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第84話 アバディン攻略

 馬に乗りながら、ゆっくりとアバディンを目指していたアドレイは、腰にさしてある剣を抜き取りじっくり見る。


 その剣は(つば)が複雑な曲線を描いており、その真ん中には赤い宝石が埋め込まれている。


(なんと禍々しく、美しい剣だ……そしてこのレーヴァテインには凄まじい力が込められているのが持っているだけでも伝わる……。これに俺の魔力が加われば敵はいないな)


 レーヴァテインの禍々しい魅力に取り憑かれるように見惚れるアドレイ。


(まぁ。こいつを使うのはもう少し後になりそうだな。この戦場では使う機会はないだろう。この戦力差だ、もはや戦争ではなく虐殺だな)


 アドレイが気分よく鼻歌を歌いながらレーヴァテインを鑑賞していると、前線から兵士の雄叫びが聞こえた。


 おそらく第一陣が戦闘に入ったのであろう。アドレイや他の将軍たちは籠城してくるだろうと思っていただけに、少しばかり驚いたが、その程度だった。


(愚かだな。籠城していれば10分程度は長く生きられていたものを)


 アドレイは大きな欠伸をしながらそんな事を思っていると、隣から馬に乗ったエムレバート・ルイン将軍が話しかけてくる。


「殿下。ワシら魔導士部隊を下げて良かったのですか?前線の兵だけでは苦戦しますぞ?」


 王国側が、此方を迎え撃つつもりだと分かった時点で、アドレイは魔導士部隊を中央前線から下げていた。魔導士(ウィザード)は兵士と価値が全く違う貴重な戦力。いや、魔導士は戦いのみならず、魔法で雨を降らしたり、建築したりできる帝国の貴重な資源だ。こんな戦いに下手に投入して、犠牲がでようものなら、皇帝の評価にかかわると判断してのことだった。


「別に構わないだろ? すぐに片が付くと面白くないしさ。 ほら見ろよ、もう帝国兵の両翼が敵軍を挟みこもうとしているぞ」


 真正面から突撃してきたベルフィア軍は、帝国中央の重装歩兵軍団に時間を割かれている内に、両翼に開いていた帝国兵が、ベルフィア軍を左右から挟み込もうとしていた。


「これで終わりだろ? こうも戦力差が歴然としていると、あっけなくて面白みに欠けるな」

「油断は厳禁ですぞ、殿下。見て下され、中央に突撃した敵軍はまだ勢いを落としておりません。自軍がすり潰される前に、殿下を討つ腹積もりでしょう」


 エムレバートの考えをアドレイは鼻で笑った。


「そんなもの、ジャックとガルギンで押さえればいいだろ?」


 帝国左翼にジャック、右翼にガルギンを配置してある。その二人が中央に合流すれば……。


「急報! 急報! 急報であります殿下!」


 右の隊列から人波をかき分け、下級の兵士がアドレイの前に出た。


「何ようだ?」


「は! ただいま西の沼地方面から、た、大量のスケルトンが我が軍に向かって突撃をしてきています!」


「……は?」


 アドレイは何を言われているのか理解に数秒かかった。いや、数秒たった今も言葉の意味は理解できたが、内容の理解が追い付いていなかった。


「どういうことじゃ!? なぜスケルトンが沼地からでてわざわざこっちに来るのじゃ!?」


 エムレバートが下級兵士に馬に乗ったまま詰め寄る。


「わっ、分かりません! ですが事実我らの右翼の軍に近づいて来ているのです!」

「……数は?」

「詳しくは分かりませんが、おそらく数万はくだらないかと……」

「数万……。殿下、後ろの予備兵を右翼に援軍として送りましょう!」


 エムレバートはアドレイにそう進言するが、アドレイの思考はもっと別のところにあった。


(このタイミングで魔物の暴走? それも数万規模の魔物が一斉に? なんの冗談だ。ありえんだろう!?)


 普通魔物は人の争いに干渉などしない。近くを通った人を襲ったり、小規模で人里に降りてきたりするが、魔物が大規模に人里に降りることは魔物の群衆(スタンピード)でもない限り滅多にない。それがアドレイに違和感を与えた。


(沼地……沼地? 参謀が言っていたあれか?)


「殿下! 殿下! どうされましたか?」


 思考の海に沈んでいると、エムレバートの声で我に返る。


(まぁ、考えても仕方ない。 兵士などいくらでもいるから何人死のうがどうでもいいが、あまり損害を増やすと父上の印象も悪くなるかもしれない)


「エムレバート、後ろの予備兵兵士長と参謀に伝令だ。右翼に援軍を送り、スケルトンどもを一掃しろ」


「はっ!」


 エムレバートはすぐに伝令を予備兵部隊に送る。


「あとお前も前線に加われ。そうだな……左軍団に入って、敵の右部分を殲滅しろ」

「ワシが左ですか? しかし、左にはジャックのやつが……」

「あいつには中央に入るよう伝令を入れる。お前の言う通り、敵の先頭部隊は手強そうだからな。この軍一番の強者を中央に当てる。右のスケルトンの件もあし、先に左から潰してしまおう」

「……なるほど。畏まりました。ではワシが左に入り、敵を殲滅してまいりましょう」

 

 アドレイはエムレバートに行ってこいと目で合図をする。


(しかし、とんだアクシデントだな。だが所詮はスケルトン。殲滅するのに時間は掛からないだろう、精々王国の屑どもの寿命が少々長くなるくらいだ)



 アドレイはこのトラブルでもその余裕は一切崩れることはなく、今日中にアバディンを落とし、最高の夜を迎えれると信じて疑わなかった。

夜も投稿します!

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、やっぱり参戦してきたか 少なくとも中核のスケルトンはただのスケルトンじゃないよねぇ
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