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転生令嬢は冒険者を志す  作者: 小田 ヒロ
後日談 今度こそ冒険者を志す!
151/173

151 【コミカライズ記念!】 結婚しました ! …………ササラさんが

「けっこん⁉︎」


トランドルギルドの酒場で、私とアルマちゃんはポカンと口を開けた。

正面に座るのはササラ姉さん。ペロっと舌を出している。


ササラさんはジュドール軍を退役し、完全におばあさまの私兵……トランドルが一国と考えればトランドル軍か?……となった。

騎士学校や軍での経験を活かし、系統立てた若手の指導、そしておばあさまのサポート業務をバリバリこなしている。


大神殿はササラさんを聖女認定しているんだけど、エリスさんが「私一人で事足りるでしょ!」と大神官を黙らせた。エリスさんの願いでササラさんは神殿に縛られず生きており、聖女のお仕事はしていない。なのでササラさんは民衆に、『市井の聖女』と呼ばれている。

まあエリスさんのように聖女ルックを着ているわけでないので、ササラさんが聖女ササラだってことは、まずわからない。

そんなササラさんに私とアルマちゃんは呼び出されたわけだけど……


「どこのどいつじゃーい!」

ササラさんにお付き合いしていた方がいたなんて!


私がギレンとお付き合い……婚約していることは、あの忌々しい本のお陰で世界レベルで周知済み。

アルマたんとニックも特に隠してるわけじゃないから、仲間うちは皆知っている。っていうか、ジュドール軍に入隊したアルマちゃんと冒険者となったニックは、限られた時間をやりくりしてココで待ち合わせしているので、二人の姿……じゃなくてマルとシューも入れた四人?の姿はトランドルギルドの名物みたいなもんだ。


ササラ姉さん完全にノーマーク!


「ふふふ……ササラさんに手を出すとか…まず私とセレフィーと手合わせしてもらわないと……」

おう、よかった。アルマちゃんも私とおんなじテンションだわ。しょーもない男にトランドル(いち)気立てのいい優しいお姉ちゃんササラさんは渡さんぞー!


『別にいーじゃないか、年頃なんだから……』

『なんだからーーきゃいきゃい!』

ルーが私の足元で呆れている。アルマちゃんのマルはルーにじゃれつきマネっこしてご機嫌だ。


「何二人とも怖い顔してるの?」

チューっとストローでアイスティーを飲むササラさん。


「……どんな方ですか?」

「ん?とってもカッコいい!えへへ」

「そして?」

「んー、とっても強い!」

「ササラさんよりも?」

「当然!」

「「うそー!」」

「おまけに優しいの。私と一緒に孤児院(ホーム)に行って、小さい子たちと遊んでくれるのよ!お土産もたくさん買って配ってくれるの!」

「え?その上お金持ちってこと?」

「どうだろ?でも堅実に稼いでると思うよ?」


そんな完璧なやついる?訝しげにアルマちゃんに聞く。

「私たちの在学中、騎士学校にササラさんより強いのいたっけ?」

「ササラさんこの間トランドルのシルバーになったんだよ!それより強いのセレフィーだけだよ」

「じゃあササラさんの学校時代の先輩か、軍の同僚?」

「騎士学校の先輩はないんじゃ?女子をいじめて喜んでた部類でしょ?。ジュドール軍の中に強いうえ二枚目……さっぱりわかんないわ。お金持ちってことは貴族?情報本部にそんな有能な人いたのかな?」

アルマちゃんとは同じ軍でも畑違いでわからないようだ。まあまだ入隊して日が浅いしね。


「あの、エリスさんはなんと?」

「ん?おめでとー!初恋実ってよかったねって!」

ササラさんがポッと顔を赤らめた。

「初恋!」

アルマちゃんの声が裏返った!


無敵の聖女エリス様公認ですと⁉︎

「……いないよね」

「うん、三次元じゃないね……」


「っということで、そんな男、存在しないってことになりました!ササラさんの見たのは幻影ですげん……あいたっ!!!」

私とアルマちゃんはササラさんからまともにゲンコツを食らった。

「何で人の恋を幻にしてくれてんのよ!」

「だってそんな男いるわけないもん……(ギレンしか)」

「金欠だったら心当たりあるけど……(ニックとか)」


「あんたたちは……あ、来た来た!こっち!」

婚約者、ギルドに呼んでるの?ええ度胸やなあああ!私とアルマちゃんは般若の顔でドアに振り向いた!




