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12.ひとときのバカンス

 冬哉は、ほとんど毎日、水瀬のガラス工房へ通った。炉のことや、成形の仕方、素材のことなど、知りたいと思うことはなんでも聞いた。

 そしてある時から、水瀬の祖父を師匠と呼び始めた。師匠は冬哉が気に入り、ガラス作りをどんどん教えて行った。水瀬は最初は戸惑っていたのだが、冬哉の真剣さや手先の器用さ、センスの良さなど、祖父が気にいるのもわかる気がした。

 そして何より、力仕事をしてもらえる事に感謝していた。工房だけでなく、家の中の事や、庭の畑の事など。なんでも冬哉は簡単にやってのける。男性が家にいるってこう言う感じなのかな?と水瀬は思った。幼い頃に両親を亡くし、男親ならではの頼り甲斐のある場面を見ずに育った。冬哉に父を重ねていたのかもしれない。

 冬哉が通い詰める理由には、水瀬に会いたいからというのもあった。彼女と一緒にいるだけで、なぜか心が穏やかになっていた。少し前まで覚醒のことで不安が大きかったのに、いつしかその事を考えずにいられるようになっていた。もちろん、ジギタリスの効果なのか、症状が起きない事も理由の一つではあった。

 あまりにもガラスにのめり込み、自分が体調不良で仕事を休んでいる事をすっかり忘れてしまっていた。

 ある日、昴が体調の事など確かめに冬哉の元にきた。そして、水瀬のところに入り浸っていると聞いて驚いていた。

「お前がそんなに積極的だとは思わなかったよ。」

昴は、からかい半分、だが本気も半分に言った。昴は嬉しかった。最初から二人の相性が良さそうだとは感じていた。だが冬哉は、

「ガラス細工は本当に奥深い!時間が経つのを忘れちゃうよ。」

と、キラキラした子どものようにガラスへの愛を語った。昴は呆れて、

「それで、水瀬のことも好きになったんだろ?」

というと、

「え?水瀬はお前のことが好きなんだろ?」

と淡々と言った。だがその顔は水瀬への切なさが込められているように、昴には見えていた。

 昴はそうか、と思った。冬哉の生い立ち、最近の変化。そんな自分が水瀬を愛するわけにはいかないと、ブレーキをかけているのかもしれないと感じた。それは無意識かもしれない。自分では愛だと気づいていないのかもしれない。昴は、

「僕は水瀬のことは、患者としてしか見てないし、妹みたいな存在だよ。」

と答えた。冬哉は、

「…あーあ、水瀬、可哀想にな。」

とためらいもありつつ、昴をからかった。

「冬哉…。」

昴は少し切なかった。冬哉の気持ちがわかる、とは言えない立場だ。冬哉の肩を組みポンポン、とたたいた。冬哉は、昴が自分を理解しようとしてくれる事が嬉しくもあった。

 それからは休みの日に、昴も、畑などの手伝いに水瀬のところにくるようになった。

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