私達の『らいふろーど』
はじめまして!
夜乃氷空って言います!
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小説を書くのはまだまだ勉強中ですが、一生懸命書いています。
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朝の校門前は、妙に落ち着いていた。
遠足とも違う、体育祭とも違う、ただ「歩く」という行事。
そのはずなのに、桐谷先生はすでに嫌な予感を抱いていた。
(こういう日に限って、何か起こるんだよな……)
その予感は、開始三分で現実になる。
「きりせーん!」
男子Sが全力で走ってきた。
桐谷先生は心の中でため息をつく。
(ほらきた)
「なんだ」
「サンダルで来ちゃいました!!」
一瞬、風が止まった気がした。
「履き慣れた靴で来てとは言ったけど……サンダルはないだろ!?」
「えぇ!?うそー!?履き慣れてるのにぃ!?」
悪気がないのが一番困るタイプである。
桐谷先生はこめかみを押さえたあと、静かに言った。
「先生の靴貸すから、それ履いとけ」
「いいんですか!?わぁ、ぴったりだ!」
ウォークラリーでクロックスを履いてくる人、いるんだ……。
そんな騒動の横で、二年B組は整列していた。
「よし、絶対楽しいやつじゃんこれ!」
遥菜はもうテンションが上がっている。
「歩くってどのくらい歩くんだろ……」
唯月はまだ不安の途中にいる。
「とりあえず、歩けばつくでしょ〜」
奏音は空を見ている。
「その理屈は危ない」
琉生は即答した。
「奏音の言うとおり、歩けば、つくよねー」
音波は、思っているのかいないのか分からない声で返した。
桐谷先生は思った。
(このクラスで山は大丈夫なんだろうか)
答えは出ないまま、出発の合図が鳴った。
最初は普通だった。
アスファルトから田んぼ道に変わるだけで、少しテンションが上がる程度。
「広い!」
遥菜は、もう走りかけていた。
「走るなよ」
琉生の声は即座に飛ぶ。
「えー、でも楽しいじゃん!」
遥菜は止まらない。
その横で、奏音はふらっと田んぼの縁にしゃがんだ。
「なんかこれ、振りたいね」
彼女が拾ったのは、異様に大きい猫じゃらしだった。
というより、もはや草の暴力である。
「え、なにそれ」
音波も同じものを拾う。
「これさ、すごいよ」
「すごいね」
意味はないが成立している会話だった。
そして次の瞬間。
ぶん。
ぶん、ぶん。
二人は走り出した。
猫じゃらしを振り回しながら。
「「わぁー!なにこれ!面白い!!」」
「ちょっと待て」
琉生の声は届かない。
田んぼの風景に、明らかに不自然な運動エネルギーが混ざっている。
唯月は小さくつぶやいた。
「これ、授業じゃないよね…?」
それを見ていた中3の先輩たち。
「え…何あれ…?」
山の中間地点にあるお昼休憩所。
そこには、すでに正規ルート組が到着していた。
琉生と遥菜、唯月。
「遅いな……あいつら」
琉生が地図を見ている。
その瞬間だった。
草むらの奥が揺れた。
「やっほー」
「着いたよー」
そこから出てきたのは、所々に葉っぱのついた奏音と音波だった。
双子は明らかに、ルート外の方向から出てきている。
沈黙。
遥菜が最初に声を出した。
「え、どこ通ってきたの?」
「こっち」
奏音は後ろを指さした。
「道ないぞ」
琉生が即答する。
「道ってさ、歩いたあとにできるの。だから、歩ける場所は全部私たちの『らいふ
ろーど』ってこと!」
奏音は急に真面目な顔で言った。
唯月はその場で一歩下がった。
「え、『らいふろーど』?いきなりどうしたの……?」
見回りの先生も、少し遅れてそこに到着していた。
その目で全てを見て、固まる。
(……山から、出てきた?)
しかも正規ルート側ではない方向から。
桐谷先生はゆっくり視線を動かした。
地図。山。双子。猫じゃらし。
情報が多すぎて処理が止まっている顔だった。
山道は本来、静かなものだった。
だがこの班にとっては違う。
登り始めてすぐ、音波がまた猫じゃらしを振り回す
「これ、ほんとにかわいい」
なぜまだ手の中に存在しているのかは誰も知らない。
「捨てろ」
「やだ」
即拒否。
その横で奏音は山の斜面を見ていた。
「こっち行った方が早くない?急斜面だけどね。」
音波も真面目な顔で姉のあとに続く。
「きっとかまぼこもゴールなんだよ。」
(……)
唯月ちゃん、ズリズリと後退する。
「……かまぼこはどこから来た。」
「あと、地図を見ろ」
しかしその瞬間、奏音はすでに違う方向に歩いていた。
「左行こうか!」
体は右方向へ進んでいた。
「今左って言っただろ」
「うん、右」
「奏音、右ってどっち?!」
混乱が増えていく。
「迷子だ!迷子!」
遥菜は笑っている。
「いや、最高に面白いじゃんこれ」
唯月は黙っている。
(この班、大丈夫かな?)
その沈黙が一番リアルだった。
また、見回りの先生(桐谷)がいた。
今度は完全に言葉を失っている。
その前を、猫じゃらしを振り回す中2女子二人が通過する。
ぶん、ぶん。
風だけが忙しい。
桐谷先生は思った。
(この子達、本当に中2?)
遅れて琉生が通る。
「すみません、気にしないでください」
「ア、ハイ」
桐谷先生は聞き返さなかった。
聞いたら負けだと思った。だって、そういう爆弾を二人も抱えている班なのだから。
山を抜け、道に戻る。
ゴールである学校が見えた瞬間、遥菜が走る。
「ゴールだーー!!」
奏音と音波も続く。
「「一旦ここで休憩しよう!!」」
猫じゃらしはまだある。
なぜかまだ持っていた。
琉生は静かに歩いた。
唯月は小さく息を吐いた。
「……終わった」
色んな意味で何かが終わった。
桐谷先生は最後に一言だけ言った。
「……全員、無事でよかった…ということにしておく。」
その声には安心よりも、理解不能への疲労が混じっていた。
もう、やだ。
「きりせーんー!靴返すの忘れてたー!!」
〜次回〜
猫じゃらし伝




