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五十七話 番犬。いろいろと久しぶり

リン「こんにちは。本日は私めでございます。覚えてらっしゃらない方はどうぞ二十七話へ。それでは本編です」

 ・・・・・・やることがない。

 俺は小屋の前でいつも通り寝転がって大通りを見ながら思う。

 最近はどうにも忙しかったからな。忙しい時期があると、こんなにも何もない時期が暇に思えてくるのか・・・・・・。

 あと、ファイアの元に行く気力は無い。ついでにマトイの方にいく気力もない。

 何もしたくないが何かしたい。まったくもどかしいものだ・・・・・・。


「おや、ケルベロス様」


 と、思っていたらふと誰かに声を掛けられた。

 俺は顔を上げる。


『ああ、リンか。久しぶりだな』

「ええ、お久しぶりですね」


 そこにいたのは、美しく長い黒髪を風になびかせるマトイのとこのメイドである竜人のリンが、大きな荷物を手に立っていた。


『なんだ? その荷物』

「これはですね、マトイ様の本日のご夕食でございます」


 へえ、夕食ねえ。・・・・・・そんな量いるのかな?

 まあ、巨人定食屋行ったときもすごい食べるからな。あれを思い出せば納得とも言えるか。


『というか、お前が買い出しに出るのか。あれじゃないのか? なんか、メイド長みたいな』

「滅相もございません。私などにそのような立場はまったく似合うことはありませんし、何しろ・・・・・・。いえ、これ以上は私の名誉に関わりますので自重させていただきます」


 そうか。似合わない、ねえ・・・・・・。雰囲気だけ見れば風格はあるが、名誉に関わるってのはよくわからんな。


「ああ、あとこれは余計なお言葉かもしれませんが、最近マトイ様が少し寂しそうでございまして」

『ほう』

「よろしければ、またあの館にいらっしゃってくださいませ」

『ああ、わかった』


 寂しそう、ねえ。

 あいつに限ってそんなことがあるのか・・・・・・? いや、普段のイメージで人を決めつけるのはよくないな。だが、それにしても・・・・・・。


『よく見てるな。心配なのか?』


 前あの館に行ったときは、結構な毒舌だったのが印象に残っているが・・・・・・。

 だが、リンから反応がない。


『リン?』

「・・・・・・まさか、私が・・・・・・?」

『どうした?』

「っ! いえ、なんでもございません。それでは失礼します」

『おう、じゃな』


 と声をかけるが、それに気づかずにリンが早足で去って行く。

 うん? なんかまずいことでも言ったか、それとも何か急ぎの予定があるか・・・・・・。

 うむ。犬では理解し難い。

 やはり人にならぬと人の感情は理解できないと改めて実感する。


―― ―― ―― ―― ――

 ・・・・・・することがない。


 リンが去ってから、今日は珍しくまったくもふもふしに来るやつらがいないのだ。

 ・・・・・・いつもは大盛況なのにな。ちょっと寂しい。マトイもこんな感じなのだろうか・・・・・・。今度もふらせてやるか。

 時刻は夕暮れ時。俺はもう今日は誰も来ないかと立ち上がる。

 そうだ、折角だし久しぶりに上からの景色でも見るとしよう。

 俺は足にスキルの強化をかける。

 そして、足に力を最大限込めて・・・・・・。


『ふんっ!』


 全力で真上へと跳ぶ。否、飛ぶと言った方が少し正しいか?

 俺の体はどんどんと空高く昇っていき、魔王の城も超えて山の頂上ほどの高さまでたどり着いた。

 そしてここで尻尾を巨大化し、それをこしを突き出して回転させる。


 久しぶりの空中浮遊だ。


 やはり空からの眺めは良い。夕日の紅色も合わさってえもいわれぬ美しさがある。

 そして何よりも面白いのが、この魔界の特色でもある凶王の五つの領土がいっぺんに見れるというところだ。

 北には真っ白な零雪原が広がり、東には深緑の大森林が、南には黒い地面と赤い溶岩の見れる永炎、西の無の砂漠は、今日は珍しく砂嵐が吹いている。そしてこの大陸全土を覆う海、絶死海まではさすがに見えないようだ。

 そしてその色とりどりな地形に囲まれた唯一の草原地帯である、俺たちの街はようやく灯りが点いてきた。オレンジ色の街灯がぽつぽつとまばらに輝き出す。


 ・・・・・・少し感動しすぎて、詩みたいになったな。まあ、たまにはこんなのもいいか。

 さあ、あとは寝るだけだ。 

リン「最後までお読みいただきまことにありがとうございます。いかがだったでしょうか? まさか、ケルベロス様にあのようなことを言われるとは思いもせず・・・・・・。そういえば、副題を変更なさったようです。では、よければ次回の方も」

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