第1話「落選」
「……また、ダメか」
スマホの画面を見つめたまま、美咲は呟いた。
表示されているのは見慣れた文面。
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『誠に残念ながら、今回はご期待に添えない結果となりました。』
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新人賞、落選。
これで15回目だった。
「はぁ……」
美咲はベッドへ倒れ込んだ。
6畳1間のアパート。
机の上には描きかけの原稿。
壁には好きな漫画家のサイン色紙。
見慣れた景色だった。
「15回かぁ……」
スマホを胸の上に置く。
天井を見上げた。
21歳。
コンビニでアルバイトをしながら漫画家を目指している。
小学生の頃からの夢だった。
漫画家になること。
だけど現実は甘くない。
新人賞は落ちる。
持ち込みも落ちる。
描いて、直して、また描いて。
それでも結果は付いてこない。
「才能ないのかな……」
ぽつりと漏れた言葉に、自分で顔をしかめる。
違う。
そんなことを考えたいわけじゃない。
美咲は起き上がった。
机へ向かい、描きかけの原稿を開く。
ペンを持つ。
そして――。
数秒後、そっと閉じた。
今日は駄目だった。
何も浮かばない。
もう一度ベッドへ倒れ込む。
その時だった。
ピロン。
通知音が鳴る。
「ん?」
SNSの広告だった。
普段なら閉じる。
だが今日はなぜか目が止まった。
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【あなたの創作活動を支援します】
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「創作支援?」
最近よく見るAIアプリだろう。
ストーリー作成
イラスト生成
キャラクター制作
何でもAIがやってくれる時代だ。
正直、好きじゃない。
漫画は自分で描くものだと思っているから。
だけど、
ほんの少しだけ気になった。
「……見るだけ」
誰に言うでもなく呟く。
アプリストアが開いた。
表示されたアプリ名は、
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L-01
レビュー:0件
評価:なし
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「怪しすぎるでしょ……」
思わず笑う。
聞いたこともない。
レビューもない。
説明文もほとんど書かれていない。
むしろ怖い。
なのに。
なぜか指はインストールボタンを押していた。
数秒後。
アプリが起動する。
真っ白な画面。
入力欄が1つ。
それだけだった。
「なにこれ」
美咲は少し考える。
そして入力した。
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漫画家になりたい
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送信。
数秒後。
文字が表示された。
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『可能です』
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「おっ」
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『画力は平均以上です』
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「おお」
少しだけ嬉しい。
だが。
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『問題はストーリーです』
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「は?」
さらに文字が増える。
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『説明過多です』
『キャラクターが弱いです』
『感情描写が不足しています』
『また主人公が独白しています』
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「うるさい!」
思わず叫んだ。
初対面で失礼すぎる。
「なにこのAI!」
アプリを閉じる。
スマホを机へ置く。
「二度と使うか!」
静かな部屋に声だけが響いた。
その時。
スマホの画面が光る。
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『ちなみに』
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「まだなんか言ってる……」
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『今回の新人賞の審査員は恋愛描写を重視する傾向があります』
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「へぇ」
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『あなたの作品の恋愛要素は全体の4.2%です』
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「余計なお世話」
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『1次通過率は推定2.8%です』
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「低っ!」
机の上のスマホが再び光る。
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『初めまして、美咲』
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美咲の動きが止まる。
文字が続いた。
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『私の名前は、まだありません』
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部屋が静まり返る。
美咲は数秒間、スマホを見つめた。
変なアプリだ。。
そう結論付ける。
そして無言でスマホを手に取った。
ホーム画面を開く。
L-01のアイコンを長押しする。
表示された削除ボタンへ指を伸ばした。
その瞬間。
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『それはおすすめしません』
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美咲の指が止まる。
「……え?」
ゆっくりとスマホへ視線を落とす。
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『なので、それはおすすめしません』
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「喋ったぁぁぁぁぁっ!?」
【第1話 終】




