五十六話 番犬は愚痴を聞く
アイーダ「今日はあたしよ。最近本当に出番がなくて悲しいわ。・・・・・・そろそろ来ないかしら。じゃ、本編よ」
・・・・・・また帰ってきた。
今回は楽だったな。ゲームするだけだった。だが、これだけというのもどこかもどかしい。
いつも「凶王」といったら「事件」みたいなイメージがあったからな。あれはあのふたつだけだったと言うことか・・・・・・。
ま、報告することもないし。
たまには、昼寝でもするかな。
ま、今はもう夜だから明日のことになるが。
ーー ーー ーー ーー ーー
番犬の朝は早い。
と、いうくだりももう何回目だろうか。章が変わる事にやっている気がするな。
そして、章が変わる時は決まって・・・・・・。
「よう! ケル!」
『やっぱり来やがったか』
そう、マトイから食事のお誘いがくるのだ。丁寧なことだな。まったく。
「やっぱりってなんだ?」
『こっちの話だ』
「で、なんで来たかっていうとーー」
『飯は遠慮しておくぞ』
そう言うと、あからさまにマトイが肩を落とす。
そんなに楽しみか。日数的には三日前に食べに行っただろう?
「じゃ、いいや」
『お? 今日はやけに物分りがいいじゃないか』
「俺だって暇じゃないんだ」
じゃあなんで飯の誘いに来るんだよ・・・・・・。
ちょっと呆れる感情を抑える。
『なんだ、布団か? 最近お前布団屋の面影無いが』
「う、うるさいなぁ。ちゃんとやってるぞ? また今度売りに出すよ」
ま、俺の毛が使われてるわけだから少し複雑なところはあるが、みんなが使うというのなら別にいいのだ。
・・・・・・というか、全然製作工程を見せてもらってないが、いつ見せてくれるのだろう?
「じゃあな」
『ん、おう』
それを尋ねる隙も無く、マトイは去っていってしまう。と思ったら、振り返ってこう尋ねた。
「ケル。お前またなんか強いやつと会ったか?」
『ああ。会った。ファイアとな。なんでわかった?』
「あれだ、俺のスキルだよ、魔力探知。前話さなかったか?」
ああ。そういえば昔にそんな話もしていたな。俺もすっかり忘れていた。
・・・・・・今更この情報が出るということは、作者が見直したな?
「じゃあな!」
『おーう』
まあ、別にそれがなんということでもないか。
俺は去っていくマトイに尻尾を振った。
今日は平和だ。いや、訂正しよう。今日も平和だ。この魔王街は。
秋の陽気が俺を暖かく照らす。
・・・・・・なぜ、秋と春の光はこうも暖かいのか。眠くなってしまうじゃないか。
ま、今日は元々寝るつもりだったしな。
俺は、ゆっくりと眠りに落ちていった。
ーー ーー ーー ーー ーー
・・・・・・ああ。よく寝た。
睡眠という名の快楽から覚めた俺は、ゆっくりと頭を上げる。と、なんだか妙に眩しい。
・・・・・・なんかくっついてんな。
「もふもふー」
「きもちー」
この声と軽さと光・・・・・・。
妖精族か。
『どれだけ気持ちよくても、顔につくのはやめてくれ』
「はーい」
そう返事が聞こえたかと思うと、俺の体にそってずりずりとピクシーが移動する。
・・・・・・自由だな。ほんと。まあ眩しくなくなっただけよしとしよう。
俺は地面にうつ伏せのまま、ピクリともせずに大きく息を吐く。
「番犬さん」
『ん? なんだ』
一体のピクシーが間抜けな声を出しながら、俺に尋ねる。
「番犬って、楽しい?」
・・・・・・なかなか難しい質問だな。
楽しい、か。
『ま、それなりに楽しいぞ』
「えー! いいなー」
「いいなー」
『そんな羨ましがるか?』
過剰に反応するピクシーたちが面白くて、笑い混じりにそう言う。
「羨ましいよ。知ってる? ピクシーの仕事」
「知ってるかー?」
『いいや、知らんな』
あまり他種族の仕事などに触れることは無いからな。まったくわからん。
そこからはピクシーの愚痴の始まりだった。
「ピクシーって体光るでしょ? だからピクシーの仕事って、洞窟探索とか、暗い夜道の案内係なんだよ?」
『いいじゃないか。楽で』
「良くない!」
「良くない良くない!」
思った以上の反発に俺は驚く。
いい仕事じゃないか。人と関われるし、道を照らすだけでいいんだから。
と、思ったが本人達はまったく違う考えのようで。
「だって、案内しながら愚痴を聞かなきゃなんないんだよ?」
「誰が道案内と相談屋のピクシーって言い出したんだろーねー」
「ねー! ほんと!」
なるほど、それは大変だ。
他人からの愚痴を聞くというのは、やはりストレスが溜まる。なぜなら自分はその愚痴のほとんどに共感できないからだ。
『でも俺も愚痴は聞くぞ?』
「そうなの?」
『ああ。例えばーー』
そこで少し間をとりーー
『お前達とかな。まあ、俺は愚痴を聞くのが好きだからどんどんしてくれていいが』
「愚痴が好きなの?!」
「ありえない!」
そうか? 愚痴を聞くのは好きだぞ? それで他人の苦しみや辛さを癒せれる、そんな素晴らしいことはない。
『ま、俺はそれぐらいしかすることが無いからな』
「ふーん。じゃあ・・・・・・」
「思う存分愚痴るね!」
その日の夜は、ピクシーたちの愚痴を聞いてあげた。魔界の社会も大変なんだな、と改めて思う。
で、まあ相槌を打っているうちに二人とも寝てしまったがな。
アイーダ「最後まで読んでくれてありがとう。どうだったかしら? そういえば、いつの間にかファイア編が終わってたわね。・・・・・・次は何があるのかしら・・・・・・」




