表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/206

第64話 錯乱の狼

「そういえば結局謎は残ったままでしたね。あのピエロ修道士は何者だったのか? どうやってダンジョンを作ったのか?ダンジョンを作って何をするつもりだったのか?捕らえられず、水晶を破壊してしまった私の責任ですね……」


 そう馬車に揺られながら話すマリア。外は雪も止み、この辺は雪も積もっていない。


「捕まえるのは無理でしょ。あの勇者の力(ブレイヴ)がある限りどうしようもないわ」

「エマの言う通りだ。あれを逃がしたのは誰の責任でもない。水晶に関しても俺を思っての事だろ?なら問題ない」

「はい……。申し訳ございません」


 誰も悪くないというのに謝るマリア。いつもはニコニコしているルーナも表情が暗い。

 もしまたペドリーノと会う機会があっても、あの力がある限り絶対に捕まえられない。


 エマはもう勇者の力と断定しているが、本当にそうだったのだろうか?俺の見間違えでなければ、ペドリーノは懐からなにか取り出したようにも見えた。あれが勇者の力ならまだいい。その個人に限定された力ならなんとかなるかもしれない。しかし、それが魔法もしくは魔制具で、誰でも使用可能なら……いや、流石にないか。


 それよりも奴は鼻から血を流していた。あれは魔力枯渇か?もしそうだとしたら奴は体調が万全ではないまま戦っていたことになる。やつの体調が万全であったなら、俺たちは―――


 そう考えたところで、馬車が急停止し、激しく揺れた。


「どうしたんですか!?」


 ルーナは慌てて御者に尋ねる。


「そ、それが……向かいから人が……」


 向かい側から人?そんなの当然だろ?ここは誰でも通れる道だ。向かいから人がやってくることもあるだろう。


 なにか様子がおかしい御者。

 俺は様子を確認するため外に出る。


「おうおうおう! これは久しぶりだねぇ! フィンゼル坊ちゃま! 会いたかったぜぇ!」


 そう舌なめずりしながら近づいてくる眼帯の男。

 誰だっけ?なんか見覚えがある気がするが……。


「あっ。あれは隻眼の狼とかいうBランク冒険者ですね」


 馬車からマリア達も降りてくる。

 隻眼の狼……。あっ!思い出した。初め冒険者ギルドに行った時、ギュンターに伸されたやつか。 最近めっきり見なくなったと思ったら……。


「ずっと待ってたぜ、この時を!あのギュンターとかいう元王国騎士長に無様にやられて以来、俺の人生は変わっちまった! 俺の事を誰も見なくなっちまった! アバディン冒険者ギルドでは敵なしだったこの俺の人生が一晩で変わっちまったんだよ!」


 目を血走らせながら吠える隻眼の狼。

 いや……。そんな事言われても……。それを言うならギュンターに言ってくれ。


「俺はずっと待っていたんだよ! 復讐の機会をな! ギュンターやあの危険な女と一緒にいることが多すぎて手が出せなかったが……やっと……やっとだ!ギュンターは無理だが、あいつが可愛がっているお前らを殺して、やつに罪を償わせてやる!」

 

 危険な女とはカトレアの事だろう。

 しかし、これは完全な逆恨みだ。


「フィンゼル様。首を刎ねましょう。これは何をしでかすか分かりません。害が及ぶ前に駆除しなければ」


 マリアはもはや害虫扱いだ。でも殺すのは過剰防衛のような気がする。俺にはこいつを殺さずに無力化する自信がある。殺さずに解決するならそれが一番いい。


「あ、あのう……。やつらをここまで連れて来た代金は……」


 御者が隻眼の狼に近づいていく。

 そうか…。あの御者、行きの時も同じ人間だったな。グルだったのか。


「うるせぇ!」


 隻眼の狼は御者の頬を思い切り殴り飛ばす。


「さあ始めようぜ!」


 隻眼の狼は腰に差していた剣を抜く。その剣からは緑の液体が流れており、その液体が地面に垂れると、土が蒸発したかのようにえぐれる。


「この剣はA級の魔物からとれた魔石を使って作った毒剣だぜぇ!触れたら痛いじゃすまないからな」

「マリア俺がやる。手は出すなよ」

「え!?し、しかし……」


 マリアはそれ以上言っては来なかったが明らかに不満顔だ。マリアに任せると殺しかねない。ここは俺がやるしかない。


 隻眼の狼は、『あひゃ、あひゃひゃ』とおよそ人の笑い声ではない声を出しながら切りかかってくる。


 ここで炎魔法は使えない、打ちどころが悪いと手加減しても死んでしまう。

 ここは……。

 一つ深呼吸し、明確にイメージを固める。やつを殺さず、無力化するように……。

 良し!

 俺は魔法を放つと、切りかかってくる隻眼の狼の下からピンポイントで竜巻が吹いて隻眼の狼を上 空に飛ばす。

 

「あひゃ?」


 上空に打ち上げられた隻眼の狼を、すかさず大気の圧力で押して地面に叩きつける。


「ぐぇ!」


 隻眼の狼は潰れたカエルのような声を出すと、気絶してしまった。


 まぁ、Bランク冒険者といっても錯乱していればこんなものだろう。精神が正常であればもう少し勝負になったかもしれないが。

 

「大丈夫? これ死んでるんじゃないの?」

「いや、骨が多少折れているぐらいで死んではいないだろ」


 エマが不吉なことを言うが、多分大丈夫たと思う。叩きつけた衝撃で地面がえぐられているが、隻眼の狼はピクピク動いているし。


「しかし流石ですねご主人様!吹き荒れる風(ウイングストーム)空気操作(エア)のコンビネーション! こんなに風魔法が上達していたなんて知りませんでした!」

「まぁな。これもカトレアのおかげだ」


 カトレアは風魔法にも精通しているらしく、魔法を習得していく上で、本当に頼りになる存在だ。


 俺たちは隻眼の狼と御者を締め上げ、アバディンに連れ帰り、兵士に突き出した。



評価、ブックマークを頂けると励みになります

しかしブックマーク増えませんね。PVは昨日より伸びているのに……

もっと頑張らないと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