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第76話 作戦会議室にて

「な、なぜここにいるのですか!!!坊ちゃま!!!」


 俺たちが騎士の館を尋ね、作戦会議室に入り、ギュンターと会って10秒後の事だ。

 ギュンターは俺を見ると2秒間目を瞑りながら目頭を押さえ改めて俺を見る。そして8秒間フリーズ。からの絶叫である。


「なぜって、帝国からアバディンを守る為だけど……」

「バカな! なぜ我々に任せられないのですか! 決闘は!? カトレア殿! あなたが付いていながらなぜこのようなことになっているのですか!?」

「あら? フィンゼル様は貴族として責務を全うしようというのに、それを邪魔しようというのかしらギュンター君?」


 カトレアにひと睨みされて『うっ!』とひるんでしまうギュンター。このやり取りを見ただけで、この二人のパワーバランスが見て取れる。


 ちなみに兵士たちは俺とエマ、特にエマが来たことでテンションが爆上がりの様子。

 俺もエマもヘストロアの血を受け継いでいる者同士、特にエマに関してはヘストロア家のお姫様だ。姫と一緒に戦えるということで、騎士たちは大盛り上がり。俺たちが戦争に参加したことで士気もさらに上がったようだ。



「嬉しいです。また皆さんと一緒に戦うことが出来るなんて」


 そう言って来たのはユージンだ。彼とも随分久しぶりに会った気がするな。


「ああ。よろしく。それで、どうやって帝国と戦うんだ?」

「そ、それが、帝国兵を平野で迎え撃つことに……」


 凄く言いづらそうに話すユージン。


「へぇ。平野で打って出るのか」


 これは正直好都合。これなら俺の考えていたことがやりやすくなる。


「8万で30万相手を迎え撃つ……正気の沙汰じゃないですね」


 マリアがもっともな事を言う。


「それで勝算はあるの?」


 エマがユージンに向けて問いかける。


「えーっと……」


 ユージンはそのあとの言葉を続けず、目をそらしてしまった。

 その反応で俺たちは大体の事は察しがついた。

 少々天然が入っているルーナでさえもユージンの反応に青ざめている。


「はぁ。ま、状況が最悪ということは分かっていたけど、改めて現場の人間から聞かされると、重みが違うわね」

「僕はまだ何も言っていませんが……」

「言葉にはしていないが、その申し訳なさそうな顔が全てを語っているぞ」

「え?そうですか?」


 そういって、自分の顔をまさぐり始めるユージン。


 そうしている間にカトレアと、ギュンターの話が済んだのだろう。ギュンターが俺の元に近寄ってくる。


「フィンゼル様、エマ様、この戦いは非常に危険なものになります。戦闘に入りましたら、カトレア殿から離れないようにしてください。そして万が一の場合は、カトレア殿に脱出させるよう指示してください」

「俺に仲間を置いて逃げろと言うのか?」


 颯爽と駆けつけたのに、負けそうだからって逃げるのは貴族としてどうなのか。

 俺は若干きつい口調で言った為か、また『うっ!』と目をそらす。

 だが今度はギュンターにも譲れなかったのか、俺と再び目を合わせる。


「坊ちゃま、大変申し訳ございません。坊ちゃまにとっては不本意でしょうが、もし坊ちゃまに何かあった場合、奥様に顔向けができません。私が坊ちゃまの傍についてお守りできれば良いのですが、戦場ではそうもいかず……。どうかお願い致します。このギュンターの最後の願いをお聞きください」

「……。分かった。ただし、これは最後ではない。ギュンター、俺にはまだお前の力が必要だ。絶対に死ぬことは許さん」

「畏まりました!」


 戦闘で一番頼りになるのがこのギュンターという男だ。俺がベルフィア家当主になれるかは、もはや分からないが、その時が来たらベルフィアの筆頭騎士として活躍してもらいたい。


 ギュンターは安心したのか、ほっと胸をなでおろす。若干涙目になっているのは俺に気のせいだろうか?


 コツコツと廊下に誰かが歩いてくる音がする。


「何を騒いでいるのだ! こんな大事な時に!」


 ドアをバタン!と勢いよく開ける黒髪短髪の中年男性。こいつは確かギュンターと仲が良かった、シリウス……


「も、申し訳ありませんアウクテュルス上級騎士!」


 年若い騎士が代表して謝罪した。

 そう! シリウス・アウクテュルスだ!もの凄い槍使いと言う話だったはず。

 シリウスは部屋の中にいる俺達を凝視した。いや、俺達ではなくエマか。


「お、お嬢様……なぜここに……」

「彼に連れられてね」


 そういって右隣りにいた俺を親指で指しながら答えるエマ。

 その瞬間シリウスは鬼のような形相で俺に詰め寄る。


「なぜ連れてきた!?」


 シリウスは俺が貴族と言うことを忘れているのか……いや、そんなもの目に入らぬくらい動揺していることが分かった。


「フィンゼル様に無礼は許しませんよ? 離れて下さい!」


 マリアは剣の柄に手をかけながら言い放つ。一触即発。まさにそんな感じだ。


「シリウス……冷静に……」

「ギュンター。俺が冷静じゃないように見えるか?」


 見える。そんな顔でそんなセリフをよく言えるな……。


「冗談よ、シリウス。私が決断したの。ここに来て戦う選択をね」


 シリウスは驚きながらも疑問を口にする。


「なぜ……?いつも冷静でおられたお嬢様がそのような選択を……?」

「さぁ?強いて言うなら貴族だからかしら?」


 そんなエマのあっけらかんとした様にシリウスは困惑しているようだったが、すぐに持ち直し俺に謝罪した。


「申し訳ございませんでした。フィンゼル様。このお詫びはこの戦争の後に……」

「別にいいさ。それに前に言ったろ? 俺は全てを守って見せる」


 俺が自信満々に言い放つと、この場にいる人々は感心の声を上げる。シリウスも、目を見開いて驚いている様子だった。


 俺の言葉に盛り上がったところで、ギュンターがシリウスに問いかける。


「ところでシリウス。帝国兵の動きはどうだ?」

「ああ。もうじきスカリアを抜ける頃だ。ちょうどいい。城壁の上で様子を見よう」


 俺たちは帝国軍の様子を見る為、城壁の上へ向かった。


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