二七話 元勇者の自宅にて
今野「・・・・・・書くことがないっ! はい。僕です。今野です。なんとなく来ました。本編をどうぞ!」
「さてと、着いたぞ」
そう言われて着いたのは・・・・・・。
「・・・・・・なんでこんな豪邸なんだ?」
立派な豪邸の前だった。
「いや、思ったよりお前の毛で作った布団が売れてさ。結果的にこうなったってわけで・・・・・・」
「ぼったくったわけじゃないよな?」
俺の言葉に、一瞬マトイの動きが止まる。
「・・・・・・なんメリンなら妥当だと思っていらっしゃいますか?」
まあ、俺の毛だしなあ・・・・・・。
「一万メリン」
「ごめんなさい」
即座に頭を地に着けるマトイ。
「・・・・・・まあ、値段は聞かないでおく」
「ありがとうございますっ!」
どんだけ必死なんだよ・・・・・・。毛を渡してる俺まで罪悪感を感じてしまうじゃないか。
・・・・・・待てよ? こいつ、ただであげてる毛を使って儲けてるんじゃないか?
・・・・・・・・・・・・。
「マトイ。値段を見直せよ」
「い、言われなくてもやっておくよ・・・・・・」
なんだか急に申し訳なく感じたのだった。
「お帰りなさいませ、マトイ様」
「おう。ただいま。リン」
邸宅の中に入ると、リンと呼ばれた美しい黒髪の一人の竜人メイドが出迎える。
「なんだ。無理矢理言わせてるのか?」
「ちゃんと給料は払ってるから・・・・・・」
「大丈夫ですお客様。マトイ様とは長い付き合い故、多少の口は許されています」
「だったら大丈夫だな」
「健全がモットーだから大丈夫だって・・・・・・」
そうマトイをからかい、俺は改めて邸宅の中を見渡す。
白を基調とした作りで、白い壁に白い床。装飾まで白系統・・・・・・。
「なんだこの屋敷。真っ白じゃないか」
「魔界は黒ばっかだからな。それに、もともと白が好きなんだ」
「俺は黒だが?」
「俺はお前の毛が好きなんだ。色は・・・・・・もふもふしてればオッケー」
もふもふしてればいいのか。
「リン。今日は誰か来たか?」
「いえ、今日は珍しく平和な一日でした」
リンとマトイがそんな意味深な会話をする。
「なんだ。いつもは誰かが来るのか?」
「ん? ああ、そうなんだよ」
「極度の人間嫌いの方々がいらっしゃるんですよ」
「そうなのか。来たらどうするんだ?」
「拳で語り合います」
そう言ってぐっと握り拳を作るリン。
「こう見えて、こいつは戦闘能力が高いんだ」
「そこらの輩なら千人ほどは余裕ですよ」
今さらっととんでもないこと言った気がするが、気のせいだろうか。
まあ、こんなかわいいメイドがそんなことをしているところは想像したくないな。
「今更ですが、お客様のお名前はなんでしょうか?」
「ん? 俺か? 俺は、そこの城の前で番犬をやっているケルベロスだが・・・・・・」
そう言うと、リンが目を丸くする。
「マトイ様。本当は・・・・・・」
「いや、ケルベロスの言うとおりだ。こいつは正真正銘、あの城の前の番犬だよ」
「なぜ人の姿を?」
リンが俺にそう尋ねる。
「ボクッ娘ロリババアに薬を飲まされてだな・・・・・・」
「そ、そうですか・・・・・・」
納得したようにうなずくリン。
一瞬寒気がしたが、気のせいだと思う。
「じゃあ、そろそろ風呂を浴びたいんだが・・・・・・」
そう言って、玄関を出ようと足を一歩前に。
「お待ちください。お客様」
・・・・・・進めようとしたところでリンから制止がかかる。
「さすがにそのようなお足でこの屋敷を闊歩されると、掃除をする身としては大変ですゆえ、どうぞ、ご主人様に運ばれてください」
