六十話 番犬。調査隊に選ばれる
シクル「や、やあ。今回は私か……。そ、そういえば前回私のこと散々言われてなかったか? え? そうでもない? そ、そうか……。では本編だ(ほんとかなぁ)」
「さあ、よく集まってくれた」
魔王が珍しく魔王ぶって集まった俺たちに声をかける。
今ここに集められたのは、俺、パリス、ウィン、アイーダ、そして……。
『なんでお前もいるんだ? マトイ』
「ん、なんか呼ばれた」
なぜかここにいる自称布団屋のマトイだ。
なぜマトイがここに……。よくわからんが、まあ魔王の話を聞くとしよう。
「今回は、まあウィンが来ているからわかっていると思うが、東のリーフの領地、《大森林》に関することだ。じゃあ、ウィン頼む」
「はい。……人格を切り替えます」
魔王が下がり、ウィンが出てそう呟いてうつむく。
ふっと顔をおもむろに上げたウィンは、目に光を宿らせ、笑顔だった。
「はいっ! 木属性のウィンですっ! 手短に説明しますね~」
……相変わらずの差だな。
これがウィン。二つの顔を持つ、魔界でも稀に見る二属性の持ち主である。
初めて会った時はすごい驚いた記憶があるな……。
「じゃ、まあ簡単に言うとですね。何かが起きたんですよ!」
『何も起きなかったらお前来ないもんな』
「はい、その通りですケルベロスさん! ……い、いつもは部下に任せっきりですからね、あはは」
結局こいつもコミュ障なんだよなぁ。見た目に反して面倒くさがり屋だしな。
可愛い可愛いと周りからは言われているが、蓋を開ければびっくり仰天……なんかただの愚痴になってるな、これ以上は自重しようか。
「で、ですね。何が起きたのかはわかんないんですけどっ! 急に大森林に生息する魔物たちが凶暴化しましてっ! そのおかげで、うちの部下たちじゃ調査もままならず、かといって私一人でも難しく」
「それで、ボクたちの力を借りようってわけかい?」
「はいっ! そうですパリスさん!」
パリスの的確な推測に、ウィンがわざとらしく拍手を送る。
……いっちゃあ悪いが、なかなかウィンは苦手だからな。これはここにいる全員が行くパターンだろうから、少し俺も頑張らなければ、か。
「以上ですっ!」
「ありがとう、ウィン。では、一応行くメンバーだけ発表……というか、もうみんなわかってるだろうから再確認、だな」
魔王が玉座の前に立って見渡しながら言う。
「調査メンバーは、幹部からパリス、ウィンの二人。それと戦力とかなんやらとして、アイーダ、マトイ。で、ケルベロスはリーフとの接触を図ってくれ」
『ま、俺はそうだろうとは思ったよ』
折角凶王の領地に行くのだからな。ついでにリーフと会ってこいというのは察しがついた。
各々が自分の役割を確認している中、マトイが手を上げる。
「あの、俺は行っていいんですか?」
「ああ。お前は何気に信頼しているし、戦力になるのならば問題はない。……これで答えになったか?」
「ええ、なりました」
まあ、元勇者であるマトイなりの質問だろう。複雑な思いはあるだろうが……まあ魔王が選んだんだしな。
緊張が少し解け、みんなが話をし始める。俺もそれにあやかるとしよう。俺はアイーダの元へと行く。
『アイーダはなんで行くんだ?』
「あたし? あたしは新しい薬草が欲しいのよ」
『ああ、なるほどな。お前らしい』
「何よそれ。ま、あたしの目的はそれだけよ」
なるほど、アイーダは薬草マニアだからな。……本当にそれだけが目的ってすごいとは思うが。
「それに、前に一回大森林に行ったでしょ?」
『ああ、そういえば一回だが行ったな』
その時もアイーダの薬草を採る目的だったが、大森林の端に少しでかけた思い出がある。あれだな、二話ぐらいのところでだったな。
「その時のあの毒草。まだ解析できてないのよね」
『そうなのか? てっきりできてるもんかと』
「ううん。できてないわ。だから、新しくサンプルが採れたらって思うのだけど」
薬草マニアにもわからないものがあるんだな。まあ当たり前か。
と、視界の端で俺に向けて手招きをする誰かが見えた。
……はぁ。
『なんだ? 魔王』
「いや、ちょっともふらせてほしいなって」
『いやだっつってんだろ』
「やっぱり?」
愚問だ。絶対にもふらせん。市民の安全を脅かす蜂の巣を駆除していなかった罪は重いだろう。
俺はそういう意味をこめて鼻を鳴らす。
「な、なんかすごいダメージが……」
『知らんな。で、それだけか?』
「違うぞ。ちゃんとあるから背中を向けないでくれ」
なんだ、ちゃんと話があって呼び止めたのか。何もなかったのだったらふっとばしていたところだったぞ。
俺の耳に魔王が顔を近づける。
「マトイのことだがな」
『マトイ?』
「ああ。あいつのことを見ていてくれ。頼んだぞ」
マトイがどうかしたのだろうか? 疑問には思うが……まあ少なくとも一国の王が言うのだ。どんな変態でも信じてみないことに話は進まない。
『わかった』
「よし。じゃ、もう一個」
『なんだ?』
また魔王が俺の耳に顔を近づけ――
「ふぅ~」
『てめえ本当に最低だな!』
俺は尻尾で全力で魔王をしばいた。
こいつは! 本当に何も変わらないな!
シクル「最後までおよみいただきありがとう。どうだったか? そういえば、私の出番はまた結構先らしい」
アイス「なにっ?! 妾たちの出番はまだ先なのか?」
シクル「ああ、残念ながら……」
アイス「なんということだ……。さ、作者を殴り込みに」
シクル「あ、アイス様?! そ、それでは次回もよろしくな! 待ってくれー!」




