第57話 投擲用大剣
ダンジョンの中は氷で出来たトンネルで一本道になっていた。
「外の外観とずいぶん違うんだな」
「ダンジョンの中はこの世界とは別の空間に繋がっていると言われています。外観と中身が違うのはそのせいでしょう。気を付けて下さい。ここからは何が起きても不思議ではありません」
ダンジョンは、ダンジョンを作った迷宮の主を倒せば、力が保てなくなり、消滅する。しかし、主がいる最深部に近づくにつれ、強力な魔物が出現すると言われているので、注意が必要だ。
「そういえば、マリア。さっき自分が斥候すると言ってたけど、そう言った探知系の魔法って使えたっけ?」
「? いえ? 魔物がいる場所などは感で分かったりするんですけど、罠などもあるんですね。知りませんでした」
「……やはり危険ではないですか? 斥候も魔制具もなしにダンジョンに入るなど正気の沙汰ではないですよ……」
「あっ!罠とかだったら私見分けられるかもしれません!」
ユージンがまたビビりだしたところで、ルーナが名乗りを上げる
「エルフの村では魔法で罠を張ったりしていたので、それっぽい痕跡などは分かりますよ!」
「ほう!それは頼もしいですね! ダンジョンと、エルフのトラップ魔法が同じ類がどうかは定かではありませんが、今回はルーナさんに任せるほかありませんね」
「じゃあ、ルーナよろしく頼む。異変に気づいたら、すぐに教えてくれ」
「はい! わかりました!」
張り切って俺たちの先頭をあるくルーナ。
「マリア。ルーナが危険にさらされたら守ってくれ」
「畏まりました」
そう言ってルーナの後ろにマリアが続く。
先頭にルーナ、続いてマリア、その後ろに俺とエマが横に並び続き、最後尾にユージンといったフォーメーションでダンジョンを歩いてく。
「しばらく歩くけどずっとこの一本道が続くわね。どうなっているのかしら?」
エマがそうぼやいた時、『しっ!』とルーナが歩みを停止し、口元に人差し指をあててゼスチャーする。
「どうした?」
「魔物です。あれはゴーレム……でしょうか?」
前を見ると一本道をとうせんぼする様に、青色をしたゴーレムがいた。
ゴーレムは通常Dランクの魔物。しかし、その形状は様々で、鉄から出来たアイアンゴーレム、土から出来たアースゴーレムなどがいるが、あれは氷で出来たアイスゴーレムと言ったところだろうか。
「ふふっ。 やっとこいつの出番だな」
俺は背中に背負っていた二本の大剣を軽々と抜く。
俺の装備は左の腰にライトセイバー、右に伸縮自在の剣、そして新たに新調した二本の投擲用大剣。
この大剣は名前の通り投擲専用の剣だ。見た目は重そうだが、俺が触れている間は重量が5キロほどになる。しかし、俺から離れると、その重量は250キロまで重くなる。
しかも投げた質量はそのまま維持されるので、この剣を投げてぶち当てることが出来れば威力は絶大!まだ試したことはないが、この剣が出来上がるまでに投擲の練習を重ねてきたので、上手くいくはずだ。
俺は先頭にいたルーナの前に出る。
「気を付けて下さい」
「ああ」
相手はDランクの魔物だ。俺からしたら雑魚も雑魚。気を付けるのは、手が滑らないようにすることだけだ。
「よし行くぞ!」
俺はゴーレムに駆け出すと、そのタイミングでゴーレムも此方に気が付いたのか、グオオオと雄叫びなのか分からない言葉を発しながら、突進してくる。
俺は大剣を斜めに振りかぶりゴーレム目掛けて投げつけた。
投げつけた大剣はグルグルと回転しながら『バゴン!』と音を立てながら見事ゴーレムの右腕を切り飛ばす。
「よし!もう一本!」
二本目の大剣を今度は横持にし、横回転するように投げつけた。
今度も見事ゴーレムの首に命中し、ゴーレムは魔石を残し、消え去った。
しかし、投げた大剣をいちいち自分で拾いに行くのは面倒だな。帰ったらトルキンに、ブーメランのように戻ってくる魔法を組み込んでもらおう。
俺は大剣を回収し、仲間の元に戻ってきた。
「マリアとルーナには同情するわ。魔物を狩ってお金を稼いでも、あなたのおもちゃに変わってしまうんだもの」
やはりというべきか、エマはこの魔制剣のすばらしさに気付いていないようだった。
「エマ。分かっていないようだから説明するが、この剣は――」
「希少性があるんでしょ? だから何だという話だけど。それよりせっかくギュンターから貰った天剣使ってないじゃない。まだ実践では抜いたことないんでしょ? そんな玩具よりそっちを試したら?」
「冗談じゃない。天剣はコレクションだぞ? 下手に使って刃こぼれしたらどうするんだ。手入れも大変なんだぞ!」
「て、天剣がコレクション……」
ユージンが、いや仲間全員がなぜか絶句している。
それより俺が気になるのは投擲用大剣の成果だ。
「マリア! どうだった俺の新しい魔制剣の出来は!?」
「え?えっと、凄かったです!」
前と同じ投げやりな反応……
「ルーナは!?」
「んー。そうですね。その投げる剣か伸びる剣、どっちかでいいとは思いましたけど……」
そんなルーナまで……。
「あなた、その剣作るのにいくらしたの?」
「両方合わせて白金貨6枚だけど」
「白金貨6枚……」
「やっぱりあなた達には同情するわ……」
エマが呆れた顔で俺を見る。
これでもトルキンと交渉を重ね、安くしてもらったのに、まさかこんな不評とは……
「フィンゼル様! フィンゼル様はフィンゼル様の思うようにお金を使って下さい!私はヘストロアからお給金をちゃんと貰っていますし、ルーナはフィンゼル様の奴隷です。私たちに配慮する必要など全くありません!」
マリアが俺をフォローしてくれるがやはり俺の悲しい気持ちは消えなかった。
しかし、いつか絶対誰もが認める魔剣を作って見せると、俺の心は燃えたままだった。
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