「えっ。俺がこいつを運ぶの?」
「俺運ばれるのか?」
動揺する俺とマトイ。理由は違うが。
だがまあ、リンの言うことにも一理ある。
「もし、汚した場合は・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・。
「じゃ、マトイ。頼んだ」
「おい。玄関に寝っ転がるんじゃねえ。・・・・・・はあ。俺が運ぶのかよ・・・・・・」
あとはマトイに任せようと、玄関で寝っ転がる俺。
「・・・・・・自分の城でいいんじゃねえのか?」
「どうやって俺だって証明するんだ。それに、後でもう一回行くし、何よりめんどくさい」
「めんどくさいだけかよ・・・・・・」
ん? なんだ。ただの面倒くさがりに聞こえたな。それ以外にも理由はあるのに。
「では、私はまだ仕事がありますので、ケルベロス様。ごゆっくり」
「おう。漫喫させてもらうよ」
「しないでくれると助かるんだけど」
リンが去り、俺に向けて本気で嫌な顔をするマトイ。
「はぁ、せめて、もふもふしてればな・・・・・・」
「髪だけはさらさらだぞ?」
「髪じゃな・・・・・・」
そう言いつつ俺の髪を触るマトイ。
「・・・・・・無駄にさらさらしててムカつくな」
「リンとどっちがさらさらだ?」
「あいつとは、別にそんな関係じゃねえよ」
「面白くねぇな」
「お前なぁ・・・・・・。急に人間っぽくなりやがって」
・・・・・・まあ、確かに自分でも人間っぽくはなったとは思うが、そんなになのか。まあ、犬の姿じゃ恋愛なんて概念は無かったのに、急に意識するようになったからな。今のリンとか可愛かったし。
「さあ、そろそろ俺を風呂に運んでくれないか?」
「えー・・・・・・」
そろそろこのやりとりの無限ループから抜け出したいところだ。
じゃあ、奥の手でも使うかな・・・・・・。
「運んでくれたらもふもふさせてやるからよ、それならいいだろ?」
「よぅし! 行くか!」
そう言って俺をかつぎあげるマトイ。
まじかよ。奥の手とは言ったけど、ここまで効果があるとは・・・・・・。
・・・・・・ちょっと怖いな。
「よっしゃー! 行くぜー!」
と、なぜかテンションが上がったのか、マトイがスキップをしだす。
「お、おい! やめろ! ゆ、ゆさゆさするな!」
マトイの足の動きに合わせて、俺の体がゆっさゆっさと揺れる。
かなりキツい。よ、酔ってきた・・・・・・。
「ま、待て、お、落ちる落ちる・・・・・・!」
「へ?」
ズルッ。
俺がそう言うも、時すでに遅し、俺の体は真っ白な床に落下し、泥の跡が・・・・・・。
「・・・・・・やっちった」
「・・・・・・俺のせいじゃないぞ」
俺は、被害を拡大しないようにピクリとも体を動かさない。
「・・・・・・と、とりあえず、何か拭くものを・・・・・・」
そう言って、マトイがポケットからハンカチを・・・・・・。
「マトイ様」
取り出して動きを止めた。
「・・・・・・・・・・・・自分で掃除するんで許してもらえます?」
「・・・・・・それなら見逃しましょうかね」
そう言って手近な部屋に入って行く。
「し、心臓が止まるかと思った・・・・・・」
「・・・・・・それには同感だ」
俺たちは協力して泥を掃除し、二人で風呂に入った。
今野「最後までお読みいただきありがとうございます! いかがでしたか? 最近。よもうの方で読み手を始めました。案外、面白い小説というのはいっぱいあるんですね。では、次回もよろしくお願いします!
・・・・・・忘れてました! 今回。お金の単位が出てきましたが、一メリン=一円と考えてもらえばいいかと思います!」




