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第53話 厄介事

 俺たちは客室に通され、そこにあるソファーに座らされた。

 受付のお姉さんが俺とルーナに紅茶を出してくれた。どうせならミルクも一緒に付けて欲しいところだったが……。


「それで? お願いごとって?」

「はい。 アバディンの北東にある村があるのですが、その村は主に漁業を営んでいて、それで生計を立てている村なのですが、どうやら漁業に出る為の港が凍ってしまったらしくて……」


 ん?厄介事とか言うから俺はてっきり、さっき酒場にいた男たちが話していた沼地の魔物の縄張り争いの件かと思ったが、違うのか?


「ベルフィア領は寒いし別に凍っても不思議ではないだろ?」

「いえ、今までは凍るなんてことはありませんでした……しかし、村の近くの海に沈んでいるのが新しく見つかったのです……」

「なにが?」

迷宮(ダンジョン)です。 それが原因かと……」


 強力な魔物によって作られる迷宮か……。何故こんな場所に……。


「ダンジョンですか……」


ルーナがマリアに叱られた時のような震えた声を出す。


「ルーナ? どうした?」

「いえ、すみません。以前、エルフの森に居たころ、村のみんながスカリアの森にあるダンジョンに潜って行ったことがあるんですけど、その時は誰も戻って来なくて……お姉ちゃん達はみんな死んじゃったんじゃないかって……」

「スカリアの森にあるダンジョンというと、マナの至宝ですね。随分と無茶をするものです」


 スカリアの森にあるダンジョン、“マナの至宝”は、入ったら最後、誰も帰らないことから冒険者ギルドから立ち入りを禁止されているアルスマーナでも有数の特別危険なダンジョンだ。


「で?その迷宮をどうすればいいんだ?まさか攻略しろなんて言わないよな?」


 ダンジョンは自然と魔物が発生する為、冒険者にとっては狩場になる。しかも話を聞いた感じだと最近出来た感じだったし、あまり強い魔物も発生していないだろう。そんなダンジョンを攻略して消滅させるなど、ギルドにとっては損失でしかないはずだ。


「いえ。今回は発生したダンジョンの迷宮の主を退治して、完全に消滅させて欲しいのです」

「なに?なぜだ?」

「それは……このダンジョンがあることによって、海が凍り付き、漁業が出来ず、魚が取れないからです」

「利益を追求するならダンジョンはそのままにしておく方がいいはずだ。 漁業よりも魔石の方がギルドからしたら利率は高いだろ? お前って、そんな村人思いの性格だったか? どちらかと言えば利益さえ出ればあとはどうでもいいタイプの人間だと思ってたけどな」


珍しく『いや、それは』と言い淀むアイザック。

俺が黙っていると、意を決したのか理由を話し始めた。


「この村は、ベナコ村は僕の故郷なのです。この村から漁業がなくなってしまったら、お金を稼ぐことが出来なくなってしまいます……。だからどうかお願いします」


 そういって俺に頭を下げるアイザック。

 なるほど。 内密なのは他の冒険者にダンジョンの事が知られるとダンジョン攻略を邪魔されるから。新しい狩場が出来るのに、みすみす消させる訳がない。


 そしてこのダンジョンがある限り、海に張った氷は解けず、漁業に出られないと、そう遠くない内に村は消滅してしまう。そういう訳だ。


「なぜ俺に頼む? 俺がそんな心優しい貴族にみえるのか?」

「はい! もうフィンゼル様以上にお心が広く、慈悲深い貴族様など見たことがありません!それに私にはもうあなた様以外に頼れる人がいないのです! どうか私の故郷をお救い下さい!」


 ほうそうか、俺以上に器の大きい貴族はいないか。事実とはいえ、口にされると気分は悪くはない。それに前世では単純作業しかやらせて貰えなかったからなのか、こうも期待を寄せられると答えたくなってしまうものだ。


 さっきからルーナもご主人様なら救って下さいますよね?といった期待の籠った目で俺を見てくる。

 そう考えてるうちに俺の心は決まっていた。


「分かった。何とかしてみよう」

「本当でございますか!? ありがとうございます!」

「と言ってももちろんただではない。 相応の報酬は貰うぞ」

「もちろんでございます! 何がお望みでしょうか?」


 んー、どうしようか。 冒険者ギルドの支部長に恩を売れる絶好の機会だ。これを上手く活用して天剣、引いては他のレアなアイテムに繋げたいところだが……すぐにはいい案が思い浮かばないな。


「報酬の件はまた今度だ。 楽しみにしておけ」

「は!畏まりました!」

「よし! そうと決まれば早速そのべナコ村に赴くとしよう。 馬の用意は任せていいか?」

「もちろんでございます」

「分かった。俺は屋敷に帰って準備をしよう」


 俺はソファーから立ち、部屋から出ようとしたところで、アイザックに聞きたいことを思い出した。


「あ、そうだ。 アイザック。 沼地の魔物の縄張り争いの件で知っていることがあるなら教えて欲しいんだが」

「沼地の魔物の件ですか? ああ、それならもう調べはついていますよ。 どうやら沼地にスケルトンの大群が現れたようでして、そのスケルトンどもが何を思ったのか沼地に住んでいる他の魔物たちに攻撃を仕掛けているのです。 こんな事は初めての事ですが、人間に被害がないことから沼地をしばらくの間閉鎖し、様子を見ようと言ったところですね」


「へぇ、そうなのか」


 沼地でスケルトンの大群ねぇ。そんなまさか、まさか……な

 俺とルーナはギルドを後にし、アイザックの依頼の為、準備をしに屋敷に向かった。


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