五十二話 五大凶王《ファイア》
今野「今日も時間が無いので!すみません!」
「ふーん。わいとコミュニケーションをとれと」
説明し終わると、ファイアがつまらなそうにごろごろとカーペットの上を転がる。
まるで子供のようだが、それを突っ込めるような空気ではない。
「ま、簡単にいっちゃあ友達になってこいと言われたわけやな」
『そうなるな』
ファイアが実際に、仮にも人の形をなしていたので、なんなく完遂できるとは思ったが・・・・・・。これは、幾分か難しそうだな。
「じゃ、友達になるか」
・・・・・・。
『うん?』
「うん? ってなんやうん? とは。わいが友達になったる言うとんねん。それでお互いハッピーやろ?」
まあそうだが・・・・・・。いや、さっきああ言った手前、少し驚いてしまったな。
だが、ファイアは自分でハッピーとか言いつつ全然嬉しそうではないのだが・・・・・・。
『じゃあまあ、よろしく』
「うい」
適当にファイアが返事を返す。
・・・・・・それっきり、気まずい沈黙がながれた。
あのいつもはっちゃけているグレンですら、隅っこでなんか報告書みたいなのを書いているだけだし。・・・・・・いや、よく見たら報告書じゃなくて日記だった。しかも自分の日記で思い出し笑いしてやがる。
どうしたもんかな・・・・・・。
「おい、犬」
『なんだ』
もう俺は犬と呼ばれることに慣れたらしい。普通に応えてしまった。
それはいいとして、ファイアが体を揺らめかせながら近寄ってくる。
「好きな遊びはなんだ」
『・・・・・・遊び?』
唐突な質問で、俺は聞き返してしまう。
「好きな遊びを聞いとんねん」
『好きな遊び、か・・・・・・』
正直言って、あまりない。なぜなら人とやるようなゲームを知らないから。パリスから人化の薬も貰ったが、そもそも俺の周りで遊びをするようなやつはいない。
・・・・・・ちびっ子どもは話が別だが。
『特にないな』
「ない?!」
ファイアが大声で驚く。
『そ、そんなに驚くか?』
「驚くわ! ないんか好きな遊び! アイーダとか言う魔王の娘がいろいろ持ってきとんのに!」
そういえば、アイーダの人間界からの土産の中に、不思議なボードがあったが・・・・・・。なるほど、あれは遊ぶためのものだったのか。
「ほれ! チェスとかオセロとか!」
『知らないな』
「~~?! ありえん! そんなんでわいと友達になろうとしてたんか!」
いや、そもそも五大凶王が遊び好きとか知らないし・・・・・・。というか驚きの事実ですらあるのに、そんなもの予測不可能だ。
「グレン! お前が教えい! 話にならん!」
「お、俺っすか?! ファイアが教えればいいじゃないっすか。俺っちだって、そんな詳しくないっすよ?」
「あーもう! なぜみんなしてこんな素晴らしいもんを知らんのだ!」
す、すごい怒っているな・・・・・・。そんなにすごいものなのか?
と、ファイアが俺の前に、白と黒のマスの縦横九マスのボードをバンと勢いよくたたきつけた。
「いいか! これはチェスっていうもんや! 今からたたき込むから覚悟せい! お前の任務なんぞおまけじゃい!」
どこまで熱いんだこの炎は! 遊びに対する熱気も合わさって、我慢できそうにない。
が、そんなことは言える状況ではない。
『わ、わかった』
「ようし! まず、この駒を持て!」
そう差し出されたのは、一番小さな白い先の丸い駒。
「これはポーンだ! 前にしか進めんが、斜め前に相手の駒があればそれをとって進める。・・・・・・早く持てい!」
『持ちたいのはやまやまなんだが・・・・・・』
ここで問題発生。
『俺、持つ手が無くてな・・・・・・』
数秒流れる沈黙。
・・・・・・この沈黙は俺のせいか? いや、だって仕方がないだろう。犬だし・・・・・・。
「人になってこいわれえええええ!」
『わ、わかったわかった!』
俺は怒りで火力の上がるファイアに背を向けて洞窟を出る。
・・・・・・これはなかなか面倒そうだな。




