六十一話 番犬。部屋割りをする
アイーダ「今回はあたしよ! ようやく出番が回ってきたわ・・・・・・。でもメンバー多いわね・・・・・・。と、とりあえず本編よ!」
スカッとした。
いや、もうな。うん。……察してくれ。
「じゃあ、夫に代わって私カミラから残りの連絡をするわね」
いつの間にか玉座に現れた母さんが、至って当然のような微笑みで話し出す。
……あんたさっきまでここにいなかったよな? それに、あのクソ魔王はまだ全部伝えて無かったのかよ……。いつストライキ起こってもおかしくないぞ。
「今回はかなり危険な調査になると予想されます。それは魔物たちの凶暴化しかり、大森林の気候が異常な状態であることも含め、です」
……異常な状態?
『母さん。それはどういうことだ?』
「簡単に言うと、大森林は無の砂漠のように、植物が魔力を吸っていて、森自体が生きてます。ですが、その効力が異常に強くなっています。ですが、あそこの魔物は体内に魔力を保有していません。あなたたちには完全に不利な状況ですし、魔法が使えないながらに発達した毒や遠距離攻撃に注意してください」
そこまで一息で母さんが言い切って、小さくため息を吐く。
そして俺たちの顔を見渡して告げる。
「健闘を祈っております。命大事にでお願いしますね?」
―― ―― ―― ―― ――
大森林。そこは、文字通りの大きな森林であり、この世界で唯一木々が生えている地帯だ。
俺たちが魔方陣を通り抜けた先は、木造の大きな家の中だった。
『こんな場所に繋がっているのか』
「そうさ。この家の中なら大森林の気候も通じないし、魔物にも襲われないから安全だよ」
そう丁寧にパリスが説明してくれる。
『やけに詳しいじゃないか』
「当たり前じゃ無いか。だって僕の家があるのも大森林の端だよ? それに、この家の製作にも関わってるからね」
なるほど。確かにそりゃ知ってるわけだ。
……というか、家の製作にも関わっているとか、こいつなんでもやるな。
「じゃ、ひとまずそれぞれの部屋割でも確認する?」
「賛成ですっ! お嬢様!」
「その呼び方はやめてってば」
アイーダが本気で嫌な顔でウィンに言う。
こいつ本当にお嬢様と呼ばれるのが嫌いなんだよな。イメージ的にはお嬢様感満載なのに。
「じゃあ何かあったときのために、女子は一階。男子は二階でいいね」
「まるで校外学習の先生ね」
『もうみんな男子とか女子とか呼べない年齢だけどな』
「そういうこと言わないの」
おっと、アイーダに思いっきり睨まれてしまった。存外怖い。怖すぎる。
とか本人に聞かれたら恐ろしいから言わないが……。まあ、ここにいるやつの平均年齢百歳近くだしな。マトイも人間なのにすごい長生きしてるし衰えないし、ウィンに至ってはまだ三桁いっていないはずだ。それ以外は三桁。
「あっ! でもでも、ケルベロス様は一階でもいいかもですよ?」
『ん、いいのか』
「だってもふもふですし!」
もふもふなら良いのか……。どういう基準かはわからないが、別にこいつらと一緒でも、
「……俺は?」
ふとマトイが深刻な表情で尋ねる。それにウィンが一言。
「二階ですねっ!」
「ケル。俺を一人にしないでくれよ……」
『わ、わかったわかった。そんな悲しそうな表情で訴えるな』
本気で悲しい顔をしていたぞ。……目も当てられないほどに。
まあ、布団屋とその素材屋のなじみだ。今回ぐらい一緒にいてやろう。
「ぶ~。もふもふしたかったのに……」
『今すればいい』
「やったね!」
ぼふんと勢いよくウィンが俺に飛び込んでくる。
まあ、本当はここに来る前に一回風属性の方でもふらせてやったんだがな。別にどうでもいいが。
と、それをうらやましがる目線に気づく。
『……まとめて来て貰うと助かる』
「じゃ、遠慮無く」
「あ、あたしも」
「じゃあ俺も……」
『お前はダメだ』
「嘘?!」
『冗談だよ。さっさとしろ』
「よっしゃ!」
結局、みんな俺にまとわりついて来やがった。
……なかなかにすごい絵面である。幹部二人に元勇者。魔王の実の娘が俺を触っているわけで。
『……もし今、魔界を襲おうとしてる人間がこれを見たら泡吹いて倒れるな』
「確かにね。言えてるわ」
まあ、最近は人間の話も聞かないし、どうってことはないが。
さて、ここからどうしたものか。
『これからどうするんだ?』
「そうだねぇ……。ひとまず、今日はいろいろと作戦会議とか、地形把握とか、今回の原因を探るためにいろいろと話さないとだね」
そうパリスが言う。
今回はパリスが一番年長者だけあって、パリスの指示がとても役立つ。今回は今までとは違う、危険伴った調査であることを忘れてはいけないな。
というか、今までがうまく行き過ぎたか。無の砂漠も零雪原も危険じゃないわけじゃないしわけがない。だが、それでもうまくことが運んだのは幸運だっただけか、誰か別の思惑があるのか……。
さすがに考えすぎか。
「じゃあじゃあ、今日はもう各々部屋に戻って談笑でもします~?」
「いきなり談笑って決めつけると、ハードルが高いわよ」
「いいじゃないか。ボク達は女子会でもしよう」
おっと、いつの間にか女性陣の方は話が決まってしまったようだ。
俺は一人会話にまったく参加できていないマトイに話しかける。
『じゃあ、俺たちは部屋に行って』
「雑談でもするか」
女性陣は華があるが、男性陣にそんなものを要求しても無駄なんだぞ。
とりあえず女性陣と別れ部屋へと向かった。
アイーダ「最後まで読んでくれてありがと。どうだったかしら? 女子会については・・・・・・またいつか話そうかしらね。じゃ、次回もよろしくね!」




