止めても無駄だった
いつも大変、琉生くんです!
俺は砂霧琉生。とにかく、まとめ役を押し付けられがちなタイプだ。
――朝の校門前。
空気が静かすぎて逆に嫌な予感がする朝ってある。今日がそれだ。
「きりせーん!」
男子Sが全力で走ってくるのが見えた瞬間、俺はもう諦めてた。
朝から爆弾投下か。
先生の顔も同じだった。あの「またか」っていう無言。
「なんだ」
「サンダルで来ちゃいました!!」
……開始数分でこれか。
先生のツッコミが即座に飛ぶ。
「履き慣れた靴で来てとは言ったけど……サンダルはないだろ!?」
「えぇ!?うそー!?履き慣れてるのにぃ!?」
いやクロックスが履き慣れてるってどういうことだ?こいつ
「先生の靴貸すから、それ履いとけ」
「いいんですか!?わぁ、ぴったりだ!」
解決したのかこれ。
っていうか、先生。なんで予備の靴を持っているのでしょうか?
それはさておき、その横で二年B組が整列している。
「よし、絶対楽しいやつじゃんこれ!」
遥菜はいつも通りだ。もう楽しむ前提で生きてる。
「歩くってどのくらい歩くんだろ……」
唯月は正常だ。正常すぎて逆に不安になる時もある。
「とりあえず、歩けばつくでしょ〜」
奏音。
来た。危険なやつ。
「その理屈は危ない」
即否定する。俺の仕事。
「奏音の言うとおり、歩けば、つくよねー」
音波。
増えるな、危険思想を。
その理屈は危ない
もう一回言う。大事だからな。あれ、今言えたのか?声が出なかったような……
先生が遠くを見てる。多分もう悟ってる。
このクラス、とくにこの班、山に入れていいのか?
そして出発。
最初はまだマシだった。
アスファルトから田んぼ道に変わるだけで、みんなちょっとテンションが上がる程度。
「広い!」
遥菜が走りかける。
「走るなよ」
即止める。反射だ。
「えー、でも楽しいじゃん!」
止まらないタイプだ。知ってる。
その時だった。
視界の端で、奏音が何かを拾った。
田んぼの縁。でかい猫じゃらし。
嫌な予感がするサイズだ。
「なんかこれ、振りたいね」
音波も同じのを持っている。
終わった。
「ちょっと待て」
言う前に、もう遅かった。
ぶん。
ぶん、ぶん。
走り出した。
「「わぁー!なにこれ!面白い!!」」
風景に異物が混ざったみたいになる瞬間ってあるんだな|。
俺は本気で思った。
これ、授業じゃないな。
「これ、授業じゃないよね…?」
唯月が代弁してくれた。
だよな。
だが誰も止まらない。
山の中間地点の休憩所。
あれ、双子がいない
俺と唯月と遥菜は正規ルート。
……で、遅れて来たのがいる。
「やっほー」
「着いたよー」
奏音と音波。
草、葉っぱ、なんか全身に付いてる。
「え、どこ通ってきたの?」
遥菜が珍しく困惑してる。
「こっち」
後ろを指す奏音。
「道ないぞ」
俺は即答する。
「道ってさ、歩いたあとにできるの。だから、歩ける場所は全部私たちの『らいふろーど』ってこと!」
理屈じゃない。勢いだ。
唯月が一歩下がるのも分かる。
「え、『らいふろーど』?いきなりどうしたの……?」
先生も来てる。
……固まってる。
あ、こりゃあ処理落ちしてるな
また山の中。
地図確認タイムだ。
俺は一応見る。見るだけでも意味はある。
その横で奏音が言う。
「こっち行った方が早くない?急斜面だけどね。」
嫌な情報が付いてる提案だ。
「きっとかまぼこもゴールなんだよ。」
音波。
お前は何を言ってるんだ。
「……かまぼこはどこから来た。」
思わず出た。
「あと、地図を見ろ」
そう思った瞬間、もう奏音はいない。
「左行こうか!」
なんで右に行ってるんだ?
「今左って言っただろ」
「うん、右」
会話が成立してない。
いや、成立してるのか?
「奏音、右ってどっち?!」
音波の声も混ざる。
もう無理だ。
「迷子だ!迷子!」
遥菜は楽しそうだ。
いや楽しむな。
「いや、最高に面白いじゃんこれ」
……終わった。
俺の中で何かが崩れた。多分常識が崩れたのだろう。
その後、先生に遭遇した。
中2のはずの双子が先生の眼の前を猫じゃらしを振り回しながら通り過ぎる。
「すみません、気にしないでください」
一応言う。これしかない。
「ア、ハイ」
先生の返事がそれで終わるの、初めて見た気がする。
山を抜ける。
ゴールが見える。
その瞬間。
「ゴールだーー!!」
遥菜が走る。
やっとゴールだ。
「「一旦ここで休憩しよう!!」」
奏音と音波が同時に言う。
ゴールの学校を休憩所と勘違いしているようだ。
俺は普通に歩く。
唯月は息を吐く。
「……終わった」
その言葉、すごく分かる。
何がとは言わないけど。
先生が最後に言った。
「……全員、無事でよかった…ということにしておく。」
それしかない。
本当にそれしかない。
「せんせー!靴返すの忘れてたー!!」
……まだ終わってなかった。
俺は思った。
このクラス、明日も無事でいてくれ。
たぶん無理だろうな。
これからは、週1くらいのペースで投稿します!
…たぶんですけど。
もしかしたら投稿できない週もあるかもです、ごめんなさい




