五十一話 番犬。ファイアと出会う
今野「時間が無いので前、後書きは割愛させていただきます!すみません!」
意を決して踏み入れた洞窟内。
・・・・・・案外涼しいな。うん。外が暑すぎるだけかもしれないが。
そして、洞窟の中は丸々部屋になっている。
『なかなかお洒落じゃないか』
「ちょっと統一感を持たせてみただけっすけどね」
そう言うが、照れくさそうに頭をかくグレン。まったく。わかりやすいやつである。
部屋の中は、外のような赤々しい色ではなく、清涼感のある水色の家具でしめられていた。
水色のベッドに、タンスやテーブルなどのどこにでもあるものがデザイン的に置かれている。ちょっと描写が難しいな。
光源は洞窟の赤い鉱石を有効に活用していて、薄暗い感じがまた雰囲気があっていい。
そして最後に、カーペットの上で寝転がっている炎の塊・・・・・・。
『ちょっと待て』
「どうしたっすか?」
いや、どうしたっすかじゃない。
『なんだ? あの炎の塊は』
まるで、寝っ転がってくつろいでいるおっさんのようだが・・・・・・。
と、その炎がこっちを向いた。
「おうグレン! 帰ってきたなら声かけろい」
「悪いっすね! ケルベロスを案内してて忘れてたっす!」
・・・・・・炎が喋っている。
なんだこの光景は。一体、何が起きているのだ?
「あ、紹介するっす」
俺の動揺に気づいたのか、グレンが炎を指して紹介をはじめる。
「俺の友達のファイアっす! ファイア。こっちは魔王街のケルベロスっすよ!」
「ほーん。ちょっと話は知ってるが、爽やかな見た目してるじゃんかい! わいはファイアや! よろしくな!」
『お、おう』
伸ばされた手に俺は前足を出して答える。
・・・・・・うん。やはり理解が難しいな。
『・・・・・・ファイアって、あの五大凶王のか?』
「そうっすよ! 友達って言ってたじゃないっすか!」
なるほど。五大凶王と・・・・・・ファイアと友達、ねえ。
俺はファイアの方をちらりと見る。
魔王街の住民と何ら変わりの無い姿・・・・・・。なんか、今まで見てきた凶王のイメージが強すぎたな。こんな凶王もいるのか・・・・・・。
「五大凶王なんてひっさしぶりに呼ばれたわい。なんや、わい人気者か?」
『ああ。お前の存在が未知すぎて、一部のやつらには人気者だぞ』
「下手な童話でも作られてそうやなぁ」
まあ、実際に凶王を題材にした童話やら伝記やらはあるがな。ファイアは・・・・・・。なんか若干悪役っぽく描写されてたな。言わないでおこう。
「せや! 犬!」
犬って呼ばれた。まあ気にしないが。
『なんだ?』
「お前もふもふなんやろ! 触らせろや!」
『まあ、いいが・・・・・・』
別にもふもふさせるのはかまわないのだが。
『お前の火、燃え移らないか?』
「安心せい! これ、特別製の火やから!」
・・・・・・そうか。
なんだか独特のノリだな。隣のグレンはなんか面白そうに笑ってるし。不思議なやつらだ。
『まあ、いいが・・・・・・』
そこで、俺はあることに気がつく。
『俺、今毛を切られたからあんまりもふもふじゃないぞ?』
母さんにばっさり切られたからな。だから、もふもふと言えるような場所があんまりない・・・・・・。
「「まじか・・・・・・」」
『そんなに落ち込むか?』
地面に膝をついて本気で落ち込む二人。どんだけもふりたかったんだ。まず、グレンは切られる前に一回もふらせろと言えばもふれただろうに。
というか、凶王がこんな些細なことで落ち込むとか・・・・・・。
『なんか驚きの連続なんだが』
「驚きのコンボってか? なんコンボ?」
『・・・・・・四コンボぐらいか?』
「そりゃもう目ん玉飛び出っちまうな! ほれ、こんな感じに!」
そう言うと、ファイアが顔とおぼしき場所から火の玉を二つ飛ばす。
・・・・・・うん。なんか不思議なやつだ。俺にはまったくわからん。
「なんや。反応悪いな。グレン見てみ? 爆笑やで?」
いやいや、今のなんかで爆笑するわけ――
「くくくくっ・・・・・・」
まじかよ。爆笑してんだけど。今のってつぼに入るぐらい面白かったのか・・・・・・?
というか、あんまり面白いことに関しては興味ないから、もうまったくわからんし居づらいな・・・・・・。
「まあもてなしはこんなもんでいいな。じゃあ犬」
せめてケルベロスと呼んではくれないものか。
と、言おうと思ったが、空気が一瞬にして変わったのを感じ、口を閉じる。
「お前の要件、聞こか?」
そこには、ただならぬ五大凶王のオーラが漏れ出ていた。
俺の、要件は――




