第60話 VSペドリーノ
「ま、マリアさん! 僕も行きます!」
ユージンも魔力駆動で突っ込んでいき、マリアと同時に剣を振りかぶるが、ペドリーノに剣で一蹴される。
相手の力量を見誤っていたな、マリアとユージンで片付くと思ったがそう簡単にはいかないらしい。
「ほほほ~。あなた方の選択は分かりましたよ~。一人残らず天国へ送って差し上げましょう!」
「ちぃ! さっきからその笑い声気持ち悪いんですよ! その口開かないようにしてあげます!」
マリアとユージンは突撃をくり返す。
マリアは必要にペドリーノの首を狙うが、それを紙一重でペドリーノは避け、カウンターを狙うが、そこをユージンがサポートしている。
ルーナは三人が切りあっている間を、マリアとユージンに当たらないように弓矢でペドリーノを狙って攻撃している。
器用だな、いや目がいいのか。魔力駆動を駆使しながらの戦いだ。このスピード感で俺が魔法で援護しても誤射する自信しかない。もっと敵の的が大きければ…。
エマも回復魔法で前線に出ている二人を治癒している。なにもしていないのは俺だけだ。
見た感じだとマリアとユージン二人では手に余る。そこにルーナの弓の援護で五分五分、エマの回復で、完全に有利になる。勝利は時間の問題。どうやら俺の出番はなさそうだな。
俺は戦闘の中で、アルバイト初日のような手持無沙汰感じながら、万が一何かあったらすぐにフォローが出来る様に注意していると、あることに気が付く。
マリアとユージンの剣身が凍っている?あの天剣の模倣剣と切り結ぶ度にそれは広がっている。
ユージンの剣は知らないが、マリアの剣はミスリル製で魔法耐性が強い剣だ、天剣の模倣剣とはいえそれに干渉してくるとは……。長引くと危険だな。
「マリア、ユージン一旦下がれ!」
俺は魔力を手に溜め前に出ると、マリアとユージンが下がったのを確認し、強火球を放つ。
「おおっと! 一番危険なのはこの生意気なガキですね~。あなたから排除しましょうか!」
ペドリーノは俺の火球を巧みに避けると、切りかかってくる。
それを俺は肩に背負っていた投擲用大剣二本を投げつけ、牽制する。
「ふん!」
ペドリーノはそれを二振りで撃ち落とすが、その切り落とす動作に合わせて右腰に掛けていた伸縮自在の剣を伸ばしペドリーノの肩を切ることに成功した。
「!?うっ!」
ペドリーノは倒れないものの、肩を抑えながら膝をつく。
初めて人を切った……。伸ばした剣が戻ってくるとペドリーノの生々しい血がこびりついている。
思えばクエストなども炎魔法で戦っており生物を切ること自体が初めてだ。
切った感触が残っている右手は、震えているのが自分でも分かった。
伸縮自在の剣を活躍させるために使ったが、普通に魔法を放った方が良かったな……。
「ほほほ~。中々変わった武器をお持ちの様ですね~」
自分の肩を治癒しながら立ち上がるペドリーノ。
こいつ治癒魔法も使えるのか……。
ん……?ペドリーノを良く見ると、鼻からも血か出ているのを俺は見逃さなかった。
「少し油断しましたね~。でも次からは本気で行きますよ!」
魔力駆動を使い向かってくるペドリーノ。
しかし、忘れてはいけないのはこの戦いが5対1ということだ。
「音速の風!」
「おっと!」
ルーナが風魔法でペドリーノの移動を妨害し後ろに引かせるがそこには――。
「地表氷結!」
エマが氷魔法で足を凍らせる。
「なに!?」
俺はバレーボールぐらいの大きさの火球を作り出しペドリーノに放つ。
火球はペドリーノに直撃し、爆発と共に派手に吹き飛び部屋の壁にぶつかった。
「フィンゼル様!やりましたね!」
マリアは俺に駆け寄ってくる。
「これ……死んでないでしょうね?」
「手加減したから大丈夫だと思う……」
「ほほほ~。いや~。これはまいりましたね~」
死ぬどころかまだまだ元気が有り余っている感じを出しながら立ち上がるペドリーノ。
しかし修道服はボロボロ、顔も何か所も火傷をしているようで、緑色だった髪も茶色く焦げている。
「作戦はどうやら失敗の様ですね~。今日のところは撤退ですかね~。しかし、これで終わりと思わないことですね。次会ったら今度こそ地獄に送って差し上げますよ。神の使者であるこのワタシ達の計画を邪魔した罰としてね」
「はぁ? 何を言っているの? これから私たちに捕らえられてその計画とやらを洗いざらいしゃべることになるのよ? 何をそんな余裕ぶっているのかしら?」
「ほほほ~。捕らえる? このワタシをですか?」
ペドリーノは懐から何かを取り出すとブツブツ口を開く
「おい!何をする気だ!」
ユージンは飛び出すが、風魔法か何なのか、空間から押し出されるようにペドリーノの魔法で吹き飛ばされた。
「今日はなかなか楽しめましたよ。それではさようなら」
ブツブツ言い終わるとペドリーノの後ろから、ブラックホールのような、全ての物を飲み込むよにも思える黒い渦のようなものが出現した。それは空間が割れた中から出ているようにも見え、その異常さが分かった。
ペドリーノは迷わずその黒い渦の中に入ろうとする。
まずい!
やつに逃げられると大変ななことになる。俺は直感的にそう思った。
しかし、普通の火球程度のスピードでは確実に間に合わない。
それなら―――。
「逃がすかぁぁ!!」
俺は放つ魔法のイメージを、いつもの火球よりもより速く飛ぶようにイメージをして、今まさに黒い渦に飛び込もうとするペドリーノに放つ。
俺の放った火球は、丸い玉から、どういう訳か、鳳凰を象った炎の鳥に姿を変えた。
鳳凰を象った炎の一撃は、甲高い鳥の鳴き声と共に、火球では考えられないスピードで飛んでいく。
「うぎゃ!!」
見事鳳凰はペドリーノを直撃し、ゴブリンの断末魔のような声を上げながら黒い渦に飲み込まれたと同時にその渦は消えてしまった。
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