相手国をすりつぶすような真似どころか、占領も略奪もしない国なのよ? 黙っていても、城が手に入ったらある程度情報の開示と、西方大同盟に加盟する国々にはある程度富の分配を行ってくれると思うわよ?」
にやりとした笑みを浮かべて、中央に座るワーレンハイド国王に視線を送る女帝ノーワロディ。ジークは苦笑するしかない。確かにその実績はあるのだ。王都北のダンジョンがスタンピードを起こした時、報酬の話もなく国を救ってもらっていた。
その後、スライム伯爵からの要求も特にない。女帝ノーワロディの母親であるアナスタシアが嫁ぐことになったのだが、ほぼほぼアナスタシアの方がスライム伯爵に惚れ込んでの輿入れである。これでいいのかとも思わないジークであった。
「はっはっは、かの伯爵の温和さがそのままこの国のイメージになっておるな」
ワーレンハイド国王は頭をかきながら苦笑いを浮かべる。
「しかし、我らが富の独占や情報の秘匿を行うかもしれませんぞ?」
宰相のルベルクは女帝ノーワロディを見ながらも多少おどけるように会議に参加する全員に語り掛けた。
「そんなの、そこの伯爵殿がそれこそ許さないでしょうよ。伯爵様の怒りを買いたければそうすれば?」
「それに富の独占はともかく、本当に情報の秘匿が必要ならば、アニキが必要だって判断したんだろうから、それについては文句はないな」
えーと・・・、なんでノーワロディもバーゼルも俺の方を見ながら話しているのかな?
「はっはっは、わが国だけ富を独占しようとすれば、英雄の断罪が待つ・・・か、確かにそれは怖いのう、しっかりと自重することにしようかの、ルベルク」
「ええ、それがよろしいかと。何せラードスリブ王国からはスライム伯爵に一任すると書簡が届いておりますしな」
なぜか高笑いのワーレンハイド国王に俺を見ながらニッコリほほ笑む宰相ルベルク。解せぬ。そしてラードスリブ王よ。というかフィレオンティーナとシスティーナさんの親父さんよ。自国の決定権を人に一任するんじゃねーっての。重すぎて両肩が凝ってかなわん・・・スライムだから肩コリあるのかわからんけど。
それにしても、あまり居心地のいい空気ではなくなってきたからな、空気を換えるためにも質問するか。
「コホンッ! それで、その天空の城とやらの詳細は分かっているのですか?」
わざとらしく咳をしながら当該対象の詳細な情報をはよっ!と宰相ルベルクに催促する。
「ふふふっ、居心地でも悪くなりましたかな? それでは現在までに分かっていることを説明しましょう・・・」
むうっ、ルベルク殿も意地が悪い。
だが、話が進むのであればあえて波風を立てることもない。
「空飛ぶ城についてなのですが、今のところほとんど何もわかっておりません」
ズドドッ!
思わず俺は椅子から滑り落ちた。
「もったいぶっといて、なんにもわかってないんかい!?」
テーブルに手をつきながらゾンビのようにぬるっと動くとイスに座りなおす。
「百年単位での書物では詳細な内容が全くなかったのですが、一つだけ、それに該当する内容がありました」
「それは、どんな?」
鋭い目つきで宰相ルベルクを見つめる女帝ノーワロディ。お前やっぱ空飛ぶ城が欲しいんじゃねーのか?
「さる書物にあった記載ですが、『大空を優雅に舞う城有り。その名は―――――』
「「「その名は!?」」」
「天空城ウラーノス!」
ババーンと音でもなりそうなほどのドヤ顔で城の名を口にする宰相ルベルク。
「「「そこは天空の城ラ○ュタであれ!!」」」
同時にテーブルをげんこつで叩いて声を上げたのは俺とアビィ卿と・・・お前か、フカシのナツ。天井に忍んでいたはずのお前が各国代表が集まる会議のテーブルに降りてきて、げんこつでテーブル殴るって・・・、うん、仕方ないね。俺たち地球人からすれば空飛ぶ城はすべからく天空の城なのだ・・・決してラ○ュタではない。ラ○ュタであれって言っちゃったけど、ないったらない。大事なことだから二度言っとく。うん。
ついに始まりました、「天空城ウラーノス」編!
今までの中でも最大級のボリューム?での大冒険が待ち受ける予定です!
あのキャラはあのセリフを宣うのか・・・
あの有名セリフは出るのか!?
そして最後に天空の城を手に入れるのは誰だ!!
ぜひお楽しみに!
今後とも「まさスラ」応援よろしくお願いします!
よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。
下の5つの☆を★にしていただくと、西園寺にエネルギーチャージできます(笑)