第61話 取り逃がした得物
「逃げられた……か?」
鳳凰は命中したが、あのタフさだ、あれくらいで死ぬとは到底思えない。
「相変わらずの分からない魔法よね。炎が鳥型になる魔法なんて聞いたことがないわよ。それに鳴き声まで……」
「いてて。そうですね。僕も今の魔法は初めて見るどころか聞いたこともないですし。魔法ギルドに魔法陣に記載する詳しい情報を公開すれば、ひと財産くらいなら築けるかもしれませんね」
ペドリーノの魔法を食らったユージンがダメージを食らったお腹を押さえながら話す。
まぁ、魔法陣なんて使ってないから公開も何もないけどな。
「でも、魔法陣を公開するならその魔法名を決めなくてはなりませんね」
ルーナはどこかウキウキしているようだ。
魔法の名前ね。前世の世界では、第一発見者や、それを作った人間の名前を取って付けるのが主流だったな。俺でいうと、ベルフィア・フェニックスと言ったところか。普通にダサいな。
「ま、名前なんてなんでもいいか。それよりもダンジョンだ。見渡した感じここより先には進めなさそうだし、あのピエロが迷宮の主だったのか?そして謎なのはこの水晶か」
俺は部屋の奥にある台座に置かれていた水晶を手に取る。
「しかし、やつは一体何者だったのでしょうか?ピエロ修道士の言い方だと本来は自然発生するはずのダンジョンを人口的に作ったような物言いでしたが……。それに最後のは魔法だったのでしょうか? あっという間に消える魔法。そんなものが本当に……」
マリアがうーんと考える。
「そんな魔法があるわけないでしょ? そんな魔法が開発されていたら今頃大騒ぎになっているわ。ダンジョンの人工的に作るとかは分からないけど、あの移動魔法はおそらく勇者の力ね。指定した場所に瞬間的に移動できる勇者の力。うん。これなら説明がつくわ」
勇者の力…ね。何とも都合のいい力だよな。
普段は能天気で天然なルーナも難しい顔をして考えこんでいる。
「ま、ここで話してても分からないさ。それよりもどうする? あいつが迷宮の主だった場合、それを取り逃がすとどうなるんだ? ここより先に道はないぞ」
「どう……なるんでしょうか? 迷宮の主が逃げ出したなど聞いたことありませんし……」
ユージンも途方に暮れているようだ。
「その魔制石がヒントになるんじゃない?」
「エマはさっきからこれを魔制石と言ってけど、俺はそうとは思えないんだよなぁ。魔制石にしては内部の魔力がうずいていて制御出来ていないような……」
その時、俺が持っていた水晶が黒く輝き魔力があふれ出る。
「うお!」
俺は反射的に水晶から手を放す。
「フィンゼル様!」
マリアは剣を抜くと、水晶を叩き切ってしまった。
「ちょっ! バカ! なんで切るんだよ! せっかくの手がかりが……」
「も、もうし訳ございません! フィンゼル様の危機だと思いつい……」
「あ、いや、いい。俺も言い過ぎた」
勢いでマリアを責めてしまった事を、俺は反省する。彼女も俺を思って行動したことだ。
「で、どうするの? このままここに居ても埒が明かないわよ?」
「そうですね。一旦外に出て、また詳しく調べま―――」
ユージンの話を遮るように地面が揺れ始めた。
「な、なんですか!? 地震ですか!?」
揺れはどんどん大きくなっていく
地震?いや……これは……
「おい!逃げるぞ!ダンジョンが崩れる!」
俺の叫びと同時に、天井から瓦礫が次々と降ってきた。
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