「ん?なんだお前ら、かわいい顔くしゃっとさせて。元に戻んなくなるから止めろ止めろ!んだよ、朝っぱらから呼び出しやがって……ふあ……」」

「は?」

「うそ?」

『ほお』

『ほえ?』

あくびをしながら入ってきたのは……コダック先生だった。





◇◇◇





「こ、コダック先生!見損なったよっ!生徒に手を出すとか信じらんない!」

「先生!先生だけが学生のとき、大人の男性で尊敬できる人だったのに…………」


私は立ち上がり、先生を指差して頰を膨らます!

アルマちゃんは顔を手で覆い肩を落とす。


「おいおい……だから嫌だったんだよ〜」

コダック先生がグタッとイスで脱力した。


「あー二人とも誤解よ誤解。先生、手を出してないから。手を出したの、私!先生、ごめんね」


ササラさんが先生に手を合わせるのを見ながら、私は再び腰掛け、アルマちゃんも指の間から先生をジト見する。


「セレフィー、アルマ、いい?よく聞いて?私はコダック先生のこと、まず騎士学校時代は、強い、セレフィー達の頼りになる担任としか思ってなかった。先生の授業はフィールドワークを数時間しか受けたことないもの。で、そのまま卒業」


まあそうか。手のかかる私たちの担任だったコダック先生は、四年生のササラさんと接点などほぼなしだろう。学生に手を出したんでなければ、まあセーフか?


「で、卒業して、夏……セレフィーが襲われた。軍で聞いて私は慌ててエルザ様の元に駆けつけた。そこで先生と再会した。先生は体中ぼろぼろで……腕を吊り杖を突き大怪我した姿のままエルザ様に跪き、声を震わせて『セレフィーオーネ様を守れず申し訳ありません』と頭を下げ、そのまま倒れた」

「ササラ!言うな!みっともねえ!」


頭をガツンと殴られたかと、思った。

息が……できない……。



「セレフィーの件の対策に追われるエルザ様に頼まれて、そのまま先生の看病をした。痛みがひどいのか顔を歪めて、包帯でグルグル巻きの手を動かして何かを払おうとするから、私はそっとその手を掴んで布団の上に戻した。すると私の手がポッと光って、その光が先生に移って、先生の顔が穏やかになって、スウっと寝た。今思うと、こないだ教わった治癒魔法だったのかもね」


『聖女の……〈慈悲〉だな』


「よくわかんないけど、私がこうすることで先生の痛みが和らぐならと、しばらくそうしてた。でね、こんなになるまで無茶してバカだなあって思ったの。でもわかりやすくて好きだなあ、ここまで思われてセレフィーが羨ましいなあって。まあセレフィーのこと、私も大好きだから、体を張った気持ちはわかるなあ、とか寝顔を見ながらとりとめもなく考えてた。不器用だからしかめっ面で、近寄りがたい雰囲気だけど、誰よりも熱いハートで、大事な人を守る勇気を持ってる。先生は私の目標になった」


「勘弁してくれ……」

先生が机に顔を埋めた。


「あ、アルマも辛かったのに、状況教えられずごめんね。エルザ様に口止めされてた。あの当時エリスにも言ってない」

「いいえっいいえっ!」

アルマちゃんが真剣な顔で首を振る。


「エリスが聖女になって、セレフィーが消えて以降国に嫌な空気が立ち込めて、私は世界が今後どうなっていくのかわからなくなって恐ろしかった。でも私も何かしたい。ない頭で考えた挙句、権力者で最も尊敬するエルザ様の手足となることにした。実際エルザ様の周りはセレフィーがいないと男性ばかりで、女性の側近が必要に思えた。エルザ様は笑って側付きにしてくれて、なんとトランドルに……家をくれたの!常に駆けつけてもらわないと困るからって、領主館から歩いてすぐのとこに!孤児の私に初めての家よ!追い出されない、自由な、私だけの家!トランドルが私の帰る場所になった。私に故郷が出来た。そんな恩人のエルザ様を、結局守れなかったわけだけど……」


ササラさんがしゅん……と落ち込む。私は首を振る!


帰れる場所、自分の居場所がないことの苦しみ、前世で痛いほど知っている。

おばあさまはさりげなく、それをササラさんに作ったのだ。前世、ギレンが私に……過去形じゃないか。いつもギレンが私の居場所を用意してくれるのと同じ。



私がジュドール、トランドルにいなかった時のササラさんの話は、当事者の家族であるお父様やお兄様の語ったものとまた違って、俯瞰に近く……それゆえに胸が痛い。

私の失踪はたくさんの大事な人の生活に影を落としたんだ。








本日、コミカライズスタートです!

コミックウォーカー、ニコニコ静画、是非覗いてください!

(詳しくは活動報告にて)


明日更新予定です。

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