小択出新都 様リクエスト 後編
グレンさんからデート・・かどうかはわかりませんがお出かけに誘われました。
正直いって今の私は テンション急上昇☆嬉しさMAX☆
・・・・なんて柄にもなく興奮しております。
今は自分の部屋のクローゼットの前で服と格闘しております。
何を着ていけばいいんでしょう?
残念ながら女物の服が一枚もないんです・・・。
前の世界にいたときも私にこんな機会があるなんて思いもしませんでしたから
女物を余り着なかった事と興味が余りなかった事が敗因ですね・・・
・・・・買っておけば良かった。
・・・・・・少し落ち込んでしまいましたが、もう 仕方ないです。
次回がある事に期待して女物の服も後で何着か買っておきましょう。
今ある服で今日は何とか・・・・。
そう思いながら選んだのは白いシャツに黒いズボン。
シンプルながらセンスの良い服です。
これはグレンさんから使用人の服とは別に頂いたものです。
・・・自分の女らしさの無い姿に若干涙します。
そんな優季を傍目から見たら絶世の美青年が鏡の前で少々憂いを帯びた顔をしている、という
大変絵になる光景となっております。
まあ、本人には余り自覚はないのですが。
「き・・気を取り直して、もうお昼ですし、グレンさんの所へ行きましょう」
自分の格好には残念さが残るものの 約束の時間となった為グレンさんの元へと
むかいます。
グレンの元へと向かう優季の足取りはいつもより軽やかで速い。
普段の二倍の速さでグレンの部屋までつくほど速かった。
「グレンさん。準備出来ました。」
グレンの部屋のドアをノックしながら言う。
そうするとドアが開きグレンさんが出てきた。
「お・・おお。じゃあ行くか」
こうしてグレンと優季は街へと出かけた・・のだが
町へついていってグレンが向かったのは顔なじみの武器屋。
色気もへったくれもない場所であった。
「店主、俺の使用人にあう武器を売ってくれ」
そう言いながら店にある武器で優季にあうものはないかと物色するグレン。
一方の優季は デートではないと分かってはいたものの
ちょっと落ち込んでいた。
(・・うう。やっぱグレンさんの使用人には戦闘能力も必要なんですね)
もうこうなった気を取り直して、と優季も自分にあう武器を探しにはいる。
「グレンの旦那、よかったですねえ。こんな男前の兄ちゃんが
使用人になってくれて。以前はすぐ皆旦那の顔に怖がって逃げちまってましたしねぇ」
・・・・・それで使用人が一人もいなかったのか。と納得する優季。
「ああ、俺には勿体ない程だ」
・・グレンさん。・・・期待に応えられるように戦闘技術も磨いてみせます!
「っとそっちの使用人さんもいい武器はみつけたかい?」
店主が武器を真剣にみていた優季へとグレンとの世間話をやめて問い掛ける。
「いえ、自分には何があうのかわからなくて・・」
武器の使い方は一通り父と祖父から教えられたのですが
「自分」にあう武器と言われても・・・・ピンと来ないんです。
「ふむふむ。まあそうだよなあ・・・。旦那が選ぶのはどうですかい?」
「む・・。俺がか・・・店主そこの刀を見せてくれ」
店主さんに話を振られたグレンさんが周りをぐるりとみて目をつけたのは
店の片隅に置いてある刀だった。
刀・・なら私は剣道を祖父にみっちり仕込まれたからつかえるでしょうか・・?
でも真剣はワケが違うかもしれないですし武器はそう軽々しく使うものでもありませんし・・。
「お これは中々の業物ですよ。どうぞみてくだせえ」
店主さんが刀を掴んでグレンさんに渡す。
「確かに良い物だ。・・ユウキこれはどうだ?」
そう聞かれた私はグレンさんの持つ刀へと視線をむける。
・・とても欲しい。
そう思いました。
これを使いこなせるような人になりたい。
そう思わせるような刀。
「・・・これがイイです」
刀の柄を触らせてもらうととてもしっくり手に馴染む。
「そうか。では店主これを」
「へい旦那。 大切に使ってくれよ兄ちゃん」
「はい!ありがとうございます」
店主さんにグレンさんがお金を払い私に刀を渡してくれた。
嬉しい。
この刀でグレンさんの使用人として相応しくなれる
戦闘能力をみにつけていきたいとおもいます。
「よし・・これで用事は終わった」
そう言うグレンさんに私は ああ・・・やはりデートなど私ごときには
百年早いということですね。 なんて少々落ち込みました。
ですが武器屋を出てからのグレンさんの一言に私の気分は急上昇しました。
「ユーキ・・・あのだな。その・・な。
せっかくここまできたんだ・・・・・だからな・・
甘味の一つでも食べて帰らないか?」
甘味好きということを普段は隠されているグレンさんが甘味を、
甘味を私と食べたいと!
「ええ!是非 美味しいお店があります!」
「それは・・楽しみだな・・」
フッ と微かに微笑みながら言われたその言葉だけで私にとっては
何よりの甘味です!
「じゃあ・・案内してくれ」
「ええ、あっちですよ。グレン様!」
こうしてグレンと優季の初デート・・・もどきは甘い雰囲気も余りないまま
終了していくのです。
グレンがこのプランがデートには適していない いや デートとはなかなか呼ぶことが
出来ないものだと知ったのは大分後のことでした。