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悪党も絶望

 偶々だった。

 広大であらゆる場所に繋がる夢の世界が妙に騒がしいから、ちょっとだけ覗き見るつもりだった。

 それだけの話の……筈だった。


(……え? これ、どうするの?)


 揺蕩う霧、オリアと称される怪物がいる。


 九罪級の超越者で魔界の最深層にでも行かない限りは無敵を誇り、霊的な世界を移動できる巨大な霧だ。

 性別はなく享楽的で、精神や夢の世界に迷い込んだ定命を弄んで殺し、物質界への侵攻を企むことだってある。

 それに魔界の魔王たちと長く殺し合いを続けている武闘派で、特定の勢力に参加せずに好き勝手している一匹狼だ。


 つまり、定命の世界に現れてはいけない怪物の中の怪物……なのだが、それどころではない存在を目の辺りにしてしまった。


 炎。

 万物の焼却者。

 神を否定する者。

 いるべきではないナニカ。


 九罪級、オリアをして恐怖しか感じない真の化け物が触手を殺しているではないか。

 尤もオリアが見ているのは視覚的な情報だけで、声は届いていない。


(ほ、本当になんだ? どうすればあれほどの罪を重ねられる? 僕でも判別できないなんて、そんなことがあり得るのか?)


 真っ赤に、真紅に、赤く赤く、どこまでも猛る炎をオリアは全く理解できなかった。

 魔界最深部に行っても、逃げるだけなら多分だが何とかなると思っているオリアをして、炎は測ることも出来ない怪物で、本能が今すぐ逃げろと訴える。


(まさか……まさか神を傷つけた? しかしどうやって? いや、憶測に過ぎない……だがそれにしてもこれは駄目だろ⁉)


 その恐怖を無理矢理抑え込んだオリアは、炎が神の玉体を傷つけたから、理解不能な罪を背負っているのではないかと推測した。

 だがあまりにも桁が違い過ぎて正確なことは分からず、悪態を吐くしかない。


 世界の中にいて、世界の枠組みを破壊しかねない炎と、世界の混沌を望んでいるだけのオリアでは話が異なる。

 勿論オリアだって、神の異物である物質世界を滅茶苦茶にしたいという願望を持っているが、完全な焼却は望んでいないし物理的に不可能だ。


(それに最近見るようになったあの触手共、何考えて突っかかってるんだ⁉)


 最近、霊的な空間で見かけるようになった触手たちが、物質界に介入しようとしているのは間違いない。

 それはオリアも望むところで、繋がりはないし全貌も掴めてないが、場合によっては触手の企みを手助けしてもいいと考えていた。


 勿論、炎がいるなら話は変わる。


(落ち着け。整理しろ。恐らくあの炎は、精神世界でのみ猛っている。そうじゃなければ物質界は燃え尽きている筈だ。だがそれならなぜ聖女たちを庇うように立ち回る? 自分のものにするためか? 普通に接すればそれだけで燃えるとなれば……末端の端末が物質界にあるのか?)


(考えるんだ。物質界に普通の末端を置いても、これだけの格なら絶対に炎が漏れ出す。なら弱体化に弱体化を重ねた、普通の定命に見える特別製だ。それで聖女たちを手籠めにしようとして、触手たちに邪魔された? いや、それだけ弱体化した端末なら、物質界の聖女たちに負ける可能性がある。戦闘力が必要ないなら、夢魔の一部が好む、恋愛的なショーを演じてから絶望に落とすパターン……)


(くそ! 魔界のアホ共に警告したいのに、どういう訳か魔界への通路が酷く不安定だ! まさかもうちょっかいをかけた後じゃないだろうな⁉)


(考えろ考えろ考えろ! 酷く脆い末端だろうが、物質界への繋がりが出来てるなら、末端が壊れたらこの炎が物質界に流出する可能性だってある! なら……端末にばれないように、称号持ちの女どもをくっ付けて満足させ、自発的に帰らせるか⁉)


(定命への警告……駄目だ! あんなサル共に言ったところで、危険だから排除しようとか思う馬鹿が出るに決まってる!)


 オリアの思考が高速で回転する。

 炎の声を聞いていたら、若干違う答えを持ったかもしれないが、今現在のオリアは自分の持つ常識に従った。

 九罪級の怪物だからこそ、まさか無限の罪の炎が単なる善意で行動しているとは思わず、逆に人を甚振るために行動していると考えたのだ。


(物質界に伝手なんて殆どないが、場合によってはなんとかするしかない! 燃えたら最悪の場合、僕だって消し飛ぶぞ!)


 九罪級の怪物、世界を救うために決心する。

 物質界は神の名残が特に強い奇跡の中核で、魔界や精神世界は周辺を漂っている衛星のようなものだ。

 そのため万が一、物質界が焼却された場合はオリアも消し飛ぶ可能性が高く、とてもではないが見過ごすことが出来なかった。


(とりあえず末端を何とか特定して、状況を把握する必要がある! 頼むから計画の八割くらいは終わっていてくれ!)


 オリアは、名も知らない炎の末端がルシールたちの傍にいて、邪な計画がほぼ終わりかけていることを期待した。願望を持った。


 どうも貧乏貴族の三男が端末で、ルシールたちとの接点がほぼなく、気長にやろうとしていると思い込み、オリアの体が霧散する程の絶望を感じる少し前の話だ。

 物質界の破壊を楽しむ悪党が、主人公の生存を本気で願い、ヒロインをくっ付けようとする曇らせ裏話が始まっていた。


 お口直し。やっぱ私の作品は悪党こそ絶望しないとですね。

 ケイが馬鹿やる度にオリアも曇る。というかやめてくれと叫ぶでしょう。

 物質界に現れたら人類絶滅待ったなしレベルの存在が曇る……ふふふ(*'ω'*)本来のフクロウ性癖

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